ギザ歯黒髪ロング長身女子悪魔に魂を売り渡し俺を地獄に捨てた幼馴染学校のアイドルにざまぁしてみせる
ギザ歯女子の話が書きたくなったんです……
ギザ歯女子のお話が! ランキングに入れたので! 嬉しいです!
そして、ギザ歯ヒロイン視点
『ギザ歯黒髪ロング長身女子悪魔は学校のアイドルに地獄に落とされたアイツにざまぁさせたい』
(https://ncode.syosetu.com/n6925he/)
そして、ざまぁされた女の子視点
『大切なことを忘れた学校のアイドルはギザ歯黒髪ロング長身女子悪魔にざまぁされた。』
(https://ncode.syosetu.com/n9318he/)
もよければ読後にどうぞ。
「アタシと契約しねえか?」
目の前にいる髪も心も真っ黒な女はギザ歯を見せつけながら笑った。
「ああ……そうだな。頼む、俺にざまぁとやらをさせてくれ」
「オーケー、あのクソ女にしょんべんちびらせてやろうぜ」
「お前、本当に汚ねえな!」
*************
おっす! 俺、小角伏人! 絶賛地獄体験中!
地獄の名は『嘲笑地獄』! みんな俺をあざ笑ってくるんだ!
あ、ごめん! みんなじゃないや! クラスの中心グループが無視してくるんだ!
まあ奴らが無視すれば大半がそれに従うんだ! くそったれマジョリティHAHAHA!
……さ、ということで、これからどうしようか。
原因は分かってる。
俺がクラスの、いや、学校のアイドル、天羽璃々《あもうりり》に告白したからだ。
『天羽! 俺と付き合ってくれ!』
『ごめんなさい、気持ちは嬉しいけど付き合えないの』
『そっか……でも、ちゃんと向き合ってくれてありがとな!』
そして、シェクハンド!
と実に爽やかなフラれシーン。これで終われば、爽やかB級ラノベだったものを、偶然、トイレ前で天羽の声を聞いてしまったことで、どろどろB級ラノベになっちゃったわけだ。
『昨日さあ、小角にコクられたの! 気持ち悪かった~! 身の程を知ってもらいたいわ~! 勉強も運動もダメ、顔もさえないクラスカースト最下位のヲタクと、私が釣り合うはずないでしょ! 最後意味不明な握手させられて、超手洗ったわその後! ま、アイツ私に惚れてるからなんか困ったことあったら私に言いな。アイツに押し付けるから。キャハハって、小角!?』
はい! お前はB級サスペンスドラマの犯人か! 全部断崖絶壁の崖の上で喋るんじゃないよお間抜けさん!
ま、断崖絶壁の崖じゃなくてアンチ潔癖トイレだったけどね! うまくないね!
そして、こっからB級ドロドロラノベ突入開始~!
そっからは、もう豹変。トイレ前に立ちすくむ俺に対し汚物を見るかのような目でカースト上位グループが立ち去ったかと思うと、教室で天羽が号泣してて、一瞬で俺、小角伏人は、告白でフラれた腹いせに腕づくで迫ったど変態野郎のレッテルを迅速丁寧に貼り付けられてしまったわけです、はい。
そういうわけでクラスに居場所がない藤哲也、こと、小角伏人は、我が変態人生の始まり、故郷、アンチ潔癖トイレにて便所飯を試みようと思ったのだが、首根っこをむんずと捕まれ、止められちまったわけだ。
「なんぞ?」
誰かは線香臭い匂いで分かったので、言い方も雑。他の人だったら超丁寧に「ななななななにかごごごごごご用事ですか?」って、人並以上に敬意の接頭語つけまくりすます、サンタさーん! ってなもんですよ。まあ、おいといて。
振り返った先にいたのは、俺と同じくらいの170センチ(俺は171あるからギリ勝っている!)の黒髪ロング背丈もロングな女子。
「どうした、エレン・イエーガー」
「身長170センチなんて女子にもいるだろが」
「どうしたゴールドシップ」
「流行りだな、悪くない」
何が悪くないのか分からないが、目の前のギザ歯悪そうなウザ娘はそう言った。
彼女の名前は来馬晶。あ、馬がついてるヨカッタネ!
おいといて。
文字通りの悪い友と書いて悪友である。
身長170センチ(俺より1センチ低い!)黒髪ロング、前髪垂らしまくりで、目つきが悪く、ギザ歯、で、すげえない胸張ってブレザーのポケットに手を突っ込んで偉そうに歩く。
蹴られた。胸見たからかごめんな胸見て。蹴るな。
まあ、というわけで、一目でヤバい奴だと分かるが故に誰も関わろうとしない孤高の魔女。
学校も休みがちだし、授業はかなりの頻度で寝てる。先生も起こしにすら行かないノータッチトペコン。休み時間も近づくなオーラを出しまくりすます、サンタさーん! ってなもんである。噂によると三年をシメたとかなんとか。サバかな。
そんなやべえヤツが首根っこ掴んできたら普通の男子であればキョドる。
しかし、俺は普通の男子ではない。
「おい、クソど変態男子、行くぞ」
「へい、姉御」
ってなもんで、ド変態な上にプライドを細長く切って、油でこんがりきつね色に揚げて、塩少々プライドポテトにしてゴミ箱にダンクシュート出来る底辺野郎小角伏人はその瞬発力を活かし、すぐに従う、振りをしてダッシュで逃亡! まわりこまれた! にげられない!
