第175話 OH! ボンバーベッド!!
ということで。
「ヤマ長官、変装お願いしますっ!!」
ヤマ長官が着ていたのは、海軍の上下とも真っ白な制服だったので、バリバリ目立った。
そこでオークが泥をぶつけ、真っ茶っ茶にした。
「ヤマ長官いいですねー。ちょうどどろんこクイズで、不正解に飛び込んだ解答者みたいになりましたよ」
「……こんなんでいいの?」
「髪型も変えましょう」
とジャックが言い、火属性の初級技【ファイヤ】で、髪の毛をチリチリにした。
「OH! ボンバーヘッド!」
「ヤマニキ、イケてる! アフロもサイコー!」
ヤマ長官のイメチェンは、陸軍のナン兵たちにも大好評だぜ!!!
ボンバベッド、チャチャチャ、ボンバベッド、チャチャチャ、ボンバベッド、チャチャチャ、ボンバベッド、チャチャチャ……
ヤマ長官は最初のうち、とまどった様子をしていた。
が、キューティーペアのルイベが近づいて、ランバダみたいなダンスを始めると、突然スイッチが入った。
「イエー! ニューヤマ、参上ー!!」
するとオーディエンス(約1万人のナン兵と僕たち)も、イエー、ニューヤマ、ニューカマー、と返した。
「イエー、今来た、ハマー!!」
ヤマ長官はノリノリで、黒人のラッパーみたいに踊りだした。
「オ、オウ、オウ、オウ、オオ、オウ、ヤマタイム!」
ヤマ長官がガニ股でカニ歩きするようなダンスをすると、ルイベも汗だくになって、すっげえ激しく腰を振って踊った。
「イエー、聴け、オーディエンス、俺の言の葉、マジで魂震える格言」
ナン兵の中には興奮して、ヘッドスピンを始める輩もいた。
「俺ら仕方なく始めた戦争、よその侵略国家の暴走、おかげで世界中が迷走、皇軍だけが勇壮、イエー」
イエー!!!!
「俺おなじみ海軍大将、緒戦はモチロン大勝、しかし反撃のカウンターの代償、迫りくる敵ヤバいぜチクショー」
チックショー!!!!
「すると陛下のありがたい託宣、負けるが勝ちの作戦、何より国民の命が優先、余は処刑オッケーと率先、ダー(号泣)」
ダー!!!!(号泣)
「ところが陸軍勇敢、わざと負けろと言ったらカンカン、しかし勝ち目はないぜ危機感、下手すりゃ国土はスッカラカンのカン」
ウェーン!!!!(悲涙)
「だからヤマはやったぜ変装、ボンバーベッドで疾走、昨日までの俺は葬送、死んだことにしてこの世から脱走、意味わかっかー!?」
わかんなーい!!!!(馬鹿)
「ヤマが死んだら士気は降下、軍も国民も願い出すぜ講和、したら戦死は減って幸福、これぞ陛下の作戦の効果、イエー、イエー、イエー!!」
イエーイ、イエーイ、イエーイ!!!!
オーディエンスの興奮は最高潮になった!!!
ルイベと密着して踊り狂う海軍大将!!!
そこへガマグチ少将も飛び入り参戦!!!
「イエー、MCヤマー、サイコー! 俺たちゃ陛下の作戦を支持するぜ! みんな、いいなー!!」
オーッと、地響きのような歓声!!!
僕はその光景に、不覚にも涙が出た。
あんなにゴリゴリの強硬派だったガマグチ少将でさえ、犠牲を少なくするために、あえて敗戦するという選択を支持してくれた……
奇跡が起きた。
それもこれも、髪がチリチリになったとたんに、ラッパーにキャラ変してくれたヤマ長官のおかげだ。
僕はまばゆい光を見るように、ヤマ長官の勇姿を見つめた。
「オッケー、キューティールイベ、カマーン!!」
MCヤマーがボンバーベッドをグルングルン回すと、ルイベは甲高い声で嬌声をあげ、速すぎて見えないほど腰を前後に振りまくった。




