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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第19章 SSSSSSSSSSSSSSSSSSS〜正直に言うけどタイラー伯爵はあの有名なカリオストロ伯爵とそっくりでビックリしましたよ〜
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第259話 いざ、悲劇の島へ

「どうしたの?」


 セイラの声に、ハッと我に返った。


「何か考え事してたみたいだけど」


 そのとおりだった。今僕らのパーティーは、召喚獣ガルーダの翼に乗り、ナハナハ島に向かっているところだった。


 戦局が、いよいよナン国にとって深刻になり、何とかしなければナハナハの民間人が多数犠牲になるという、一刻の猶予もならないときだったのだ。


 それなのに、


(運命のイタズラで、またアイリンに会えるだろうか)


 などという甘い空想に、どっぷり浸っていたのである。


(僕には今、セイラという彼女がいる。ゆくゆくは結婚も考えている。そんな状態でバッタリ会ったら、あの子にどんな顔をしたらいいのだろう?)


 と、まだ起きてもいないことを心配して、無駄な気を揉んでいる自分に、


(しっかりしろ! 事態はそれどころじゃないんだぞ!)


 言い聞かせてはみるものの、


(またいつか、ニーニーに会える。そう信じてる)


 というアイリンの凛とした声が、耳にありありと甦ってくるのだ。


「アリスター、ナハナハを心配しているのね?」


 セイラは勘違いしていたが、言われたことは本当だったので、


「うん。実はーー」


 と、転生前の世界の話をした。


「僕が昔いた地球のニッポンで、オキナワ戦というのがあった。そのオキナワとナハナハが、すごくよく似ているんだ」


 正直、オキナワ戦については語りたくなかった。


 あまりに悲惨すぎるからだ。


 ニッポン側の戦死者は約20万。戦死者数というものはたいてい諸説あって、どの数字が正しいかは決められないが、この20万のうちの半数は民間人だったようである。


「オキナワでは、一般の県民も戦わなくてはならなかった。ニッポンの兵隊は明らかに足りなかった。その兵隊だって、ほとんど少年みたいな隊員を片道燃料の飛行機に乗せて、次々と特攻に送り出す状況に陥っていた」


 ニッポンの陸軍は、来るべき本土決戦の準備をしていた。その時間を稼ぐために、オキナワで敵を少しでも長く食い止める。だから勝つというよりも持久戦ーーできるだけ粘って死んでくれといういくさであった。


「オキナワではあらゆる人が犠牲になったけど、よく語られるのが少年少女たちだ。鉄血勤皇隊なんていう少年兵部隊とか、ひめゆり学徒隊なんていう、従軍看護をする女子学徒隊が組織されたりね。そのほとんどが死んだ」


 僕は口を閉ざした。それ以上、言葉は出て来なかった。


「そうなんだ」


 セイラも、口数が少なかった。


「ナハナハが、そうならないようにしないとね」


「うん」


 ガルーダは、青い空を一直線に飛ぶ。


 *   *   *


 やがて、ナハナハ島が見えてきた。


 僕たちは、北側の海岸に降り立った。その辺りの防備が手薄に見えたからである。


 すると、


「ヤー!!」


 まだ10歳くらいの頬っぺの赤い少年が、竹槍を構えて突進してきた。


 竹槍の切っ先は、オーガの腹に突き刺さった。


「ウガー!!!」


 オーガが咆えた。すぐにセイラが【ヒーリング】をかけたが、オーガはいつまでも腹をさすっていた。


「子どもにやられると、何だかこたえるわね。切なくて」


 オーガがぽつりと言うと、


「すみません!」


 ナンの国民服を来た男性が走ってきて、竹槍を持った子の頭をポカリと叩いた。


「コラ! いきなり何をするんだ!」


「だって父ちゃん、鬼畜シン兵が上陸したら、竹槍で戦えって言ったじゃないか」


「このお方は鬼畜じゃない。よく見ろ、鬼だ!」


 オーガは恥ずかしそうに、手で角を隠した。


「どうも失礼しました。子どもには常々、シン兵は鬼だと教えていたものですから。まさか本物の鬼さんが上陸するとは思わなかったので」


「いえ、気にしないで下さいな」


 オーガはそう言ったが、僕は黙っていられなかった。


「失礼ですが、あなたは民間人ですよね?」


「そうです。ナハナハで農業を営んでおります」


 男性が丁寧に答えた。


「しかし、もはや民間人だから戦わないなどと言ってはいられません。ナン兵の何倍ものシン兵が、着々とナハナハに向かっているのです。我々には自分の身を守り、また本土に敵が上陸するのを防ぐ責任があります」


「いえ、その責任があるのは軍人です」


 僕は暗澹たる気持ちで言った。


「しかも、こんな幼い子に竹槍まで持たせて……そうまでして戦争をやる義務はありませんよ。もし敵が来ても、どうか逃げて下さい」


「とんでもない。私は生まれこそナハナハですが、ナン人であることに誇りを持っています。ナン国のために命を捧げることを、少しも惜しいとは思いません」


 昂然と胸を張る男性を見て、僕はもう何も言えなかった。


「……鬼さん、ごめんなさい」


 少年はしょげていた。オーガは膝をついて少年と目線を合わせ、


「鬼ごっこして遊ぶ?」


 優しく言った。


 少年の目は輝いた。


「うん!!」


「よーし、それじゃあワタシとオークが鬼よ!」


 オーガとオークが金棒をかざし、少年を追いかけた。


 少年は全速力で逃げた。本物の鬼2体が迫り来る恐怖に、絶叫して泣きじゃくりながら。


 リアル鬼ごっこかよ……懐かしいな!!!


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