再開の言の葉
ーエミリー視点ー
先程の部屋に向かう。
今、マオが何を考えてるのか分からない。
だから、力づくでも話してもらう。
「マオ」
扉を開けて、彼女の名を呼ぶ。
「………エミリーか…」
そこには壁にもたれかかったマオがいた。
いつもの力強さや生意気さなどは感じられない。
ぐったりと力無くもたれていて、元気が無いのが分かる。
「あなた、なんでシャルを突き放したのよ」
「……お前には関係ない…」
関係ないなんてことはない。
シャルが悲しむのは私も悲しい。
だから、その原因を作ったマオを問い詰めなくてはならない。
「関係あるわ。マオ、シャルがあなたのことを好きってことは分かったはずよ」
「…………知らん…」
癇に障る反応だ。
マオは自分の思ったことを言えるハッキリした子だったはずだ。
この四年で変わったかもしれないけど、この反応は違う。
彼女はシャルと別れたことを絶対に後悔している。
「マオ、好きってことはちゃんと伝えなきゃ駄目よ」
「……………私にその権利は無い…」
「ふざけないで。シャルの様子は見たでしょ? それでも権利が無いと言うつもり?」
「……私の問題だ…」
何が私の問題だ。
私たちは何か問題があっても、ちゃんと話し合って解決してきたはずだ。
胸の内を話し合って、理解し合ってきたはずだ。
それなのに、私の問題?
マオは今まで二人でやってきたことを一人で背負い込もうとしている。
身勝手にも程がある。
「マオ、大切なものを失ったあとは辛いわ。それはあなたもこの四年で分かったはずよ。ならきちんと伝えてきなさい」
「………………私は…」
さっさと言って、早くシャルの笑顔が見たい。
「私は…………」
「…………」
「……シャルが嫌いだ…」
「っ………」
こいつ…
「……そう………そこまでするのね」
まさか、マオがそんな事を言うとは思わなかった。
「そんな嘘をつく理由は分からないけど、口に出した以上は責任が出てくるわよ……ちゃんとそれを返せるようにしておくのね」
「…………」
殴ってやりたい気持ちを抑え、マオに背中を向ける。
しばらくはマオと口を利きたくない。
シャルのいる扉を開ける。
「ん、お嬢様」
と、シャルの顔を覗き込んでいる女がいた。
ここの族長を務めているマオの母、サラフェノ・ザニャールだ。
「サラ、どうしたの?」
「全員でしばらく泊まってもらおうと思ってな」
「そう、ならしばらく厄介になるわ」
「うむ」
どうやら、サラもマオの気持ちに気づいているようだ。
だけど、そのことはシャルに伝えていないのが分かる。
彼の顔はまだ晴れていない。
私はどうするべきだろう。
マオの気持ちをシャルに伝えるべきか…
サラが私の方まで歩いてきて、耳に顔を近づけてくる。
「これは二人の問題だ。解決するまで待った方がいい」
「そうね」
心苦しいけど、シャルなら大丈夫だろう。
今のマオは心配だけど、シャルは話すのが上手い。
あの堅物の口も開くことが出来るだろう。
「ありがと、サラ」
「構わん」
扉を閉める。
「…………」
目の前で抱き合っているシャルとフィルを見る。
「フィル、そこ退きなさい」
「やだ」
よし。
私もやることが出来た。




