小さき弱者の一噛みで、その身は堕ちる
マオとこの前のことで話すことになった。
「ここに……金竜が住み着いたんだ…」
マオが俺に抱きつきながら話す。
今までずっと顔を埋めていたマオだが、今はその目的が違うように思える。
それにしても、金竜か。
そいつが何をしたかは知らないが、竜って付くやつにろくなのは居ないな。
「それで…あれだ……四年前から住み着いていてだな…………親と民が苦しんでいる間…私はシャルと…………そういうことだ…」
なるほどな。
つまりは俺の所為か。
大事な彼女が困っている時に近くに居ないんだもんな。
俺より自分の誇りを優先されたって、文句は言えない。
そう。
文句は言えないのだ。
「それって、自分の誇りを守ろうとしたってこと?」
「………うん…」
ふぅん…
「マオは立派だね」
「そんなことない…」
「何かを守るために自分の大事なものを犠牲にする人なんてなかなか居ないよ。マオは勇敢で、俺の好きな女性だよ」
「んん…」
俺の胸に顔を埋めながら、モゾモゾと動くマオ。
腕も俺の体を締めつけ、足でもお互いの体を寄せる。
「シャル……優しい…」
「マオは可愛いよ」
彼女の大量の髪に顔を埋める。
既に嗅ぎなれたはずの匂いが俺の体を解す。
「シャル……私も聞きたいことある…」
「ん、いいよ」
マオの聞きたいことか。
何を聞かれるのだろう。
結婚のことか、子供のことか。
男の子がいいか、女の子がいいか。
…………へへ。
「この腕……なんだ?」
「…?」
俺の腕?
えっちな質問じゃないのか?
「気になるところある?」
「右腕……知らない女の匂いがする…」
「………………」
右腕。
俺は腕との戦いでそれを失い、そいつの手によって治された。
マオの言っている匂いは、あいつのもので間違いないだろう。
「これ…治してもらったんだよ…」
「……怪我したのか?」
「今まで魔王城で暮らしてて、出るためにちょっとね」
「……そうか…」
少し回された腕の力が緩まった。
別に気を遣わなくてもいいんだが…
「ちょっと気を抜いた瞬間にボーンだったよ」
「ふっ、シャルもまだ甘いな」
おっと。
今まで俺に何度も騙されてきたマオがそれを言うか。
よし、分からせてやるか。
「マオ、ステーキ一人分なくなってるよ」
「な……!」
マオが埋めていた頭を離れさせ、机に置かれたステーキに目をやる。
ちゃんと二人分あるステーキに。
ぷにっ
「「 …………… 」」
俺の嘘にまんまと騙されたマオが固まる。
俺は隙だらけの彼女の頬に指をぷにっとしたのだ。
やわっこい。
「へっ、マオもまだ甘いね」
「…………」
マオが悔しいのか照れているのか分からない顔をする。
ただ分かるのは、その顔が可愛いということだけ。
マオは本当に愛おしい。
その顔を見れば、自然と頬が緩む。
「ご飯、食べよっか」
「……ん」
へへ。
「向こう向ける?」
「うん…」
マオが自分の体を俺からステーキの置かれた机に向ける。
それはジリジリとした動きで、少し焦れったい。
足も器用に俺に密着させながら動かす。
そして、マオの体がステーキに向いた。
机は少し遠いため、床に座りながらマオごとそこに移動する。
「あーんする?」
「する…」
よし。
ならば、昔よくやってたやつをやってやろう。
マオがパクっといく直前でヒョイってやるやつだ。
一切れの肉を切って、フォークでマオの口に持っていく。
「シャル」
「…?」
ヒョイっとしたかったのだが、マオが口を開いた。
「どうした?」
「ヒョイってやったら怒る…」
…………。
「そんなことしないよ」
「ふぅん…」
含みのある「ふぅん」だな。
俺は何もしようとしてないというのに。
「はい、あーん」
「…………」
パクっ
マオが静かに咀嚼して、飲み込んだ。
「おいしい?」
「うん…」
それはよかった。
このまま、マオにあーんし続けた。
ペロリと平らげた。
流石はマオだ。
と、言うことで今度は俺が食べる番だな。
自分で肉を切り分け、口に運ぶ。
「…………」
だが一つの視線を感じ、それを止めた。
マオが羨ましそうに肉を目で追っていたのだ。
「駄目だよ、これは俺の分」
「分かってるし…」
おい、なんで拗ねるんだ。
「食べる?」
「……うん」
仕方ないなぁ。
パクっ
「おいしい?」
「うん………でももういい…」
「いいの?」
「うん…」
マオが肉を我慢するとは…
やはり違和感があるな。
マオにはたくさん食べて欲しい。
お腹の赤ちゃんのためにも…
ぐへへ。
「俺、たくさん食べるマオ好きだなぁ」
「んん…」
いつもより高い声を出して、フォークを持つ俺の手を擦るマオ。
「シャルは卑怯だ…」
そんなことはない。
俺はマオが喜べば腹も膨れるし、食べる彼女も好きだ。
それに、昨夜はたくさんマオを頂いたしな。
「はい、あーん」
「…………」
ヒョイっ




