第215話 食らわせろ!!!
カッコつけマンのマッサーカー最高司令官に恥をかかせてやる!
ということは決まった。
でもどうやって?
具体的なアイデアは出なかった。
そのとき、
「コマニチ! コマニチ!」
宿屋の主人が、ビトー城の殿様のマネをしながら部屋に入ってきた。
「もうわかったからいいよ、モノマネは」
ヘラズグチ中将が、「アンタにゃバカ負けしたよ」という顔をして言った。
「お、みなさん残さずキレイに食べましたね。皿まで舐めちゃったりして。この貧乏人!」
主人がポカリとオークを叩いたが、もはや誰も怒らなかった。きっと宿屋の主人には、ビトーが憑依してしまったのだろう。
「おい、軍団。熱湯風呂を用意してやったぞ。さっさと朝風呂に行きやがれ、このバカヤロウ」
「……軍団って、俺たちのことかな?」
「……じゃない? どうもワシのプレッシャーがキツすぎて、頭がおかしくなったようだ。逆らわないことにしよう」
漫才コンビのヘラシオがヒソヒソしゃべっていると、
「おい、ラッシャー、お前から行け」
シオ中将が尻を蹴飛ばされた。
「うわー、この男凶暴! コンプライアンス的にいいのかね?」
ラッシャーと呼ばれたシオ中将がボヤいた。
と、MCヤマーが突然、
「なあご主人。相談に乗ってくれるか?」
と頭のおかしい主人に持ちかけた。
(いったいMCヤマーはどういうつもりだろう? あんなイカレポンチに相談するなんて……)
僕はハラハラしてしまったが、
「ええ、何だバンナイ。女の相談か? そんなシワくちゃ妖怪みたいな顔してコノヤロー」
主人が食いつきてきた。
「女じゃないんです」
「じゃあ金か? 金ならフルハムミムラから借りな。あいつ最近女房が死んで、ガッポリ保険金が入ったらしいから」
「いえ、金でもないんです。実はある男のことで」
「男? 何だお前も日陰モンか? おやじ、涅槃で待ってるだって。このバカヤロウ」
「いえいえ、そういう意味じゃなく、ある男を懲らしめたいんですが、そのアイデアがなかなか浮かばなくて」
「男を懲らしめるったらアレだろ? 引っ張れ引っ張れシワ伸ばせって。下品だな、どーも」
「キザな野郎をギャフンと言わせるという企画です。そいつ、アイ・シャル・リターンなんてほざいたんですよ」
「企画? 何だドッキリか。最初から言えよ。しかしそいつもアホだな。私は借金を返すであろうなんて、当たり前だ、このバカヤロウ!」
「でしょ? 殿だったら、いいアイデアをお持ちかと思って」
「ドッキリだったらアレがいいよ。人間性ドッキリ。そっちのオネエチャンがさ、気があるような芝居をすんだよ。そんで私の部屋に来てなんて誘ってさ、みんなで部屋を覗くの。そいつがパンツ脱いだら、警察だ、逮捕するってバーンと襖を開けて、『テメー、やろうとしただろ!』って」
「うーん、それはちょっと、実現が難しそうです」
「だったらアレだな。勇気を出して初の告白。『毎朝電車であなたを見て、ずっと好きでした。お願いします、友だちになって下さい』なんて言ってよ。思わず握ろうとした手に、ウンコ渡したりして。『何ですか、コレは。バレンタインチョコですか?』なんて。食ったらペッペッて吐き出して、『何ですかこのチョコ、ウンコ味ですよ!』なんて怒っちゃって。『あれ? どうしてウンコの味を知ってるですか?』って聞いたら真っ赤になって照れたりして。あんたも隅に置けないねーなんて、このバカヤロウ」
「あのー、それもちょっと……」
「だったらもうアレしかないよ。早起きバズーカ。バズーカ砲を持ってさ、寝室にコッソリ潜むの。そんでまだ寝てるときに、『撃てーっ!!!』っていきなりドカーンとやんのよ。そしたらそいつ、戦争で殺られたと思って、いいリアクションすんじゃね?」
「わっ、それいい! いただきます!!」
意外にも宿屋の主人から、グッドアイデアが飛び出した。
「兵が撤退したと見せかけて、安心して司令官室で寝ているところにバズーカ砲。最高じゃん! もしこれが成功したら、マッサーカーのやつ、しょんべん漏らすんじゃね?」
「違いない。陸軍大将の面目は丸潰れ。ワシらの溜飲も下がるというものだ」
ということで、マッサーカーへの一撃は早起きバズーカに決定!!
「ところで実行部隊は誰にする?」
「そりゃあ、こういうゲリラ的な作戦は、冒険者の諸君が慣れてるんじゃない?」
って危険な役は、やっぱり僕らなのね!
「アリスター二等兵、やってくれるか?」
「まあみなさんに頼まれたら、やるしかないですけど、どうやったら安全に司令官室に近づけますかね?」
この問いには、オーガが答えた。
「ワタシの闇属性の技『ブラッケンド』を使えば、黒くなって闇に紛れて接近できるけど」
はい! じゃーそれでやらせてもらいます!!!




