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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
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開戦

金竜へ向かう道中、俺たちは獣族(じゅうぞく)の皆さんに追従していた。

後ろにも前にも獣族がおり、僅かな息苦しさを感じる。


それぞれが多様な武器、多様な装備を身に纏っている。


獣族は俺たちが歩く一本道ではなく、ほとんどが森の中を歩いている。

作られた道とは違いその地面はガタガタで、木や枝が行く手を阻んでいる。

それにも関わらず、その足が緩まる様子はない。


ずっと俺にくっついていたマオも、今日ばかりは離れて歩く。

だが、かなり近いところを歩いているため、たまに体が当たる。

エミリーとフィルも近い。


マオは白シャツと黒ズボン姿に、見覚えのある上着を腕を通さずに羽織っている。

片手には俺が龍王国で買ったハルバードを握っている。


四年前に買ったものを使ってくれているなんて、非常に嬉しい限りだ。


エミリーもいつもの格好だ。

青と白を基調とした仕立ての良い服に、左胸には金の刺繍で国の紋章が縫われている。

腰には鞘に収まった剣が一振(ひとふり)と、これまた俺が龍王国で買ったガントレットを下げている。


フィルもまたいつもの格好。

エミリーと似た服と、肩に巻くようにして濃緑(こみどり)の布を羽織っている。

一枚の布と言うよりは布切れに近いように思える。

そして、腕にはサイズの大きい袖のみの布を着ている。

その細い腰には矢筒と、背中には自前の弓を一張(ひとはり)


こちらの弓も俺が買ってあげたものだ。

やったぜ。


サラさんとウォルテカは前衛で指揮をとり、俺たちからは見えないところに居る。


「マオ、金竜はどのくらい強いんだ?」


金竜までの空いた時間、軽い話をする。


「かなり強い。だが我々なら勝てるだろうな」


マオは緊張の声音で答える。


彼女はそう言うが、実際は五分五分だろう。

俺やエミリーたちが加勢しているとはいえ、獣族が四年も何も出来なかったやつだ。

もしかすると、マオは民の前だからそんなことを言っているのかもしれない。


「私たちなら大丈夫よ」


エミリーが当然とばかりに言う。


彼女がそう言うのなら、大丈夫なのだろう。

エミリーが獣族の指揮を気にしている様子はない。


「フィルはどう思う?」

「んー、シャルがいるなら大丈夫だと思うよ」


なら大丈夫か。

俺がいるもんな。


しかも、二対一という超絶(ちょうぜつ)卑怯な戦いだったとはいえ、俺に勝ったエミリーとフィルもいるのだ。

それに、いかにも戦闘が得意そうなマオもいる。


はっ。

余裕だな。


「ん?」


マオが突然(とつぜん)立ち止まり、中空を見つめる。


なぜそんな行動をとったのかは分からないが、俺もそちらを見つめる。


だが、何もない。


「全員、構えろ」



ガシャガチャ



マオの一言で獣族の人たちがそれぞれの多様な武器を構え、腰を落とす。


俺は未だにそれがなんなのか分かっ┈┈┈┈┈┈



ッドオオオォォォォォン!



「「「「「 ┈┈┈┈┈┈!? 」」」」」


突如、大きな質量をもつ何かが轟音でその存在を知らしめる。


「ヴォアアァァァァ!」


そこには太い木を連想させる竜が立っていた。

強風を吹かせ、土を飛び散らせている目の前の敵を見据える。


体は逞しいと言うよりは太っているように見え、下腹部が中年のそれを思わせる。

自らの足で立っていると言うよりは、太い尻尾にその体重を支えさせているような体勢。

体は二.五メートルほどの大きさだが、それよりも小さく見えるのは太っているからだろう。


こいつが金竜か。


金竜と呼ばれている割には、その鱗は土色に近い。


「マオ、下がって┈┈┈┈┈┈」

「┈┈┈┈┈┈要らん」


俺が手に魔力を込めるより先に、マオが自分の身長よりも大きいハルバードをいとも簡単に片手で構える。


そして、金竜と対峙した。


「「 ……………… 」」


両者共に睨み合う。


金竜はマオを真正面で捉えている。

それに対し、マオは体の正面を横にいる俺たちに向け、片方の肩を金竜に見せるように構えている。


俺は何故か、その光景を固唾(かたず)を呑んで見守っていた。


「┈┈┈┈┈┈。」


先に動いたのは金竜。


見た目とは裏腹にその腕の動きは速く、太い鉤爪からは硬質なものを感じる。


常人ならば簡単に体が吹き飛び、貫かれるだろう。


だが、マオは違った。


金竜の勢いよく伸びた腕に、彼女の腕もまた動く。



ドチ┈┈┈┈┈┈ッゴォオオッ!



瞬間、マオが金竜の腕を振り払う。


その過剰すぎる力に、金竜の太い腕が殴打されたことで地面を(えぐ)る。

初撃を圧倒的な力で粉砕されたが、金竜の目は未だに目の前の敵を捉えている。


だが、それは間違いだ。


マオは二撃目を、今まさに動く寸前であった金竜のもう一方の腕に叩きつける。

すると、腕を叩きつけられた衝撃で金竜が地面を揺らしながらたたらを踏む。


マオがすかさず距離が離れた金竜を詰める。


それを金竜が阻もうと、息吹や鉤爪を駆使する。

だが、マオは軽やかな、そしてリズミカルな足取りでその攻撃を(さば)く。


その姿はまさに劇でも出ているかのような華麗さだった。



ガチャッ…



そして、間合いに入った金竜の首元を貫いた。


「「「 …………… 」」」


圧倒的だ。

あまりに圧倒的すぎて言葉が出ない。


「ふむ」



この日、俺は彼女に格好良さで負けた気がした。



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