話し合い?
ついに…
ついに彼女たちに会うことが出来た。
凄く嬉しい。
嬉しいのだが…その前に確認しておきたいことがある。
お互いの気持ちの確認だ。
さっきまで抱きしめ合っていたのに、なんでこんなに不安なのか分からない。
言葉として彼女の気持ちが欲しいのだろうか。
俺は女々しいやつだな…
話し合う場所は懐かしの教室。
多くの椅子があるが、なぜか床に座りたかった。
正座で座る。
俺はなるべく彼女たちに近づくように座った。
なるべくのつもりだったが、膝がくっつきそうなくらいまで近づいてしまった。
体が触れてすらいないのに、俺の心臓は既に根を上げている。
こんなに緊張したのは久しぶりだ。
俺は顔を少し俯かせて、せっかくの彼女たちの美顔を拝めていない。
「「 あの…(シャル…) 」」
フィルと声が重なる。
「どうぞ…」
「ありがと…」
フィルも顔を俯けているのが分かる。
仕立ての良い服をキュッと握り、彼女も緊張している様子だ。
「……私たちって…その……付き合ってる…のかな?」
聞かれたのは俺も聞こうとしていたこと。
それなりの覚悟をして聞こうとしたことだが、聞かれる側も辛いものがある。
もし、これで…
「僕はまだ…付き合っていたい……です…」
言うのが辛かった。
昔はあんなに好きと言っていたのに、俺も口説きが下手になったな…
「……私は…?」
エミリーが膝に手を置き、体を少し前に傾けて言ってくる。
その顔は芸術品と言っていいほど美しく、ずっと眺めていたくなる。
その少し潤んだ碧眼の瞳で見つめられることが嬉しい。
「もちろん…好き……です…」
エミリーがにじり寄ってくる。
顔は俯かせているが、ドレスの裾をギュッと握る手で何を考えているのか分かる。
俺もエミリーが嫌じゃなくて嬉しい。
これ以上ないほどに。
俺のことを忘れている覚悟もしていた。
俺よりも好きな男が出来ている覚悟も。
だけど、彼女たちは四年間も俺を想ってくれていた。
忘れそうになっていた俺とは違う。
彼女は最高の人だ。
「じゃあ…聞きたいことも沢山あると思うし……いろいろ話そ┈┈┈┈┈┈」
瞬間、エミリーの体がフワッと動いた。
俺の体に彼女の腕が伸び、顔をこちらに寄せてくる。
そして…
「…!」
キスされた。
思いきり体重をかけられ、思いきり抱きしめられる。
俺の唇を食べるように口を動かし、それに合わせて舌も動く。
「んっ……ん…」
気持ちいい…
エミリーに求められるのが嬉しい。
「っ……寂しかった…っ」
エミリーが床に肘をつき、潤んだ目で見つめられる。
彼女の匂いがする。
美しい顔が近い。
「すみません…」
片腕のみでエミリーを抱く。
「辛かった…」
「すみません…」
「ずっと……ずっと好きだった…っ」
「僕もです…エミリー」
胸が温かくなる。
大人になったエミリーの胸。
健康的に鍛えられた体。
きっと、魔王城に行くために彼女も頑張ったのだろう。
それが嬉しい。
何よりも。
「シャル…」
………あ。
「エミリー…フィルが見てます…」
「いや…」
そう言って、より一層の力を込めるエミリー。
俺はどうするべきなのだろう。
四年ぶりに会えた愛しの人。
抱きしめられ、見つめられる。
俺は一体…
「…ほらエミリー、シャルの部屋いくよ」
「…ええ」
…?
なんか、フィルの反応があっさりしてる…
あの寂しがり屋で、何かあると拗ねる女の子だったのに…
見た目が大人になったからか、中身も同じように成長したのか。
少し悲しい…
胸は相変わらずなのに…
ー
俺の部屋に来た。
カーテンは閉められ、昼でも中は暗い。
そこのベッドに三人の男女が寝転がる。
元々大きめのベッドだが、三人だとさすがに狭く感じる。
寝返りがうてなくなった。
だが、不快感は全くない。
俺の心には幸福感が溢れまくっている。
「シャル…」
「…?」
「……今日は寝かさないわ」
「………」
どうやら、厳しい夜になりそうだ…