はい、というわけで、(俺を)シバいた女に連れられてやってきたのは竜宮城ならぬ、屋上。
流石、激ヤバ来馬姫さんである。進入禁止の屋上に恐れもせずに入っていく。俺も勿論恐れはしない。なんたって来馬さんがいるからなあ! 来馬の威を借る小角である。ヒャッハー!
「で、どこが爆笑シーンだ?」
「ねえよ! 爆笑シーンは!」
来馬がかい摘みすぎる質問をぶちかましてくる。とはいえ、以心伝心。流石従順なる下僕小角伏人である。これだけで意味を読み取る。
昨日の告白はどうだったのか? そして、フラれシーンはすべらない話に出来そうか、他にオー〇リーのオールナイトニッポ〇に投稿できそうなネタはないか、その事情聴取である。
「死んでもやめんじゃねえぞ」
「なんなの!? エスパー!?」
「テメエが分かりやすすぎるだけだ、ケケケ」
うわああ、ケケケって笑ってるう……。来馬は相変わらずギザ歯を見せつけ笑っている。
コイツにはずっとこの調子でネタジャン、『おめえのポケットにまだネタ入ってんじゃねえのか!? オラジャンプして見ろよ。チャリンチャリン言ってんだろが、オラ出せよオラオラオラオラオラ!』、で空条徐〇ばりに責めてくる。ちなみに空条〇倫は174センチしゅん。
昼休みや放課後に屋上に拉致されネタを提供し、解放される。そんな日々を快感に変えられた男小角伏人ではあるが、今回のは笑えるポイントが見当たらなかったので、守秘義務を守らせていただく。
「いや、別に」
「どっかの女優じゃねーんだから、気取んな。全部喋れや。かつ丼、食わせろ」
理不尽デカ女、来馬により俺は全てをゲロった。勿論、かつ丼もおごった。
かつ丼屋さんの美味しいかつ丼を食いながら、来馬は笑った。
「げひゃひゃひゃ! あのクソ女、マジで最悪だな!」
うわあ、げひゃひゃひゃって笑ってるぅう……。GACKTを神と崇めるジェネレーションな俺としては大分刺さったのだが、針だけに。多分ついてこれないだろうから口には出さず、代わりに肉汁溢れるカツを口に入れながら笑う。
「はっはっは! そういうわけなんだよ! もぐもぐ」
「で、いじめられてるってわけか」
「ごふーっ!!! っけほけほ……お前、なんで」
「……アタシはあのクソ女のことならなんでも知ってんだよ」
ひええええええ! 激やば女が激クソ女に対する怒りを吐き出すと、ハキ喰らったよわよわバイキングこと小角伏人は気絶する、振りをする。これ以上はヤバい。コイツと長い付き合い、3ヶ月とちょっと、あ、コイツと付き合える人間からすればね、当社比当社比、から見た今のコイツの怒りっぷりは尋常ではない。触らぬ来馬にたたりなし、くわばらくわばらクワバタオハラ。
来馬は、天羽のことが心から嫌いらしく、俺が天羽が気になっていると伝えたときも、天羽に告白すると宣言した時も異常なレベルでキレた。同じ小中で、散々あのクソ女のクソっぷりはクソ知ってるわクソ、とどっかの海のコックばりにクソを多用し、天羽のことを表現していた。しかし、人を表面でしか見られない男、小角伏人容疑者17才は、見事に引っかかり嘲笑の監獄に入れられてしまったわけだ。
というか、今も来馬がクソを連呼している。やめたまえ、ここは誇り高き庶民の場、安い早い美味い丼ぶり屋さんぞ。俺は、さっさと会計をすませ、クソ製造機と化したヤバ女を連れ出す。クソを出すなら断崖絶壁の崖、じゃなくて、アンチ潔癖トイレである。アンチ潔癖トイレのある公園という名のフリーエンターテイメントワールドにエスケープした。
「あのクソ女がああああ!」
コイツの天羽に対するキレっぷりが半端なさ過ぎて引く。っていうか、引く通り越してもう推せる。俺の為とかでは全然ないだろうけど、こんだけ怒ってくれてる来馬たんマジ天使泣ける推せる。
「何ニヤニヤ見てんだコラア」
ぴえん。
「悪いな、お前が散々忠告してくれたのに」
「……で、お前、どうする?」
「どうするって?」
「このままあのクソ女にマウントとられたまま残りの学校過ごす気かっつってんだよクソが」
あれ? いつの間にか俺もクソられてない?
