表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
114/150

再開の言の葉

ーエミリー視点ー



先程の部屋に向かう。


今、マオが何を考えてるのか分からない。

だから、力づくでも話してもらう。


「マオ」


扉を開けて、彼女の名を呼ぶ。


「………エミリーか…」


そこには壁にもたれかかったマオがいた。


いつもの力強さや生意気さなどは感じられない。

ぐったりと力無くもたれていて、元気が無いのが分かる。


「あなた、なんでシャルを突き放したのよ」

「……お前には関係ない…」


関係ないなんてことはない。

シャルが悲しむのは私も悲しい。

だから、その原因を作ったマオを問い詰めなくてはならない。


「関係あるわ。マオ、シャルがあなたのことを好きってことは分かったはずよ」

「…………知らん…」


(かん)に障る反応だ。


マオは自分の思ったことを言えるハッキリした子だったはずだ。

この四年で変わったかもしれないけど、この反応は違う。

彼女はシャルと別れたことを絶対に後悔している。


「マオ、好きってことはちゃんと伝えなきゃ駄目よ」

「……………私にその権利は無い…」

「ふざけないで。シャルの様子は見たでしょ? それでも権利が無いと言うつもり?」

「……私の問題だ…」


何が私の問題だ。


私たちは何か問題があっても、ちゃんと話し合って解決してきたはずだ。

胸の内を話し合って、理解し合ってきたはずだ。


それなのに、私の問題?

マオは今まで二人でやってきたことを一人で背負い込もうとしている。

身勝手にも程がある。


「マオ、大切なものを失ったあとは辛いわ。それはあなたもこの四年で分かったはずよ。ならきちんと伝えてきなさい」

「………………私は…」


さっさと言って、早くシャルの笑顔が見たい。


「私は…………」

「…………」

「……シャルが嫌いだ…」

「っ………」


こいつ…


「……そう………そこまでするのね」


まさか、マオがそんな事を言うとは思わなかった。


「そんな嘘をつく理由は分からないけど、口に出した以上は責任が出てくるわよ……ちゃんとそれを返せるようにしておくのね」

「…………」


殴ってやりたい気持ちを抑え、マオに背中を向ける。


しばらくはマオと口を()きたくない。



シャルのいる扉を開ける。


「ん、お嬢様」


と、シャルの顔を覗き込んでいる女がいた。

ここの族長を務めているマオの母、サラフェノ・ザニャールだ。


「サラ、どうしたの?」

「全員でしばらく泊まってもらおうと思ってな」

「そう、ならしばらく厄介になるわ」

「うむ」


どうやら、サラもマオの気持ちに気づいているようだ。

だけど、そのことはシャルに伝えていないのが分かる。

彼の顔はまだ晴れていない。


私はどうするべきだろう。

マオの気持ちをシャルに伝えるべきか…


サラが私の方まで歩いてきて、耳に顔を近づけてくる。


「これは二人の問題だ。解決するまで待った方がいい」

「そうね」


心苦しいけど、シャルなら大丈夫だろう。

今のマオは心配だけど、シャルは話すのが上手い。

あの堅物の口も開くことが出来るだろう。


「ありがと、サラ」

「構わん」


扉を閉める。


「…………」


目の前で抱き合っているシャルとフィルを見る。


「フィル、そこ退()きなさい」

「やだ」


よし。

私もやることが出来た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