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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第16章 SSSSSSSSSSSSSSSS〜えっ親友に彼女をとられただって? そういうときは明るく楽しいファンタジーで元気出して!〜
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第214話 暗号を解け!!

 その翌朝ーー


 僕らは宿屋で朝食を食べながら、作戦会議をした。


「新しい陸軍大将のオオイソビーチは、ピリピンの戦いが天王山だってぶち上げたみたいだね」


 と僕が言うと、


「あんなやつ、海水浴場で遊ばせときゃ良かったんだ」


 ハムエッグを食う手を止めて、MCヤマーがぼやいた。


「アンパン諸島でやったのと同じように、ピリピンの島々のナン兵たちをガルーダに乗せて、海軍のふねに収容させましょうか?」


 もちろんピリピンでも、ナンを負けさせる基本方針は変わらない。だから僕は無難な作戦を提案したが、


「待ってくれ」


 ヘラズグチ中将が、それに異を唱えた。


「それじゃあ、あまりにも兵たちがかわいそうだ。やつらはただ逃げるために厳しい訓練をしてきたんじゃない。せめて、調子に乗ってるシン軍にガツンと1発食らわせてから、撤退させる訳にはいかんか?」


「ガツンと1発? そんなことしたら、敵にも味方にも死傷者が出ちゃうじゃないか。ダメダメ。ね、陛下?」


「うむ。人命がいちばん大事だ。逃げるは恥だが役には立つよ♡」


 さすが陛下のお言葉。重みがありますっ!


 ところがヘラズグチ中将は、引き下がらなかった。


「いや、戦闘をさせようというのではありません。やつらのプライドをへし折るというか、ギャフンと言わせるようなことを、何かしてやりたいのです」


「ギャフン? 俺は未だかつて、誰かがギャフンと言うのを聞いたことがないぞ」


 ジャックの冷静なツッコミが入る。


「な、ルイベ。聞いたことないだろ?」


「そうね。私がギャーって言って、殿方がフンって言ったことはあるけど」


 朝食の席でそういう話題はやめて下さい!!


「まあ、ヘラズグチ閣下の気持ちはわかるけど、戦闘しないでどうやって敵のプライドをへし折るの?」


「例えば、あのマッサーカー将軍がいるだろ? 超カッコつけマンの」


「何でも、ピリピン奪還に燃えてるらしいですね」


「あいつにどうしても恥をかかせてやりたい。でないと気が済まん!」


 するとシオ中将も頷いた。


「あの野郎、緒戦の我がナン軍の快進撃に恐れをなして、ピリピンから尻尾を巻いて逃げ出したくせに、超カッコつけてやがんのよ」


「どうカッコつけたの?」


 とオーガが訊いた。


「アイ・シャル・リターン。そう言ったらしいぜ」


 しばらく沈黙になった。


「……それ、どういう意味?」


 オークの質問に、シオ中将は首を捻った。


「実は俺もよくわからん。でも何となく、カッコつけてる感じがしない?」


 するとMCヤマーが、


「何だみんな、アイ・シャル・リターンも訳せないのか? むちゃくちゃ初歩だぞ」


「教えて下さい!」


 僕らはMCヤマーの解説を待った。


「エヘン。まずアイ。これは、私という意味だ」


 なるほどと、グリアム王が感心した。


「次にシャル。これは未来のことを表わす。つまりアイ・シャルで、『私は◯◯するであろう』となる」


「さすが海軍大将ね♡」


 ルイベがMCヤマーをうっとりとした目で見つめた。


「最後はリターン。これが少々難しい。テニスでいうと、リターンはボールを返すことだが、マッサーカーがそういう意味で『私はリターンするであろう』と言ったとは思えない。いったいマッサーカーが何をリターンするつもりだったか、予想できる者はいるか?」


 みんな揃って、首を振った。


 MCヤマーは、コホンと咳払いした。


「えー、このように、何をリターンするかはっきりしない場合、往々にして、金のことを言ってると考えて間違いない。あえて濁して表現しているのだな。私は返すであろう、ということは、取りも直さず、『私は借金を返すであろう』と言ってる訳だ」


「スゲエ! あんな暗号みたいな言葉を、鮮やかに解いちまった!」


 ジャックが拍手をし、僕らもみな賞賛を惜しまなかった。


「完璧な解答を、ありがとうございます。しかし閣下、マッサーカーってのは、ダサい野郎ですね。戦場から逃げるときに、『私は借金を返すだろう』なんて威張ったって、全然カッコ良くないのに」


「うむ。私も『ダサッ!』と思った。ナン人は、わざわざそんなことを言わなくたって、金を借りたことはちゃんと憶えている。ところがシン人は、それが国民性というか、そんなことはすぐに忘れてしまうのだ」


「えっ? じゃあ、金を借りたことをキチンと憶えていて、返すだろうと発言するのは、シンの人にとってはカッコいいことなんですか?」


「みたいだな。よくシンの兵士が、『リメンバー・ダイヤモンドハーバー』とデッカい声で言ってるが、その理由がわかるか?」


「いえ。教えて下さい」


「リメンバーは、記憶しろ、思い出せ、と訳すことができる。つまりリメンバー・ダイヤモンドハーバーで、『ナン軍によるダイヤモンド湾の奇襲攻撃を思い出せ』という意味になる。つまり、しょっちゅうそう言ってないと、みんなすぐに忘れてしまうんだ」


「ええー?? あんなにインパクトのあることも忘れちゃうの? シン人ってある意味スゲー!!」


 僕は妙に感心してしまった。


 ひょっとすると、人間はそのくらい忘れっぽいほうが、【幸福】かもしれませんね!


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