「よくはねーよ。けど、あっちは学園のアイドル様、こっちは底辺ヲタク。スクールカースト奴隷層の俺に何ができる?」
「……『ざまぁ』してみねえか?」
ざ、ざ、ざ、ざまぁ!? って!!? アレか!? ラノベとかでよくあるアレか!?
落ち着け、魅力的な言葉ではあるが、ラノベじゃないんだし……ラノベじゃないのか……う、頭が……
「あのクソ女の悔しがる顔見たら、ドラッグストアで箱ティッシュ買いに行かなきゃな」
「やります」
悪魔の言葉に思わず、受けてしまう。おのれ……悪魔め、こうみょうなてぐちで……!
「でも、具体的にはどうすんだよ。ラノベなら、実は隠れた才能を持っててとか、美人の彼女が出来てとかになるがラノベじゃない、から……ラノベじゃないから! オレ、サイノウ、ナイ! オンナカンケイ、マジ、ナイ!」
「なんで頭を押さえながら急に宇宙人と化したは知らねえが、お前に才能なんて期待してねえよ」
ぴえん。
「要はアイツが悔しがる程度に男あげりゃあいいわけだ。そうだな……勉強学年10位以内、腹筋割れてる、女子に複数人告白される。あとは……まあ、とりあえずはこの位で十分だろ。」
「十分すぎるけど! 舐めんな! 俺は雑魚中の雑魚だ!」
「今日イチの声が出てるな、雑魚。まあ、任せろ。アンタをオオボラ野郎にしてみせる」
「嘘を吐くのはよくないと思います!」
この時、反射で突っ込んだ神速の男、小角伏人であったが、オオボラとは大法螺吹きのことではなく出世魚の名前だそうで、ボラの名前の由来は太い腹、ほはら(腹太)から転じて生まれたらしい諸説あり、というわけで為になったねえ~とグーグ〇先生から学んだもう高校生、小角伏人はオオボラ野郎になるべく、来馬から作戦を聞くことにした。
「いいか、女子に告白されるかどうかは時の運もあるが、少なくとも、勉強と筋肉に関してはちゃんとやりゃあできるレベルの話だ」
「嘘だ!!!!」
ひぐらしがなく頃ではない冬の入り口で俺は叫んだ。そんなレベル上げどうすればやれるのかなかな。
「嘘じゃねえよ、必ずそうしてみせる。が、条件がある」
「条件?」
条件がある。古今東西国士無双、この言葉でいいことがあったためしがない。
「アタシと契約しねえか?」
かわいいを被った悪魔との契約で魔法少女になる以上に、やべえを被った激やば悪魔との契約でちょっとマシ男子になるという契約による条件、激やば案件である。小生小便しそうだぜい。イエア!
「ど、どういうことだYO」
精いっぱいのラッパーといういっぱいっぱいの虚勢を張って聞くと、
「アタシはあんたに必ずざまぁさせてみせる。だからうまくいった暁には、アタシの言うことを三つ必ず聞いてもらう」
をい、ドラゴンでも世界中に散らばる七つの球を集めてようやく一つの願いを叶えてくれるんぞ。なのに三つだと。やめておけ、それは改悪ぞ。
「ざまぁ出来たら、さぞかし気持ちイーんだろうなあ」
ぐほおお! 悪魔のハスキーボイスで気持ちイーはヤバ杉晋作。
急に立位体前屈したくなること山の如し。もとい、俺のは小山だ。俺は正直者、小角。
「……このまま、学生生活、ただ耐えるだけで棒に振るのと、少しでも前向いてやりあうのどっちがいい」
悪魔のささやきが俺に迫る。
「大丈夫だ、アタシがどんな手を使っても必ずざまぁさせてみせる」
なんだこの安心感は、いや、分かっている。この激やば悪魔女は、必ずやられたらやりかえすヤバん沢直樹なのだ。こと、それに関しては全幅の信頼を置いている。
「わかった、てめえのことだ。悪だくみさせたら天下一品だ」
「よく分かってんじゃねえか、アタシのことを」
目の前にいる髪も心も真っ黒な女はギザ歯を見せつけながら笑った。
「ああ……そうだな。頼む、俺にざまぁとやらをさせてくれ」
「オーケー、あのクソ女にしょんべんちびらせてやろうぜ」
「お前、本当に汚ねえな!」
来馬は思いっきりギザ歯を見せて笑った。
その日、俺はコイツに魂を売った。
それから、俺のざまぁな日々が始まった。
来馬曰く、クソ底辺野郎がざまぁを成し遂げるには半年はかかるらしく、二年になった春休み明けにざまぁを成し遂げることになった。これに関しては、そんなに時間が掛かるなどとは契約違反ぞと迫ったが、立派なアッパー喰らってラッパーモドキ敗北、従うことにした。
それまでの間、あの地獄に耐えねばならぬのかとぴえんした俺、小角伏人だったが、それは杞憂だったと翌日思い知る。
「グフフフ、おーい、ド変態野郎。テメエよく学校に来れたなあ」
「ゲルグググ、おい、やきそばパン買って来いよ」
「キュベレレレ、掃除も一人でやってよねん、じゃないとどうなるかわかるわよねん」
と、モビルスー〇顔の角ばった三人が早速絡んでくる。ていうか、朝から焼きそばパン売ってねえし、掃除も今からさせるなんてお前はさては案外潔癖野郎だな。っていうか、後ろで笑ってる天羽マジ怖いマジむりぴえん。
と、心の中で悪態を吐きながら、身体は反して従おうとすると、教室のドアがぶっ壊れるんじゃないかってくらいの音を響かせて悪魔がやってきた。ていうか、ドアぶっ壊れた。寒風吹きすさぶぜ、どうしてくれんのこれ、今、冬ぞ。
「おい、アタシの下僕に手を出してんじゃねーぞ」
身長170センチ(俺より身長低い)の激やば悪魔が黒い三連中を見下ろす(俺より態度デカい)。
「ぐふ」「げるぉおおお」「きゅう」
崩れ落ちる、えずく、借りてきた猫になる。黒い三連中は激やば悪魔に過去何かしらのトラウマを植え付けられたのであろう。急に弱体化バフを喰らい始める。もしかして、この悪魔、ヤバすぎ……?
