最前線の示す先
「シャル、勝てると思うか?」
最前線までの道中、マオが弱気の問いをかける。
言っていることは弱気だが、その声音には自信が篭っている。
俺もその声を聞くと、やる気が出てくる。
「勝てるよ、俺もマオもいるしな」
「そうだな」
俺が微笑んで答えると、マオも微笑み返す。
「それにしてもマオ、かなり強くなったね」
マオが金竜を倒した時のことを話す。
あの時のマオは格好良かった。
そもそも、四年前も彼女は相当強かったはずだが。
「そうか?」
「うん、俺が見てない間、努力したんだね」
「ふっ、まあな」
心地よい雰囲気で道を歩く。
好きな人と話すのはやはり楽しい。
「そういえばマオ、金竜の肉って食べれるのかな?」
「…? 硬いとは思うが食べられると思うぞ? なぜだ?」
俺の酔狂な質問にマオが疑問を抱く。
俺もいくら敵が憎い相手だからって、食らってやり返そうとは思わない。
だが、食べなければならない理由がある。
「前、飛竜食べれなかったからな」
「あれか」
そう、あれだ。
四年前、俺はマオに約束した。
飛竜の肉をたくさん食べさせると。
あの時は既に処分されていて食べさせられなかったが、今回はこれでもかと言うほど余っている。
「帰ったら食べような」
「ん」
「む、マオか」
すぐ近くにマオの名を呼ぶ男が一人。
もうウォルテカのいる所まで着いたらしい。
となると、ここが最前線か。
「ウォル、手を貸しに来た」
「うむ、ちょうど欲しかったところだ」
流れるように会話が行われる。
「状況はどうだ?」
「悪くはないが良くもない。親玉が来ればこの拮抗は崩れるだろうな」
改めて聞くと、肩を落としたくなる話だな。
生まれて間もない子供相手に拮抗状態。
それでも、未だ親玉はピンピンしている。
「安心しろ、こちらにはシャルがいる」
「…?」
マオからの信用が凄いな。
悪い気はしないが、荷が重い。
ウォルテカが微妙な顔をしているのが気になる。
「……まあジェフとロウネの息子だ、期待はしている。
だが┈┈┈┈┈┈」
ウォルテカは俺を真っ直ぐ見つめ、今までなかった真剣な顔をする。
「┈┈┈┈┈┈親玉は我らが片付ける」
ふむ。
これも獣族の誇りというものなのだろうか。
「はい、なら僕は援護に徹するとします」
「うむ、そうしてくれ」
ウォルテカの言を了承し、マオの方を見る。
「…?」
うん。
彼女も特に思うところは無いようだ。
可愛い。
「では征こう」
「ああ」
「はい」
こうして、俺たちは最前線に赴いた。
金竜を倒す為に。




