元通り
「簡潔に言うと、四年の間はずっと鍛えていました」
エミリーとフィルにこれまでのことを話す。
あまり良い思い出は無いし、最初の頃はずっと焦っていたから記憶が薄い。
「そこから色々あって、腕と殺し合いになりました」
「…色々って?」
「……色々です」
「ふぅん」
含みのある返事だ。
別に疚しいことなんて微塵もないのに。
「あと……少し聞いていいですか?」
「なに?」
俺にも彼女たちに聞かなければならないことがある。
正直、聞くのは辛い。
考えるだけでも辛いほどに。
「………浮気って……どこからでしょうか…」
「「 …………… 」」
不味い…
勘付かれたか?
なわけ。
とりあえず、正座する。
「まあ…別にそういう事するのは構わないわ」
「私はまあ……一言言ってくれれば…」
「すみません…」
嫌だなぁ…
まだ彼女たちと再開して二日しか経っていないのに…
「相手はルーシャ?」
「……はい…」
…………。
「ならなんでそんなに取り乱すのよ」
「二人を殺そうとしたからです」
俺の中で最も許せないこと。
それをあいつは宣言した。
「でも…」
自分たちは生きている。
フィルが言いたいことは分かる。
だが、あいつのことは信用できない。
「シャル、ルーシャは私たちに手は出さないわ」
「いつかは出します」
「出さないわ」
俺は出された。
治るのに一年かかる傷を。
今は彼女たちの癒しで落ち着いているが、またあいつに会ったら俺は取り乱すだろう。
それほどあいつは┈┈┈┈┈┈
「邪魔するぞ」
「「 …? 」」
腕がノックもせずに入ってきた。
俺は既に彼女たちと腕の間に入り、臨戦態勢に入る。
「てめぇ、何しにきやがった」
「言っても信じないじゃろ。とりあえず服脱げ」
「あ?」
こいつは何を言ってるんだ?
それで脱ぐやつがいるかよ。
「シャル」
「………」
エミリーが真っ直ぐに俺を見つめる。
彼女の言いたいことは分かる。
だが、リスクがあまりに大きすぎる。
「信用しなさい」
「…………はい」
ベストに手をかける。
脱ぐフリをしたり、脱ぎながらチラッと見たり。
そして、上裸になった。
「少しヒヤッとするぞ」
そう言う腕の手には何やら黒い塊が握られていた。
石英の結晶の形をし、黒曜石の色をもつもの。
それが俺の患部にピトッと当てられた。
「魔力を込めるんじゃ」
「………」
右肩に魔力を集中させる。
その間も俺は肩に目をやらず、腕だけを注視していた。
「「 っ……! 」」
後ろで二人が驚く。
……なんだか、体が変だ。
重たいというか、なんというか…
「ん、元通りじゃ」
「…?」
右肩を見る。
「…………」
腕が生えてる。
懐かしの温かみと重さ。
今まで動かし方を忘れていたのに、もう自分のもののように扱える。
凄いな…
「…爆発とかしないか?」
「せん」
本当か?
彼女を触ったらボンッてならないか?
「じゃ、部屋に戻る」
「……ん」
腕は早々に振り返り、扉へと手をかける。
「主、自分の体は………いや…いい…」
「…そう」
扉が閉められた。
「……シャル…?」
ゆっくりと振り向く。
「えと…」
何を言っていいのか分からない。
腕が俺の傷を治した。
元々あいつから付けられた傷だから、当たり前といえば当たり前なのだが…
気の利いた一言を言いたい…
「た……ただいま?」
ああ…
頭痛い…