すると、後方主ヅラの天羽が、前方腕組主ヅラでやってくる。
「あらあ、来馬さん。これはクラスの問題だから部外者は出て行ってくれない~?」
「あ? お前誰だ?」
「ああ、カースト下層の人間は私のことなんて拝むことも今まで出来なかったのね。天羽よ」
「あ、もう……? すまん、ちょっとわかんねえな。アタシの知ってる天羽といえば、小学校で同じクラスだった、あれえ、おっかしいな~、あの天羽さん、だとすれば、この天羽さんは……」
と、何か厚めのアルバムみたいなのを取り出す。小学校名が書いてあるので卒業アルバムか。
その瞬間、天羽が目を見開き身体を震わせる
「あんた……それ……!」
「あもう、あもう、ちょっと待ってくれ思い出すわ。小学校の時のあんた見れば、今のあんたとつながるかもしれな……」
「ぐふふふふ! 小学校の時の天羽さん!? 俺にも見せてくれ」
「やめろ!」
「ぐふ……!」
鼓膜破れんじゃないかってくらいのキンキン越えの絶叫が悪魔によってぶっ壊された入り口を通り抜け廊下まで響く。そして、その声の主、天羽がアイドルとはかけ離れた醜悪な顔でこっちを睨む。
「でけえ汚ねえ声出すなよ、学校の天使ちゃんよ、堕天でもする気か」
天羽はハッと気づき、周りを見れば、クラスの人間が顔を引きつらせ天羽を見ている。
「あ、ご、ごめん。これは、違うの。あの、」
「おーっと、予鈴だ。じゃあ、アタシは行くわ。おう、下僕。このアルバム預かっといてくれ。どっかの堕天使が迫ってきたらこれを盾にすると良い」
授業なんてまともに受けていないであろう悪魔が、そのアルバム、いや、ネクロノミコンを渡し、去っていく。そして、堕天使はこちらを睨むが、なんのこちらにはネクロノミコンがあるではないか。それを見せると、堕天使、こと、天羽はぎしりと歯を鳴らし、席に戻っていった。それ以降、俺に堕天使の仲間が襲ってくることはなくなった。俺はこのネクロノミコンを開いてみたい衝動に駆られたが、マジやべえのが召喚される気がしたので、そっと懐に隠した。
昼休み。人間代表、小角伏人は悪魔から召喚されるという前代未聞の出来事を体験し、屋上に至る。
「じゃあ、お前にこれをやろう」
悪魔は、俺に一枚の紙を渡してきた。全部赤文字なんでちょうこわかった。
内容は、ざまぁをする為の虎の巻でした。
以降、内容。
腕立て、腹筋、スクワット100回、ランニング10キロ。
をい、ワンパンマ〇じゃねーか。
「意外と理には適ってんだよ。まあ、最初からできるとは思ってねえから、最初は分割でいいぞ」
と、未来のワンパンマ〇に闇金ウシジ〇ちゃんが提案してくる。
まあ、部活はこのウシジ〇ちゃんと数人の陰キャ仲間たちとでやってる『漫研』という名のアニメ鑑賞部なので、時間的な問題はない。
問題は量だ。
「こんなにやって意味があるとは思えませぬ。論理的じゃないね」
「しね」
シンプルな論破。いや、論破かこれ。
「いや、だって、これでほんとに意味あるの」
「SNSとかでサイタ〇式ちょいちょい上がってるだろうが」
「SNSは信じない主義なんでね」
悪魔は舌打ちすると、眉間に指を当て、暫く悩んだ。かと思うと、すくっと立ち上がり、俺の目を見据えて話しかける。
「証明すれば、やるんだな」
「え? お、おう」
「わかった」
そういうと、悪魔は、自分の上着に手をかけ、腹を曝け出した。
「おま! 何やってんの!」
「うるせえ! 見ろ!」
ち、痴女だあああああ! と叫びたい思いよりも女子のおなか見たーいという思春期男子としては至極真っ当ななんの違和感もない至極真っ当な思いが勝ち、拝ませていただくと、悪魔の腹筋はうっすらと割れていた。
「す、すげえ」
「分かったろ。まあ、アタシは自分に合わせた量に変えたから、この程度だけど、お前があれだけやればがっつり腹筋も割れ……おい、聞いてんのか」
「綺麗だな……」
は! お、俺は、一体何を! やべえ! 消される! 闇金ウシジ〇ちゃん、頼む海に沈めるなら、贅沢言いませんからせめて沖縄のエメラルドグリーンの海に!
