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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第15章 SSSSSSSSSSSSSSS〜勇者アリスターは見えている。見えているったら見えている。えーえーそーそーホントに見えているってば!〜
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第200話 徹底討論2 人を傷つけるということ

 ヘラズグチ中将は、


「自由な感想を言える世の中であるべきである」


 と主張する。


 それに対して僕は、


「それが人を傷つける可能性があるなら、わざわざ言う必要はない」


 と考える。


 どちらが正しいのか? あるいは、どちらの考え方がこの世界を【幸福】に近づけるか?


 僕も、言論封殺はあってはならないと考える。しかし自由な感想を制限なく認めていると、


「あの小説は面白くない」


「あのテレビは面白くない」


「あの芸人は面白くない」


 というネット上の発言に、人がワイワイ集まってきて、


「あの小説は買わないことにしましょう!」


「あのテレビはマジ終わってほしい」


「あの芸人は何で消えないの?」


 という、あまり生産的でも豊かでもない空間が形成されることになる。


 さらにそれがエスカレートすると、特定の個人をとことん追い詰めるほど、誹謗中傷が膨れあがったりする。


 それは確実に人を傷つける。


 場合によっては、自殺者も出るのだ。


 だから、「正直な感想を言っただけ」とか、「事実を指摘しただけ」とかの、軽い気持ちで発した言葉でも、言われた当人にとっては深刻な問題になることがある。僕たちは、それを肝に銘じなければいけないのではないだろうか?


「閣下」


「何だ?」


「僕は以前、閣下が指揮したインターポール作戦を、無謀と言いました。それは正直な感想であり、また事実であると感じたからでもありますが、そう言われて閣下は傷つきましたか?」


「別に傷つきはせん。歳下のシロウトに言われて、ムッとはしたがな」


「では、無能、変態、鬼畜、ゲス野郎についてはどうですか?」


「勝手に言ってろって感じだ。こっちは命懸けで戦ってるから、悪口なんて気にしてる余裕はない」


「そうですか。閣下は鋼のメンタルなんですね」


「そんなことはない。ワシだって傷つくことはある」


「例えば?」


「ゲイシャガールズに、キモティくないって言われたときだ」


「なるほど。でもゲイシャガールズにとっては、それは正直な感想であり、事実でもあった訳ですよね?」


「だけど、一生懸命頑張ったのに、キモティくないなんて言われたら、さすがのワシでも傷つく」


「正直な感想であっても、この場合は言うべきではなかったと?」


「まあ、もっとオブラートに包んでくれても良かった」


「閣下の頑張りはもう一歩であるとか、気持ちいいとまでは言えないとか、そんなふうにですか?」


「うーん。それも何だか、傷つく気がするな」


「オブラートに包んでも、傷つくものは傷つくと?」


「……そうだな」


「キモティくないと言われて、閣下は『よし、もっと頑張ろう!』と思いましたか?」


「いや」


「ではどう思いました?」


「やや自信が揺らいだというか、もっと言うと、己の価値を見失いそうになった」


「それは大問題ですね」


「男にとってはな」


「女性にはもっと、優しい言葉をかけてもらいたいですよね?」


「それはそうだ。女の言葉一つで、男は勇気百倍にもなるし、自信喪失することもある」


「閣下、結論が出ましたね」


「何の結論だ?」


「自由な感想を言える世の中がいいか、それとも言葉には気をつけるほうがいいかの結論です」


「いや、それとこれとはーー」


「違いますか? でも閣下が正直な感想を言われて傷ついたのは事実ですよね? そうすると、あなたが『クソつまらない』と言うことで、その芸人も傷つく結果になるとは思いませんか?」


「ワシはそいつに、直接言った訳じゃない」


「いや、それが問題なんです。ネットに書き込む人も、本人に直接言ったという自覚はないでしょう。だけど、その書き込みがほかの書き込みを誘発したら、嫌でも本人の目にとまることになりますよ」


「ワシがゲイシャガールズにしたのは、芸人のネタとは違う。そもそも仕事じゃないし」


「同じですよ。閣下が女性に優しくしてもらいたいと思う気持ちと、芸人さんが温かい目で見てもらいたいと思う気持ちは」


「しかしーー」


「いいですか。こう想像してみて下さい。閣下はキモティくなかったと、ゲイシャガールズがネットに書き込んだとします。するとそれに関係ない誰かが、『それはお気の毒に』と書き込み、また誰かが『下手クソ男サイテー』、『マジどんだけ下手なん?』、『下手っぴ将軍』ーー」


「やめろっ!!」


「ね? 残念ながら、これが今の地球なんですよ。いつも誰かが誰かをけなしている。しかも執拗かつ大量に。ターゲットにされた人にとっては、まるで戦争です。もし自由な発言に制限をかけなかったら、この戦争はいつまでも続きます。僕たちは、これを終わりにしないといけません」


「終わりにするとは?」


「悪口を言うこと、人格を否定すること、ぶっ叩くこと」


「では教えてくれ。面白くないものを面白くないと言うのは、その中のどれに当たるのだ?」


「全部ですよ。閣下が一生懸命果たしたことを、キモティくないの一言で切り捨てたのと一緒です。芸人も小説家も、命を懸けて全力でやってるんです。それを根拠も示さず『クソつまらん』、『面白くないですね』などと評論家気取りでぶった斬ることを、みんなでいっせいにやめるべきなんです。閣下だって、優しく『また次頑張ってね♡』と言われたほうが百万倍いいでしょう?」


 ヘラズグチ中将は黙っていた。


 その顔は、まだ納得していない。


 そして、


「やはり同意できない。ワシは反論する」


 ああ……


 早くグレートトージョーに会わないといけないのに、なかなか徹底討論が終わらないよー!!!!


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