第207話 くさい……
憲兵が、仲間を25人引き連れて戻ってきた。
「アリスター。ここは私たちに任せて!」
と言って躍り出たのが、ルイベとオークのコンビだった。
「さあ、見なさい、憲兵隊の男たち!」
ルイベが叫んで、オークの手を握った。
「ぬうっ!?」
憲兵Aの目が光った。
「不純異性交遊! 逮捕だあ!」
「やかましい! ホントは自分も異性交遊したいんだろーが!」
オークはそう吠えると、【臭い屁】をした。
臭い屁。
きみはその恐怖を知っているだろうか?
それを嗅ぐと、脳細胞の一部が死ぬ。
それによって、ものすごくたくさんのステータス異常が引き起こされてしまうのだ!
オークのように、バトルの初っ端から【臭い屁】をするキャラと出会う可能性がある場合は、あらかじめ【鼻栓】などのアイテムを装備しておくのが賢明だろう。
残念ながら、憲兵隊には何の備えもなかった。
憲兵Aは【混乱】し、グルグル回り始めた。
「どうした?」
と訊いた憲兵Bは、【毒】に冒されていたため、ビクンとなって体力ポイントを半分に減らした。
憲兵Cは【小人】化し、軍刀を振り回したが、攻撃力はほぼゼロになった。
「・・・」
憲兵Dは【沈黙】させられ、バカのように押し黙った。
「ケロ?」
憲兵Eは【カエル】化し、誰にも相手にされなかった。
「ブヒイ!」
憲兵Fは【豚】になり、ルイベ女王様にムチでぶたれた。
「暗いよー、暗いよー」
憲兵Gは【暗闇】になり、やっぱりルイベにぶたれた。
「痛え!」
憲兵Hは、【混乱】した憲兵Aにいきなり軍刀で殴られた。
「トオッ!」
憲兵Hはつい【カウンター】を出してしまい、味方チームの憲兵Aにヒップアタックをした。
「やーめーろーよー、なーかーまーだーろー」
憲兵Iは【スロウ】になり、周りをメッチャイライラさせた。
「ZZZ……」
憲兵Jは【睡眠】中。いい夢見ろよ!
「オラァ! アウッ! オラァ! アウッ!」
憲兵Kは【凶暴】化して攻撃してきたが、【毒】にもかかっていたため、アクションのたびにビクンビクンして勝手に体力を減らした。
「ウフフ、面白い。私も攻撃しちゃおうかしら♡」
ルイベが挑発技、【谷間】を出した。
憲兵Lは【石化】していたが、【谷間】の効果で顔を赤くした。
「あらあ。石にも感情はあるのね。どこ見てんのよー!」
憲兵たちは血眼になって、ルイベの【谷間】を取り締まろうとした。
しかし、
「トオッ! トオッ!」
「アウッ!」
「・・・」
「ケロ、ケロ」
「ブヒ、ブヒ」
「ZZZ……」
「やーめーろーよー」
残りの憲兵MからZまでも、みんな【混乱】【毒】【小人】【沈黙】【カエル】【豚】【暗闇】【スロウ】【睡眠】【凶暴】【石化】のどれかになってしまうという、地獄絵図のような状態に陥っていた。
もはや自滅を待つばかり。まーこっちとしちゃ、こんな楽なバトルはないけど。
ところがーー
「もう我慢できん! ガン見してやる!」
なぜか味方のヘラズグチ中将が、ルイベの【谷間】に反応して、【好色】を発動させてしまった。
「このドスケベ! これでも食らえ!」
オークが再び【臭い屁】をした。
それは、ヘラズグチ中将の鼻の穴にスウッと入った。
「オラァ! アウッ! オラァ! アウッ!」
ヘラズグチ中将はグルグル回りながらビクンビクンし、【カエル】になった自分の頭をボカンボカン殴った。
「……何してんの?」
シオ中将がヘラズグチ中将に近づいたとき、【臭い屁】の残り香を嗅いでしまった。
「ブゥー! ブゥー!」
【豚】になったシオ中将は、ルイベ女王にしきりにおしおきをねだった(シオはヤベーやつだから)。
「オーク、あの2人のステータス異常を解除できるか?」
とオークに訊くと、
「どうかなあ? もともとあいつらは異常だからな」
と言いながらも、2人の鼻の穴に口をつけて、【臭い屁】を吸い取ってやった。
ヘラシオは元に戻った。といっても、ドスケベは治りませんけどね!
さて、予想どおり、憲兵隊は全滅した。
しかし、死んではいない。攻撃不能になっただけだ。
「オイコラ! もうこれからは、むやみに威張らないな!」
憲兵を真似して怒鳴ってやると、地面に倒れた憲兵A〜Zが弱々しく頷いた。
オークが【臭い屁】を吸い取って、ステータス異常を直してやった。
憲兵隊はすごすごと退散した。
やったぜ! 超キモティーーー!!!!