なんてことを土下座しながら祈っていると、一向にウシジ〇ちゃんの拳が飛んでこない。
顔を上げるとウシジ〇ちゃんはこちらに背中を向け腕を組んでいらっしゃった。
「あ、あの……ウシジ〇様」
「ころすぞ」
背中から発せられる闘気は、鬼と書いてオーガの形になり、アメリカ軍隊と一人で渡り合える雰囲気を醸し出していたので、グラップラーでもなんでもない日本の一般人一名、小角伏人は静かなること林の如しった。
そして、鬼から逃れるべくつぶさに観察をすると鬼の耳は真っ赤に変化しており、血を連想した想像力豊かな思春期小角伏人は、再度土下座をチャイムが鳴るまで続けた。
放課後、俺は鬼様に鬼様からの指令を早急に果たすべく学校を飛び出した。決して怖かったわけではない怖かったわけではない。
鬼様は髪を切れと仰られた。なので、俺は鬼様に指示された美容院に向かった。高そうな美容院だった。勿論、費用は俺持ちぴえん。
清潔感を出せということだった。
『いいか、まず見た目でいうなら清潔感だ。一に清潔感、二に清潔感、三四がなくて五に……』『十!』
そこで俺の記憶は途絶えた。メモによると、顔面をいじるのは最終手段として、清潔感は努力でもどうとなる上に、顔面をのぞいては一番のモテ要素らしい。その中で髪は一番早くに手を掛けるべきところらしく、短めに切ってもらうよう命令された。
「はいはいはい、キミがきばっちの言ってた子ね。よろしく~☆」
鬼様の紹介でというと怪訝な顔をされ、真名を伝え直し、現れたのが、鬼様の知り合いとは思えない菩薩のようなやさしい仏様であった。しかし、煩悩を呼び起こす御身体をしてらっしゃるので、思春期小角伏人の身体にはやさしくない仏様であった。
「いや~、きばっちが『おもしろいのがいる』って言って紹介されたからどんな子かと思ったけど、存外普通だね~」
菩薩様は、アルカイックなスマイルをかましながら俺にクリティカルヒットをおかましになられた。
「でもね、あの子に友達がいて本当に良かった。あの子、高校に入ってすぐはめちゃくちゃ荒んでてね、それが、夏休み明けくらいからかな。面白いやつがいたって表情が柔らかくなり始めたのよ~」
流石菩薩、今のあの状態で柔らかくなったと思えるとは……。しかし、そうか。確かに、俺と来馬がちゃんと知り合ったのは一年の二学期に入ってからだった。俺はそれまでの学校での来馬は噂でしか知らなかった。なので、話してみると意外と話せるなという印象だった。その後、なんやかんやで漫研に入り浸られ、仲間を連れてこられ、徐々に封印を解き放つように暴れはじめた。
「はは、そんなに変わりましたか、アイツ」
「そりゃもう、元々頑張り屋で溜め込む癖があったからねえ。それがここに来る度、キミの話を聞かせてくれて、楽しそうだったよ」
ネタジャンプがまさかのここで公開されているとは……けれど、そうか。
俺は、なんと言えばいいのかわからないもにゃもにゃした気持ちでいっぱいになった。
そして、急に腰が据わったような気がした。
「あの、菩薩様」
「あ、私、大原ね。何?」
「こんなお洒落なところでアレなんですが、坊主にしてもらえませんか? あの、一回、生まれ変わりたいというか、その……」
「……うん、キミはやっぱり面白い子だね。わかった! でも、ちょっと伸びたらウチに来なさい。整え方とか教えてあげるから」
「感謝します。菩薩様」
「大原ね」
そして、菩薩様のお陰で、俺は見事に坊主となる。……ちょっと誤解がありそうだが、仏の道にはまだ入れない、煩悩丸出しの男、小角伏人だからだ。
けれど、なんかちょっと余計なものが髪と一緒に切り落とされた気がした。
翌日、クラスでは嘲笑どころか、爆笑をかっさらい、意外にもクラスメイトから受け入れられ始めた。坊主のせいか、クラスメイトの言い方もポジティブに受け入れられた気がした。なむなむ。
そんな俺を天羽は憎々し気に睨みつけて来たので、ネクロノミコンを掲げて退散させた。申し訳ありません、仏様、私は悪魔に魂を売ったのです。
