そこに向かい、出会う
「三人とも…平気か…?」
「うむ…」
「ええ…」
「うん…」
この場にいる全員が疲れた返事をする。
息を切らしている者は三人の中には居ないが、先行きからの不安で余計に疲れてしまっているのだろう。
金竜の子供たちを倒して、そこからまた増援が来たりと、普通に大変だった。
生まれたばかりの子供だけでこの有様だ。
皆、心は穏やかではないだろう。
「はい」
三人に水が入ったコップを渡す。
彼女たちからお礼を受け取り、少し疲れが取れた。
「治癒するか?」
水を飲んだ三人に聞く。
治癒魔術は疲労に効かないが、気休めにはなるだろう。
了承の声を聞き、手を取って治癒魔術を使う。
「あ…」
「…?」
フィルに治癒をかけた途端、何かに気づいたような声を発する。
「どうした? フィル」
「えと………補助魔法…忘れちゃった…」
あ…
「……まあ、温存できたからいいんじゃないかな?」
「う、うん…」
正直、フィルの補助魔法がどの程度のものなのかは知らない。
俺の補助魔法に対するイメージは『微妙』だ。
耳を良くするにしても、筋力を上げるにしても、どれも実感が薄いものばかりだった。
「マオセロット様ぁ!」
と、こちらに向かって走ってくる女性が一人。
見ると、さっき助けた虎柄の獣族の人だ。
「ほ、報告します…! 金竜の子、約五割を除去。まもなく侵攻開始とのことです…!」
「うむ、ご苦労。下がれ」
「はっ…!」
緊張した様子のその女性は俺の方をチラッと見てから下がった。
「五割か…」
マオが疲れた様子で呟いた。
彼女の気持ちも分かる。
こちらにも犠牲はそれなりに出ているし、全員に疲労も見える。
この状態で更に半分、それに親玉も控えているんだ。
「フィル、補助魔法はどのくらい回せる?」
俺は落ち込むマオより、フィルに声をかけた。
「五十くらいなら、回せると思うけど…」
「ならそれ、全部俺に回してくれないか?」
「…?」
俺のあまりに強欲な頼みにフィルが首を傾げる。
「金竜は俺が倒す」
「…!」
俺の飛んだ発言にマオが目を見開く。
「シャル、ふざけるな…」
「なら一緒に行くか?」
「ん…? うむ…」
俺の答えが予想外だったのか、マオの返事が気の抜けたものになる。
「じゃあフィル、補助魔法は無しでいい。すまんな」
「うん、分かった…」
寂しそうに返事をするフィル。
自慢の補助魔法を見せる機会が無くなったからか、それとも…
「じゃあ、私とフィルは子供を相手にしてればいいのね?」
「ああ、頼む」
あの程度の金竜であれば、この二人が居れば勝てるだろう。
負担を大きくさせてしまうが、仕方ない。
「でもシャル、大丈夫なの? 予定にないことだけど…」
「大丈夫だ。今から確認しに行ってくる」
「うん、気をつけてね…」
「ああ、ありがとう」
こうして、俺とマオは歩き出した。
金竜の親が居る、最前線へと。




