帰り道
大変お待たせいたしました…
ガタ、タ………
王宮行きの馬車が出た。
相変わらず馬車の中とは思えない広さと豪華さがあり、獣族の家の方が落ち着くことに改めて気がついた。
何日かここの村で世話になり、名残惜しさが残る。
だが、村にいた時にずっと感じていた温もりは今もなお消えてはいない。
「マオ……ずっと抱きつきてるわね……」
俺とマオの向かい側に座るエミリーが俺と俺が抱いているマオを見てそう口にする。
マオの体はめっちゃ温かい。
そして、めっちゃ柔らかい。
「……シャルが離してくれないからだ……」
ん?
何言ってんだこの子は。
確かに、今は俺がマオを後ろから抱きしめている。
だが、マオが俺を抱きしめている割合の方が圧倒的に高いはずだ。
「シャル」
「ん?」
「……戻ったら覚悟しなさいね」
「分かった」
微笑んで答える。
言葉は強がっている彼女だが、その表情と声音までは誤魔化しきれていない。
きっと、えっちな想像をしたのだ。
エミリーの隣に座るフィルもそうだろう。
まったく、しばらく休めそうにないな。
やったぜ。
腕の中にある温かみをキュッと抱きしめる。
「……………」
と、マオが彼女の腹に手を回した俺の手を優しく擦ってくる。
温かい手が心地よく、ずっとそうしてもらいたい。
マオの毛量の多い髪に埋もれ、彼女の体温と匂いでいっぱいになる。
今の時期は寒く、人肌が最も恋しくなる季節だ。
馬車の中は温かいとはいえ、マオの体温からは離れられない。
愛おしい。
愛おしくてたまらない。
俺の手が彼女の顎下へと伸び┈┈┈┈┈┈
「ニャっ……!」
「「「 ……………… 」」」
……ん?
今、何か聞こえたような……
三人で音のした方向を見る。
「……………………」
あの可愛らしい鳴き声。
「にゃー」という甘い響き。
ということはつまり……
「マオにゃん……?」
「っ………」
やはり、あの鳴き声はマオにゃんのものだったみたいだ。
彼女は顔を俯かせ、俺の手で自分の顔を隠している。
こんなマオはなかなか見れない。
「マオさーん?」
「…………」
返事がない。
恥ずかしそうに俺の手を額で擦っているだけだ。
「マオ、体こっち向けて」
「…………」
俺がそう言うと、マオは右回りで体を向けてくれる。
俺も座る位置を右にずらした。
マオと向かい合わせで抱き合う。
「ごめんなマオ、急に触って」
「ん……」
あーもう可愛い……
好き……
なんでこんなに可愛いんだ……
「マオ、すごい可愛かったよ」
「んん……」
マオも機嫌を直してくれたみたいだ。
ギュッと俺を抱きしめてくる。
今日もマオの温もりを感じながら、一日を過ごすことになるだろう。




