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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第16章 SSSSSSSSSSSSSSSS〜えっ親友に彼女をとられただって? そういうときは明るく楽しいファンタジーで元気出して!〜
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第218話 セ・キ・ラ・ラ

「閣下の夢は何ですか?」


 今度はクリボッチ長官が、逆にMCヤマーに訊いた。


「俺か?」


 MCヤマーは、戦艦シロネコヤマトの長官室の窓から、青い空と海の彼方を見つめるような遠い目をして言った。


「戦争が終わって平和な世が来たら、透明人間になって、アイドルグループの楽屋に潜入したい」


「ほう」


 クリボッチ長官の口から、感嘆の声が洩れた。


「それは素晴らしい! 科学の力で、透明人間になれる日が来ますかね?」


「そう願っている」


「どうして閣下は、アイドルグループの楽屋に?」


「女同士なら、平気で隠さずに着替えをすると聞いたことがあるからだ」


 MCヤマーの欲望は、どストレートだ。


「ロマンですね。ちなみに何人ぐらいのグループをお考えですか?」


「4、50人かな?」


「平均年齢は?」


「16、7」


「なるほど」


 クリボッチ長官も、やはり遠い目をした。


「何だか、女の匂いが充満してそうですね。どんな会話をしてるんでしょうか?」


「希望を言えば、赤裸々な会話をしていてほしいな」


「例えば?」


「女同士の悪口とか」


「悪口? それを盗み聞きしたいんですか?」


「可愛い顔して、他のメンバーのエグい悪口を言ってるところを想像すると、胸がドキドキしてくる」


「閣下は本当に、ロマンチストですね」


「いやあ、それほどでも」


 MCヤマーとクリボッチ長官は笑った。


「どうでしょう。どうせなら、楽屋と言わず、風呂場に潜入しては?」


 そそのかすように、クリボッチ長官が言った。


「風呂場? それはいささか、犯罪チックじゃないかな」


「何を恐れてるんです? 閣下はもはや、透明人間なんですよ」


「…………」


「風呂を覗きたくないんですか?」


「…………」


「では、見たいか見たくないかで答えて下さい。アイドルが、赤裸々にガシガシ洗うところを、見たいですか?」


「見たい」


 MCヤマーに、迷いはなかった。


「無防備に、汚いところを懸命にキレイにしようと努力している一部始終を、しっかりとこの目に焼き付けたい」


「いいですね。ロマンがだだ漏れですね」


 クリボッチ長官が、MCヤマーの耳に口を近づけて囁いた。


「……では、トイレは?」


「バカッ!」


 MCヤマーの顔は、一瞬で真っ赤になった。


「アイドルのトイレに潜入? それは変態ではないか!」


 クリボッチ長官は、じっとMCヤマーの目を見た。


「もう一度聞きます。見たいですか、見たくないですか?」


 MCヤマーは顔を伏せた。


「アイドルが、トイレに入るところを、透明人間になって見たいですか?」


「……見たい」


 顔を伏せたまま、MCヤマーは答えた。


「無防備に、ズルっと降ろして、シャーっとかボットンという音をさせて、拭いて流す一連の動作のあいだ、いったいどんな表情を見せてくれるのか? それに興味がないと言ったら、俺は嘘つきの最低の偽善者だ!」


「よくぞ言いました、閣下!」


 クリボッチ長官の声も、MCヤマーにつられて上ずっていた。


「その場合、もし顔と匂いにえげつないギャップがあったとしても、閣下は後悔なさいませんか?」


「何の。俺はロマンチストだが、真実もまた愛する男だ。それが本当にそのアイドルから出た匂いなら、広い心で受け止めることにいささかの躊躇もない」


「素晴らしい! エクセレント!」


 クリボッチ長官は、MCヤマーの手を両手で握った。


「ぜひその夢を持ち続けて下さい。願い続ければ、いつか必ず夢は叶います!」


 MCヤマーの目には、光るものがあった。


「クリボッチよ。お前の夢を、もう一度聞かせてくれるか?」


「はい! いつでも抱ける女友達に、でんぐり返しをさせることです!」


「いい夢だな。ジーンとする」


 MCヤマーは、クリボッチ長官の肩に逞しい手を置いた。


「それは必ず叶う。その日まで生きろよ」


「はい! 閣下の夢も、もう一度お聞かせ下さい!」


「透明人間になって、アイドルの楽屋に潜入する。そしてエグい悪口を言いながら着替えるところを目撃する」


「からの?」


「風呂場にも潜入する。汚い場所をキレイにするところを確認する」


「はたまた?」


「トイレで一部始終を見る。すべてをこの目に焼き付ける」


「見るだけですか?」


「嗅ぐっ!!!!」


 そう絶叫したときには、2人とも号泣していた。


「なんという魂を揺さぶる夢だ! すべての男子が胸に抱きながら、途中で諦めてしまう夢。閣下はそれを、少年のような純粋な心で持ち続けておられる!」


 クリボッチ長官は、天に祈るような仕草をして叫んだ。

 

「閣下の夢も、必ず叶いますよ! それまで絶対に生きて下さい!」


「ああ、約束する。俺は透明人間になるまで決して死なない! ヤマは死にましぇん!! 死なへんで〜!!!」


 気がついたら、僕も泣いていた。


 少年のような心で、夢を持ち続けること。


 それ以上に尊いことを、僕は知りましぇん!!!


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