昼休み、来馬は俺の坊主を見ると目を見開いたが、その後、にやりとギザ歯を見せつけ、昼休み中俺の頭をシャリシャリし続けた。
「あの、来馬さん」
「あん?」
「いつまで私はシャリられるのでしょうか?」
「アタシが満足するまで」
放課後、引き続き来馬にシャリられていた。ガクブルする俺。しかも、そのせいか腕が疲れたとか言って、来馬の膝の上に寝転がらされ、両手でシャリされた。太ももはちょっとやわらかかったし、線香臭いと思っていた匂いもなんだかいい香りじゃない? とトランス状態に入りかけた俺、小角伏人は、心の中で読経(適当)をし続けてなんとか耐えしのいだ。これが悟りか……。
堪能された来馬様は私が帰ることに許可を下さった後、何かをお与えくださった。
「これはなんでしょうか?」
「なんで敬語だよ。今日の礼だよ。受け取ってくれ」
ドラッグストアの袋の中には、化粧水やらボディシートが入っていた。
「とりあえず、顔と歯はちゃんと洗え。清潔感。あと、無駄に臭い消臭スプレーはやめたほうがいい。大体イケメンに限るだから。石鹸の匂いくらいがちょうどいいんだよ。まあ、がんばりな。坊主になるくらいの気合があるんならきっとうまくいくから」
ギザ歯を思いっきり見せて笑った来馬は不覚にもちょっとかわいかった。
俺は、去っていく来馬を見送ると、袋の底に、湿布が入っていた。
筋トレとランニングのせいで、一日震えっぱなしだった俺はその場で湿布を貼って、家に帰った。湿布の匂いがやけに鼻を通り過ぎていく気がした。
そして、俺は服を着替え今日もランニングに出かけた。
ランニングは正直最初きつかったが徐々にランナーズハイというか楽しくなってきた。どんどん成長している感じも楽しかったが、それよりも、道行く人の挨拶が俺の人間レベルをどんどん上げてくれている気がしてテンションが上がった。
時には、おじさんと並走しながら昨今の金融政策とやらに対するおじさんの話を濁しながら聞き流し、出会ったおばあちゃんの何十回目かのよしひろの話を聞き流し、キッズたちの〇ケモンの情報をメモしたりした。ありがとう、キッズ。誰だよ、よしひろ。
そして、徐々にスピードが上がってきた一か月後、俺は来馬とランニングで出会った。
「ようやく追いついたか」
なんか、剣の師匠みたいなことを来馬は言ってきた。
「お前も走ってんの?」
「お前よりずっと前からな。身体は鍛えといて損はねえからな」
何のために? というのは聞けなかった。いきなり東京ドームの下にあると言われる地下格闘技場とかに連れて行かれても困る。
そして、それからは俺は来馬と一緒に走り始めた。意外にも来馬は、出会う人たちと普通に会話していた。来馬曰く、同世代の方がめんどくせえらしい。なんか分かる気がした。
そして、夕方のランニングを走り終えると、俺はシャワーと来馬に与えられた美容メニューをこなし、飯を食って、図書館に向かう。勉強の為だ。来馬に与えられたメニューには勉強も勿論あった。毎日一時間三十分の勉強。短いようにも思えるが俺には強い味方があった。進〇ゼミではない。
「待たせたな」
ヒーローみたいなことを言いながら、来馬がやってくる。
そう、来馬ゼミだ。
本当に意外だったのだが来馬は勉強ができる。正直、なんだコイツと思った。
だが、来馬は教えるのもうまかった。なんだコイツ。
「まあ、あんたが教わるのうまいよ」
「そんなのあるか?」
「相手の気持ちを考えられるってことは、相手の言いたいことを読み取りやすいってこと。つまり、教わるのがうまいってことなんだよ。プライド高い馬鹿はめんどいだろ」
なるほど、分かる気がする。
「あんたはさ、あんま才能とかないって言ってたけど、それも十分才能だとアタシは思うけどね」
そう言って来馬はギザ歯をニヤリと見せつけて悪戯っぽく笑った。
一年の三学期中間で俺は学年13位になった。来馬は一位らしいなんだコイツ。
「いや~、しかし変わったねえ、おづのっち」
