試し
「では、シャルを含む獣族の総力戦で挑む。よいな?」
「は┈┈┈┈┈┈」
「┈┈┈┈┈┈待ちなさい」
俺が了承の声を出そうとすると、エミリーが待ったをかけた。
「私たちも行くわ」
…?
何を言ってるんだ、この子は。
金竜を倒しに行くのは獣族のみだ。
「お嬢様、話は聞いていたか?」
サラさんが問いかける。
「聞いてたわ」
ほんとに?
「だって……私もシャルと結婚してるもの」
あら…
「それは本当か?」
サラさんが俺に問いかける。
確かに、四年前にはエミリーにも求婚されたし、俺はそれを受けた。
魔王城から帰ってきた時もずっと俺に求婚してたしな。
ならば、結婚していると言っても過言ではないだろう。
また俺からもしよう。
マオをチラッと見る。
「…はい、結婚してます」
「そうか」
ふむ。
これで俺はエミリーとも結婚しているということになったのか。
となれば、もう一人の寂しがり屋が…
「シャル…」
そこには一人でモジモジしている可愛い女の子がいた。
自分で自分の手を握って、不安そうにしている。
実に愛おしい。
「フィル、結婚しよう」
「うん…………へへ…」
へへ。
しかし、エミリーとフィルを抱きしめられないのが残念だな。
マオは俺を離す気配がない。
マオの抱き心地も最高だが、二人の感触も恋しくなってきた。
ううむ…
「全員で行くのか?」
「そうなるわね」
四年ぶりに再会を果たした彼女たちと金竜討伐か。
非常に胸踊る出来事だが、相手は獣族が四年も何も出来なかった竜だ。
第一に考えるのは彼女たちの安全だ。
「いつ行くの?」
「明日だ」
「「「 え……? 」」」
明日…?
それはあまりにも早すぎやしないか?
「ちょっと、もう少し伸ばせないの?」
「無理だな」
「それはどうして?」
「金竜は今まで産卵期に入っていた、だから四年も大人しくしていたのだ。もうじきそれも終わる」
そうだったのか…
なら、獣族にとっても金竜との戦いは初めてかもしれないな。
「明日は我ら獣族の命運を賭けた戦いだ。それまで準備を整えておけ」
急な話だったが、明日が本番だ。
今も俺に抱きつくマオも、この四年間鍛えたのだろう。
相手は戦闘を得意とする獣族を苦しめた竜。
腕試しにはもってこいの相手だな。




