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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第17章 SSSSSSSSSSSSSSSSS〜みんながみんなをフォローして誰もブロックしない。そういう世界の実現を僕は目指しています!〜
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第233話 ダンジョンの作り方

 ラオウ島の地下は巨大な唇だった。


 僕はそれに呑み込まれた。


(唇だけの女か)


 僕は転生前のことを思い出す。


(隠キャの高校生だった僕は、年上の女の人に食べられるのが夢だった。今それが叶った。夢想していたのとはだいぶ違うが)


 女の口の中はピンクだった。血の色が透けているのかもしれない。感覚的には、スライムの中にすっぽりくるまれた感じ。スライムの中に入ったことはないが。


「勇者アリスター」


 女の声が僕を呼ぶ。


「あなたが来るのを待っていたわ」


「僕を?」


 会ったこともないほどデカすぎる女が、どうして僕なんかのことを?


「僕を待っていて、僕を食べたの? なんで?」


 ウフフという笑い声。いや、それは通常の声ではなく、このスライムのような空間を伝わってくる一種の波動だった。


「私は火山の精霊よ。森の精霊とは会ったでしょ? 今度は私の番よ」


 久しぶりの、精霊の登場だ。


 吸血鬼との対決で、僕らに力を貸してくれたとき以来だろうか?


「そうだったんですか。火山の精霊さんって、ずいぶんセクシーなんですね」


 アハハという波動。年上の女性を上手く笑わせたという、くすぐったい勝利感に包まれる。


「それはそうよ。この世は全部オスとメスでできているんだもの。だからすべてのものはセクシーなのよ」


「ここがピンクなのは、マグマの色ですか?」


「そうね。私の血管を流れているのは、マグマだから」


「それ、セクシーです」


「ありがとう。あなたの血管を流れているのは何?」


「ワイン、と言いたいところですが、フツーの赤い血ですよ」


「普通がいいわね。私も普通だし」


 なるほど。人間も精霊も、自分のことは普通だと思いたがるものらしい。


「ところで、どうして僕が来るのを待っていたのですか?」


 火山の精霊が答える。



 ーーそれは私が戦争を嫌いだから。

 ーー戦争をやらせている魔王が嫌いだから。

 ーーあなたが魔王と戦う宿命だから。

 ーー私たち精霊はあなたの味方だから。



「えーと、すみません。いっぺんにたくさん言われて、よく聞き取れませんでした。もう一度言ってくれますか?」



 ーー勇者アリスターが眼福マスターになるとき。

 ーー魔王は本気を出すだろう。

 ーーあなたが勝てば世界は【幸福】になる。

 ーー極めなさい【幸福】を。



「ごめんなさい。どうしても聞き取れません。何と言ったのですか?」


「ゆっくり言うわね」


 火山の精霊がゆっくり言った。



 私の島で、

 殺し合いが始まろうとしている。

 私はそれを許さない。

 ナンの兵士は閉じ込めた。

 これからシンの兵士が来る。

 勇者アリスター。

 あなたはこの島を、

 ダンジョンにしなさい。

 シンの兵士たちを殺さず、

 武装解除し、

 自分たちの国に返してやるのです。

 それがあなたの使命。



「今度は聞き取れました」


 と僕は言った。


「でも意味がわかりません。この島に、僕がダンジョンを作るんですか?」



 ナンの兵士たちが、

 地下に陣地を掘った。

 戦争のための陣地を。

 私はそれをダンジョンにした。

 でもまだ足りない。

 勇者の力が必要。

 だからあなたを穴に引きずり込んだ。

 真に人類を愛する、

 戦争を憎む勇者のあなたを。



「確かに僕は戦争が嫌いです。でもダンジョンなんて作ったことはありません。どうしたらいいのですか?」



 あなたの心のままに、

 あなたの願いどおりに、

 このダンジョンは変化する。

 だから地下の壁が、

 女の人の唇に変化したでしょう?

 違う?



 僕はびっくりして目を見開いた。


「えっ!? じゃああれは……」


 女の人に食べられたい、巨大な唇に囲まれて、生温かい舌にくるまれてみたいという、僕の深層心理に潜んでいた願いが、現実化したということだったのか!


「そうだったのか。恥ずかしいですね。こんな勇者でいいのですか?」



 そんな勇者でいいのです。

 そういうあなたを天は選ばれたのです。

 自信を持っていいのですよ。



「ありがとう、精霊さん」


 僕は覚悟を決めた。


「作りましょう、ダンジョンを!」



 そうこなくっちゃ!

 さあ、願って!!

 


 僕は想像した。


 シンの兵士が上陸してくるところを。


 その数は、およそ10万人くらいになるだろう。


 彼らはラオウ島に飛行場を建設し、ナンの本土を空襲する航空基地にするつもりだ。


 そうすれば、民間人が大量に殺されることになる。


 絶対にそれは避けねばならない。


 彼らには、シンに逃げ帰ってもらわねばならないのだ。


 僕のダンジョンで、もう二度と戦争には関わりたくないと思うほど、圧倒的な恐怖を味わってもらう。


 傷つけたり殺したりはしないが、ある程度のショックは与える必要がある。


 果たしてそういうダンジョンとは……


 僕が必死に考えていると、やがてスライムのような空間が変化し、陰鬱な暗い色に変わった。


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