「菩薩様はお変わりなくお美しいですね」
「大原だから! でも、褒めてくれてありがとう!」
俺は、定期的に来馬の勧めてくれた美容院に来ていた。
来馬はピンキリとは言ったが、美容院ってすげえなと思った。
髪の整え方は勿論、色んなことを菩薩さまから伝授していただいた。
しかも、菩薩様は下界の話題に詳しく、テレビではあれが今人気だとか、あの芸人が来てるとか、あのアーティストをしっておけば間違いないとか、街のあの店のスイーツがうまい、とか。流石菩薩様はお話がうまく、俺のその話術がうつってるなとよく思う。そのお陰か、よくクラスで話しかけられるようになった。盛り上げも出来てる、気がする。
そして、何度目かの菩薩様のご教授が終わる。
「今日もありがとうございました、菩薩様」
「大原でございました、また来てね」
「ええ、今日も凄い楽しかったですし、為になりました。美人の話は飽きませんね」
「も~、おづのっちはおべっか上手になったねえ」
「いえいべっ……!」
ケツを蹴られた。蹴ったのは来馬だった。ヤバいなんか知らんがめちゃくちゃ苛々している。
「どした? なんかあったか?」
「なんでもない……」
「あらあら~、とらないわよ私旦那いるし~」
「……! と、とるとらないじゃなく! 小角が! 調子に乗らないよう戒めてんの!」
そう言いながら付き添いで来てくれた来馬はさっさと出口の方へ歩いていき、振り返ったと思うと、そのギザ歯を遺憾なく見せつけ
「イーだ!」
その大人っぽい雰囲気とはかけ離れた子供みたいな仕草で俺を笑わせた。
笑ったら蹴られた。
春。四月。
新入生たちがワクワクと心躍らせながら高校生活に期待を馳せる。
どんな部活に入りたい、どういうことをしたい、また或いは、どんな出会いがあるのか。
新入生たちのわいわいがやがやとした雰囲気の中、少しだけ空気の変わる場所があった。
「ねえ、あの人先輩だよね? かっこよくない?」
「そうかあ、普通だろ」
「これだから、男子は……めっちゃいいよ」
「雰囲気イケメンだろ」
「中身イケメンって感じ。絶対やさしくしてくれるわあ」
雰囲気イケメン? 中身イケメン? ナニソレ食えるの?
そんなことを思いながら俺は二年生として登校している。
筋トレして背筋が伸びるようになったせいか、周りの声がよく聞こえるようになった。
嫌な声とか聞こえてくるんじゃないかと思ったが案外そうでもなかった。周りに気を配れるしよく見える。ちらほら俺を見てる人がいるけどそこまで悪い感じではないと思う。
とはいえ、俺にとって今日は勝負の日。
少しばかり歩調が速くなる。そして、クラス替えの表を見て、拳を握った俺は教室へと急ぐ。
「ああー、行っちゃった」
「結構細マッチョぽかったね」
「清潔感やばくなかった? めっちゃ爽やか」
「名札見てきた。名前分かったよ」
「いないと思ったらマジ!?」
「超いい匂いした。石鹸の匂い」
「おい」
「まあまあ、で、名前は?」
「えーと、小さい、角、で……」
「どした? 後ろに、何、が……」
「マジ?」
「あの人、超美人じゃない?」
教室に着いた俺はひとまず本でも読んで待つことにした。
すると、ざわざわと人を連れながら誰かが入ってくる。
「あ! あなたが後ろの人! ひゃー本なんて読んで真面目だねえ! よろし、く……」
俺が顔を上げると、そこには天羽がいた。相変わらず、取り巻きを連れているようだ。
「ああ、天羽か。おはよう」
「お、お、おは、よう」
天羽が口をパクパクさせながら、こっちを見ている。なんだコイツ。
「えー! 小角くん! 雰囲気変わってない!?」
「どうしたの!? そんな感じだったっけ」
「まあ、ちょっとがんばってみた。褒めてくれてありがとう」
菩薩さまから与えられしアルカイックなスマイルを向けると、女子たちが顔を真っ赤にしてパクパク、男子たちは真っ青でパクパク。なんだコイツら。
「ね、ねえ!」
天羽が机に両手を置いて乗り出してくる。かがみすぎじゃない?
