戦いの後の猛り
部屋は木造のいつもの場所。
落ち着ける雰囲気の中、マオと話す。
「やっと戻れた…」
うん。
俺も嬉しい。
「やっと戻れた、じゃないわよ」
「「 ………… 」」
「マオ、早く退きなさい」
そう。
今、俺は愛しのマオと座りながら抱きつき合っている。
マオのデッケェ胸がムネムネして、とても良い気分だ。
「シャル……やっと戻れたな」
「マオ!」
エミリーが怒る。
フィルも困ったような表情をしている。
だが、俺の心は穏やかだ。
最愛の彼女三人と同じ空間にいる。
これほど心が落ち着ける場所はどこを探しても無いだろう。
「マオ、早くなさい」
「……考えてもみろ…三人同時に甘えたって、十分に甘えれるわけがない……なら一人ずつ甘えれた方がいいに決まってるだろう…」
マオが解決案を出す。
彼女にしては珍しい。
「今からそれをしたいんだけど」
「「 ………… 」」
うん。
マオらしい。
「マオ」
「やだ…」
「…………」
うん。
エミリーとフィルの気持ちも分かる。
二人は四年ぶりに会ったというのに、未だにえっちが出来ていない。
それに、ここに来てからはマオばかりに構ってばかりだ。
不満に思うのも当然だ。
しかし、マオとは喧嘩をしたばかりだ。
それを考えれば、傷心したマオを癒すのも俺の役目だろう。
うぅむ…
俺はどうするべきか…
「…マオ、どうしても嫌なの?」
エミリーが重ねて問いかける。
「駄目…」
彼女はそう言うと、俺の体をギュッと抱きしめた。
「シャルは私だけが好きなんだぁ……私だけっ…」
「…………」
オォウ…
メッチャデカイ…
マオはやがて満足したのか、少し離れて目を合わせる。
「シャル…そうだよな…?」
「…………」
えぇ…
困ったなぁ…
「ふんっ」
俺が返答に困っていると、エミリーが仁王立ちで得意気な顔をした。
「マオ、シャルが困ってるわよ? それが好きな人にすることかしら?」
「……シャル…ごめん」
「ええで」
マオの悲しそうな顔。
好きな人が悲しんでいる。
俺は人を喜ばせるのが好きだ。
だから、こんな顔で終わらせたくはない。
俺はマオに抱きつくフリをして、彼女の可愛い猫耳にそっと口を近づける。
そして…
「マオだけが好きだよ」
「っっ……!」
マオの締めつけが強くなった。
苦しいほど抱きしめられて、自力で体を動かせなくなる。
良い気分だ。
「しゃる……だいすき…」
「俺も大好きだ、マオ」
お互いに小声で話す。
マオが喜んでくれて、俺も満足だ。
だが、もし二人に聞こえていたら、どうし┈┈┈┈┈┈
「シャル」
ひっ。
今まで口を閉じていたフィルの冷たい声が刺さる。
まさか、聞こえてた…?
はっ、なわけ。
フィルが俺の方まで近寄り、横に座る。
彼女との距離と比例して俺の鼓動も早くなる。
「シャル…」
「……?」
頬に手を添えられ…
ちゅっ
…………。
「今はこれだけ…」
え…なにこの可愛い生き物。
好き…
「シャル…」
よっしゃ。
エミリーも来た。
エミリーが俺の両頬に手を添える。
「「 …………… 」」
舌を入れてきた。
「………次はこんなんじゃないわよ」
「…うん、楽しみにしてる」
やたぁ。
へへ。
ふへへぇ。
少し赤くなったエミリーが立ち上がり、それに続いてフィルも立ち上がる。
「マオ、王宮までよ。それでいい?」
「うむ…ありがとう…」
すげぇ。
エミリーの寛大さに改めて感銘を受ける。
普通、ここは意地でも粘りたくなるはずだ。
我慢をしているのはエミリーだし、そろそろ鬱憤が吹き出てくるはずだ。
俺ならそうなっている。
だが、エミリーは『王宮まで』と言った。
いつ帰るかも分からないし、ここから王宮までは馬車で三週間もかかる。
それを加味しての発言。
常人には出来ない判断だろう。
ガチャ
扉が閉められた。
部屋には抱きつき合う男女が二人。
マオの温かい体温に、静かな部屋。
「シャル…私がんばった…」
ん?
どうしたんだ急に。
「うん、よくがんばったね」
「……立派…?」
なんだ、褒めて欲しいのか。
「うん、マオは立派で、俺の大好きな女性だよ」
「……へへ…」
へへ、可愛いな。
マオの顔は見えないが、頬が緩んでいるのが分かる。
「マオ、いい匂いだね」
「ん…」
彼女の大量の髪を見てそう思う。
その髪に顔を埋めて、マオの匂いでいっぱいになる。
ずっと嗅いでいたい。
「………」
お。
マオが俺の首筋にキスをしてきた。
彼女も興奮している様子だ。
「「 …………… 」」
彼女の背中を撫でつつ、シャツのボタンを外していく。
外し終わり、マオと顔を合わせる。
「下着、可愛いの着けてるね」
「うん…」
部屋の明かりを消す。
今日もたくさん愛し合った。




