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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第19章 SSSSSSSSSSSSSSSSSSS〜正直に言うけどタイラー伯爵はあの有名なカリオストロ伯爵とそっくりでビックリしましたよ〜
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第263話 【賢者】の知恵

 3つの願い事のうち、2つまでを無駄に使ってしまった。


 残りは1つ。


 たった1つの願い事をするだけで、


①戦争がなくなること。


②人々が愛し合うようになること。


 を、実現しなくてはならない。


 これは難問だった。


 なぜなら「戦争が終わるように」と願っても、効力が発揮されるのはナハナハ島に限定されているので、むしろナハナハの戦いが終結することによって、本土決戦の到来が早まってしまうのである。


「いやー、難しい。僕は【賢者の杖】に、何をお願いしたらいいんだろう?」


「そんなことより」


 明らかにムッとした顔で、ジャックが言った。


「アリスターが『カレーを食べたい』なんて願ったせいで、ナハナハじゅうにカレーの雨が降ったんだぞ。これをどうやって掃除するつもりだ?」


 確かに見渡すかぎり、どこもかしこも茶色くべったりとしたもので覆われていた。


「あれは願い事のつもりじゃなかったんだけどな。【賢者の杖】っていう割に、人の気持ちを全然読めなくて困るよ」


「グチっても遅い。〇〇したいという言葉に自動的に反応する、融通の効かない機械みたいなアイテムだと思うしかないな」


「気をつけよう。うっかりすると、カレーを片付けることに最後の願い事を使っちゃいそうだ」


 とはいえ、願い事を使わずに、ナハナハのカレーをすべてなくすことは不可能だった。


「雨が降っても、このスパイシーな匂いと色は落ちないだろう。仕方ない、島民には僕が謝って歩くよ」


 するとセイラが、


「降ったのがカレーで、爆弾でなくて良かったね」


 と言った。


 それを聞いた瞬間、僕はそれこそ、頭上で爆弾が破裂したような衝撃を受けた。


「い、今セイラ、何て言った?」


「え? 私、何か言った?」


「降ったのが、カレーで良かったって言ったろ?」


「ていうか、爆弾だったら、被害はこんなもんじゃ済まなかったでしょ?」


 もちろんそうだ。そしてもうそろそろ、シンのB31スペシャルがやって来て空襲が始まるかもしれない。


「セイラ、きみは天才だ! 最高だ!」


 僕はセイラの手をとって、グルグル回した。セイラは人形のように回されながら、僕を憐れむように見た。


「かわいそうなアリスター。この世を救うというデカすぎるプレッシャーに負けて、とうとう気が狂っちゃったのね」


「アハハハハ、ダメだよ、セイラ〜。狂うなんて言葉は放送禁止だぞー」


「アリスターこそ何よ。さっきからアン湖見たいとかアン湖に入りたいとか連呼して、あれこそ放送禁止でしょ」


「違う違う。湖の名前だもん。変なこと考えちゃ困るなー。何を連想したの?」


「答える必要なし」


「アハハハ、僕は幸せだなー。セイラがいて、アン湖も見れたら、もう望むものはないよ」


「バカ! くっつけて言わないで! 私が何か見せたみたいでしょ!」


 いやー、女の子を相手にふざけるのは、実に楽しいですね〜♫

 

 と、その幸せな最中さなかに、


 ウーーーーーーーー、ウーーーーーーーー!!!!


 この音は!?


「空襲警報よ!!!」


 オーガが叫んだ。


「シンの飛行機が来るぞ! たぶんB31スペシャルだ!」


 オークも叫ぶ。


 ついに来た。


 無差別大量殺人の始まりだ。


 軍人を殺し、


 民間人を殺し、


 老人、病人、ケガ人を殺し、


 女、子どもを殺し、


 妊婦も赤ん坊も殺すのだ。


 あと数分で、ナハナハは地獄に変わる。


「セイラ」


 僕はセイラを抱き寄せた。


「ところでセイラは、死ぬ前に何を食べたい?」


「ちょっと、アリスター」


 セイラが僕を押しのけた。


「ふざけてる場合じゃないでしょ。その杖で、早く戦争を終わらせてよ」


「まあまあ。さっきは僕の好きなカレーを降らせたから、今度はセイラが食べたいものを注文しようかなーと思って」


「バカッ!!」


 セイラの平手打ちが頬にとんだ。


「罪のない大勢の人が殺されようとしているのよ! それなのに、何で食べ物を注文しようとしてるの!」


「それは、セイラがヒントをくれたからだ」


 僕は【賢者の杖】を掲げた。


「これを持ったから、僕も【賢者】になったのかもしれない。すごく頭が冴えてるんだ」


「貸して。もうアリスターには使わせない」


「いや、信用してくれ。降ったのがカレーで爆弾じゃなくて良かったって聞いて、素晴らしいアイデアを思いついちゃったんだ」


「…………」


「あれ? それは何って訊かないの?」


「聞くのが怖い」


「まだ信用してないなー、僕は賢者だぞー」


「おい、いい加減にしろ!」


 ジャックが怒った。


「グズグズしてると、本当に人が死ぬぞ。1人も死なさずに戦争を終わらせるのが、俺たちの大目標だったろ!」


「おお、ジャック。お前の好物は何だ。注文してやるぞ」


 ジャックは後じさり、頭の横でクルクルパーとやった。


「ルイベはどうだ。何を食べたい。でっかい松茸か?」


 ルイベが黙ったので、僕はくだらない下ネタを言ったオヤジみたいになってしまった。


「答えたくないならいい。ナハナハ島の人たちや、軍人さんが好きなものを頼むことにするから」


 南のほうから、B31が飛んできた。たぶん数十機は来る。空襲と同時に戦艦も攻めてきて、一気にシン兵が上陸してくるかもしれない。


 仲間たちが、険しい顔で空を見上げる。


 その後ろに僕は立った。


「じゃあいよいよ、最後の願い事をする」


 僕は【賢者の杖】についた石をさすり、天に向かって差し延べた。


「ナハナハの戦いで使用される爆弾を、全部みんなの好きな食べ物に変えて下さい!!!」


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