嘘から生まれるもの
ーマオセロット視点ー
シャル…
どこに行ってもあいつの匂いがする…
嫌だ…
嗅ぎたくない…
「シャル……っ」
やめろ…
考えるな…
…………。
シャルの匂い…
気持ちいい…
シャルの服…
気持ちいい…
シャルの…
「んんっ………ん……っ…」
…………。
「……………」
収まらない…
あのオスが来てから、何度しても収まる気配がない。
ずっと気持ち悪い考えが頭にある。
「マオ」
扉が開かれると同時に名前を呼ばれる。
サラが部屋に入ってきた。
しゃがみこんで、座りこんだ私と目線を合わせる。
「話す決心はついたか?」
「話す決心ってなんだ…」
「シャルのことだ」
「…………」
あいつと話して何になるんだ…
私の家に勝手に住んでいるらしいが、あいつと関わる気なんてない。
馬鹿で、屑で、最低なオス。
四年も大切なメスを放っておく無責任なやつ。
「あんなオス…匂いも嗅ぎたくない…」
「そうか」
サラは全く表情を動かさない。
何を思ったのかも、何を考えているのかも分からない。
「マオ、お前は自分の誇りを守りたいのか?」
「……そうだ」
「ならシャルに早く出ていってもらいたいか?」
「………ああ」
当たり前だ。
あんなのにずっと居られては困る。
シャルなんて嫌いだ。
さっさとエミリーでもフィルでも、馬鹿みたいに交尾していればいい。
それに、あいつからは嗅いだことのないメスの匂いがする。
私の代わりを直ぐに見つけたのだろう。
だいぶ匂いが濃い。
もうあいつも私に興味など無いだろう。
……………。
「なら、自分でその誇りとやらを守るんだな」
サラはそう言って、立ち上がる。
「…どういう意味だ?」
「誇りを守るんだろ? なら力づくでもシャルを追い出してこい」
シャルと話してこいというわけか…
シャルとまた話せる…
「分かった…」
「ん」
本当はあんなやつと話したくなんてないが、サラに言われたのだからしょうがない。
じゃあ…あいつの部屋に行くとしよう…