ちょっと見えそう。何がとは言わないが。
「あんた、本当に変わったね。い、今なら、今のあんたなら私付き合ってあげ……」
「おい、アタシの下僕に手を出してんじゃねーぞ」
相変わらずのハスキーボイス。一度聴いたら忘れられない声と顔がすぐに合致するハスキーボイス。背中にズシリと重みを感じる。おい。
「はあ~、またあんたなの! き、ば……」
天羽は俺の後ろを睨みつけたかと思うと目を見開いてそのまま止まる。何? ザ・〇-ルド? 他の生徒たちは一瞬止まるが、すぐにざわめき始める。今度は男子も赤い顔をし始める。
「おい。いい加減胸を押し付けるのやめろよ、来馬」
俺がそう言うと、預けられていた体重が軽くなり、俺の隣にふわりと風が。いい匂いがした。
そこには、美しく長い黒髪、すらりとした手足、細く引き締まった身体、そして、背の高いモデルのような女子生徒がいた。来馬である。今日は春休みと同じように、少しだけ化粧をしている。
「セクハラだな、小角」
いや、お前がな。
っていうか、春休みに聞かされたが、来馬はマジでモデルをやっているらしい。うわあ、ラノベみたい。
体型維持や美容に詳しいのもそのせいで、休みがちなのも仕事の関係だったらしい。けど、学校はやめたくないと猛勉強をして、学年一位をキープ。なんだったら、補習はめちゃくちゃ真面目らしく先生はみんな好意的らしい。バレるのがいやで、髪で顔をかくして化粧も全くせずに学校に来てたらしいが、春休みになってそのことを全部話してもらった。あ、ケケケ笑いも作ってたらしいしゅん。
俺としては、なるほどなくらいの感じだった。普段の努力している姿もそうだし四六時中ずっと一緒にいたら、あれ? コイツ実は美人じゃね? くらいは流石の鈍子・どM・鈍男、小角伏人でも気づく。でも、学校もこれで行くからと春休み宣言された時には意味が分からなかった。
聞いたら「アタシもざまぁに参加したい。あと、虫よけ」と言われた。
鈍子・どM・鈍男、小角伏人はふーんとしか言えなかった。
正直、ざまぁもどうでもよくなっていた。学年末で二位をとって、近所のスポーツチームでエースとして活躍、近所でも爽やかお兄さんの名を欲しいがままにしている俺にとって、お山の大将天羽に対して特に何の感情も持ち合わせてなかった。
なので、口をパクパクさせた後、何も言わず俯いた天羽を見て、もういいやと思った。
ただ、来馬は納得いかないようで、天羽に声を掛けていた。
「テメエに変われるってことを教わったつもりだったが、結局テメエは変われてねえよ。あの頃のままだったな」
天羽はその言葉にびくりと震え無言のまま席についた。その日天羽はずっと小さく震えていたような気がする。休み時間もすぐに外に出て授業ぎりぎりに飛び込んできてた。放課後も彼女は取り巻きを待つことなく一人で帰っていた。
俺は、大きく息を吐いた。
多分、俺の『ざまぁ』は終わった。
元ド変態野郎、小角伏人は、我が変態人生の始まり、故郷、アンチ潔癖トイレに立ち寄りて後に、帰宅を試みようと思ったのだが、首根っこをむんずと捕まれ、止められちまったわけだ。
「なんぞ?」
「いくぞ」
捕まった。『ざまぁ』を達成してしまったということは契約終了のお知らせである。
俺は、バクバクする心臓を押さえながら、来馬と一緒に屋上へと向かった。
「さて、では、契約はこれにて成立だ。報酬を貰うぞ」
「あ、ああ……」
「それは……」
と、そこで、来馬が言いよどむ。来馬が言いよどむようなことが報酬なのか?! なになに怖い!
と、震えていると、来馬が顔を上げ、口を隠しながら頬杖をついている。
「一つ目は、その、な……名前で、呼びあいたい、んだけど……」
あれ? コイツ顔真っ赤じゃね?
来馬はモデルやってるだけあって美白とかちゃんとこだわっているので、めちゃくちゃ白くてきれいな肌をしている。だからこそ、赤くなるとめちゃくちゃ目立つ。
しかし、名前呼びか。気が付けば来馬からは小角と呼ばれ始めた。
俺も出世したもんである。そして、俺も来馬のことを名前で呼べと。
俺が何か言おうとすると、俯きながら手で制し滅茶苦茶早口で喋ってくる。
「二つ目! 今度遊園地に連れていって! 週末空いてたら!」
それを言うと、来馬は慌てて立ち上がり、屋上から去ろうとする。
あれ? コイツ顔どころか手も足も真っ赤じゃね?
俺は、笑った。心の底からもにゃもにゃした。
「三つめは?」
「……ま、また、今度でいい。週末とかに」
おい、これ以上俺をもにゃもにゃさせるでないよ。表現の仕方が分からん。
基本ファンタジーとかのラノベしか読まないから、もうちょっと恋愛系も読むべきだな。
でも、お勉強大好き、小角伏人、ここの答えには自信がありますぞ。
「じゃあ、三つめはいいから、俺からもお願いあるんだけど」
「なに……? 内容によっては考える」
来馬は振り返らずに立ち止まって背を向けたまま尋ねてきた。
いやー、まさかね、こうなるとはね。いつからかね。いや、多分決定打は分かってるのよ、いつからかは。
「あの、さ。晶」
びくりと来馬の身体が跳ねて、小刻みに震えている。
「俺は晶のことが本気で好きなんです! 俺と付き合ってくれませんか!?」
向こうの答えは最悪どっちでもいい。いやいや嘘嘘、成功の方がそりゃあいいよ。
でも、ここまで変われた俺を改めてみてほしい。そして、答えを聞かせてほしい。
来馬が振り返る。
その顔は、俺が魂を売り渡した。この子に捧げてもいいと思った、びっくりするほどかわいい笑顔と同じくらい、輝く泣き笑い顔だった。
「伏人!」
ギザ歯を見せつけながら彼女はこちらに駆けてくる。
俺の魂はこれからも彼女に売り渡したままになりそうだ。
晶視点の話もいつか書きたい所存。書きました、勢いで。
ギザ歯ヒロイン視点
『ギザ歯黒髪ロング長身女子悪魔は学校のアイドルに地獄に落とされたアイツにざまぁさせたい』
(https://ncode.syosetu.com/n6925he/)
もよければどうぞ。
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