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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第15章 SSSSSSSSSSSSSSS〜勇者アリスターは見えている。見えているったら見えている。えーえーそーそーホントに見えているってば!〜
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第203話 徹底討論5 褒めれば未来が変わる!

「座布団ゼロ枚落語家さんを褒めるのが難しければ、その前に肩慣らしとして、しゃべくり7人の例の人を褒めて下さい」


「あー、はいはい。あの、1人だけ実力の落ちるやつね」


「言葉に気をつけて! それは閣下の感想で、事実じゃないですよ!」


「てことは、みんな面白いと思ってんの? んな訳ないっしょ」


「面白くなかったら、テレビになんて出てません。しかもM-1チャンピオンですよ」


「まーね。漫才は良かったよ。でもフリートークが」


「どうして悪いことばっかり言うんです? 何か彼に恨みでもあるんですか?」


「別にないけど、テレビ観て面白くなかったら、あいつ面白くねーなーって言いたいじゃん」


「その考え方を改めて下さい。面白くないはずがないんです。ファンだってたくさんいるんですよ。人のマイナス面じゃなくて、プラス面を見ていきましょうよ。そしたら世の中のほとんどが、【眼福】になりますよ」


「あいつの貧相な顔も眼福に? ないない」


「いや、なかなか面白い顔してますよ。よーく思い出して下さい」


「あんな実力不足な顔、憶えてないよ」


「ほら、結構ほうれい線が深くて、やけに歯が目立つ感じで、額もまあまあ広くて」


「無理。憶える気がないし」


「ちょっと! 閣下は顔も憶えてないのに、彼が面白いかどうかどうしてわかるんですか?」


「だって、しゃべってることが面白くないもん。何て言うか、気の利いたことを言うイメージがない」


「イメージ? じゃあ彼のしゃべりが面白いか面白くないか、きちんと分析したことはないんですね?」


「いちいち分析する人いる?」


「間とか表情をよく見て下さい。実に味があります」


「味か。古典芸能みたいだな」


「あっ、今いいこと言いましたね! さあ、それで褒めて下さい!」


「どういうこと? さっぱりわからんけど」


「しゃべくり7人の彼、どう思いますか?」


「全然面白くない」


「違います。さっき褒めたでしょう? さあ」


「さあって……えっとじゃあ、彼がフリートークをすると、古典芸能みたいな味があります」


「つまり?」


「つまり……他のメンバーにはない、微妙な空気が味わえます」


「もうひと声」


「えーと、えーと、正直言って、彼の発言を、他のメンバーの面白トーク以上に、待ち望んでいる自分がいます」


「やった! できた!!」


 僕は気がついたら、ヘラズグチ中将を抱き締めていた。


「やればできるじゃないですか! 最高の褒め言葉でしたよ!」


 ヘラズグチ中将は頭を掻いた。


「ワシも自分で驚いている。どうやらワシ、あの7人で、彼がいちばん気になってしまっているようだ」


「それはもう立派なファンですよ。それを認めて、これからは素直に褒めていきましょ」


「うむ。古典芸能と思えば、確かに悪くない」


「さあ、ではいよいよ真打ちの登場です。座布団ゼロ枚落語家さんを褒めて!」


「…………」


「どうしました? 彼にもあるでしょ、味」


「いや。ないな」


「またまた。彼の大喜利回答を、ホントはいちばん楽しみにしてたんじゃない?」


「なぜ彼がレギュラーなのか、疑問しかなかった」


「いけませんね閣下。彼がどれほど努力していたか、わかりませんでしたか?」


「頑張りゃいいんだったら、学芸会の小学生だって頑張ってる」


「ほーら。ちゃんと褒めるところがあったじゃないですか」


「は? 頑張ったのを褒めるの?」


「いけませんか?」


「だってプロなのに……実力を褒めるべきでしょ?」


「それがこの世を息苦しくしてるんです。実力しか、評価の尺度はないんですか?」


「それが競争社会ってモンじゃないの?」


「勝った者しか褒めないんなら、金メダル以下は価値がないですか? 2位じゃダメなんですか?」


「事業仕分けチックに圧かけてくるなー。2位ならもちろん褒めるけど、フツー100位以下のザコは褒めないでしょ?」


「ものすごく頑張ってても?」


「だったらなおさら、才能ないから辞めたほうがいいと言うよ」


「勝者しか評価できないとは、実に寂しいですね。閣下のその姿勢こそ、面白くないですよ」


「どういう意味?」


「負けても頑張る人間の姿ほど、励まされるものはないんです。そういうものが見えない人は、とても損をしてると思いますよ」


「そうかな? でもワシは、基本強いやつが好きだし」


「じゃあ戦争に負けたニッポンは、弱いから興味ないですか? 面白くないですか?」


「コラ! 落語家と一緒にするな!」


「キモティくない閣下は、もう男を辞めろと言われたらどうです?」


「わかった、わかった! もうやめてくれ! あいつの頑張りを褒めりゃいいんだな?」


「お願いします!」


「えー、あの方を観ていると、とても励まされます」


「どんなふうに?」


「1回キモティくないって言われたくらいで、萎えてる場合じゃないなって。毎回毎回視聴者に座布団ゼロ枚にされても、頑張ってるんだから」


「そうそう。さらに?」


「さらに……えーと、負けるとわかっている戦場に出て行くなんて、ホント、彼こそ軍人の鑑です」


「やった! できました!!」


 僕は再びヘラズグチ中将を抱き締めた。


「そうなんです。見方を変えれば、他の大喜利メンバーの誰よりも、彼の姿は励みになるんです。どうかこれからも、彼のように頑張っている人を叩くのではなく、温かく応援してあげて下さい。そのほうが、絶対に【幸福】です」


「そうだな。彼をニッポン兵に喩えたら、最新兵器に向かって、軍刀で突撃する姿とダブって見えてきた。彼をあざ笑うことは、ひょっとすると、そうやって玉砕した兵士をバカにするのと同じことかもしれない」


「まったくそのとおりです。戦場に立ったことのない人に、兵士を笑う資格はありません。大喜利も同じなんですよ」


「アリスター二等兵。ワシはわかった。これからは心を入れ替える。座布団ゼロ枚の彼を、応援することにしたよ!」


「閣下!」


 僕の胸は熱くなった。


 あれほど頑固だった中将が、意見を変えてくれた。


 ほんの小さな1歩だけど、未来が変わる気がした。


 よーし、やるぞ。


 僕もヘラズグチ中将と一緒に、あの落語家さんを応援します!!!!


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