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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第13章 SSSSSSSSSSSSS〜異世界恋愛したい!異世界恋愛したい!異世界恋愛したい!だって戦記は柄じゃないからね〜
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第168話 へ、へ、へ、へ、へ、へ、へ、へ、へ……

「私には、ガマグチ隊長の言うこともわかる」


 と、軍事マニアのセイラが言った。


「国を植民地にしたくない、と思うのは、決して間違ってはいないから」


 しかし僕は譲らなかった。


「どんな理由があるにせよ、僕は戦争には反対だ。戦って殺したり殺されたりするくらいなら、無抵抗のまま奴隷になったほうがいい。ましてや玉砕して皇軍の精神を世界中に知らしめるだなんて……ナンは人命軽視の後進国だと思われるだけだよ」


「そうね。玉砕はいただけないわ。兵に自殺を強要するってことだもの」


 セイラはそう言うと、声をひそめて、


「ちょっといい? 2人だけで話したいの」


 手招きしたので、僕はセイラのあとから塹壕を出た。


「話って何? ジャングルで告白?」


「マジメに聞いて。彼らに戦いをやめさせる、いいアイデアが浮かんだの」


「マジで? めっちゃムズそうだけど」


「私、グリアム王に【変容】する。それで撤退しろと命令するの」


「おお!!」


 素晴らしいアイデアに、僕は興奮した。


「そりゃあいい! 成功間違いなしだ!」


「でしょ? まあ、補給船も渡れなくなった激戦地に、王が来るなんて本当は絶対にあり得ないんだけど」


「でもセイラの完璧な【変容】を見たら騙されるさ。なんてったって王の命令は絶対だからな。何か変だと思っても逆らえないさ」


 早速セイラに【変容】してもらった。うん。どこからどう見ても、本物のグリアム王だ!


「ところで王様って、兵隊にはどんな口の利き方をするんだろう? 私、その知識はないんだ」


「王城では、割とフランクに衛兵としゃべってたよ。ほら、グリアム王って、アホで有名じゃん。だから、キチンとした話し方でなくても大丈夫じゃない?」


 とにかくヴィジュアルは完璧だから心配するなと励まして、僕は塹壕に戻った。


「えー、みなさん。突然ではありますが、陛下が前線を激励しにまいりました」


 そう言ってグリアム王を塹壕に呼び入れると、ナン軍の陣地は水を打ったように静まり返った。


 ガマグチ少将の口がパーカーンして、顎が外れた。


 すると隊員たちもそれに倣い、パッカーンした。


 ジャック、ルイベ、オーガ、オークはニヤリとした。セイラの【変容】に気づいたのだ。


「へ、へ、へ、へ、へ、へ、へ、へ、へ……」


 ガマグチ少将が陛下と言おうとしたが、顎が外れているので、クルクルパーが薄笑いしてるみたいになった。


「キモいぞ!」


 とオークが顎をブン殴ったら、カチッと元にハマった。


「陛下!!!」


 一声吠えると、ガマグチ少将はダーッと号泣した。


「我々ごときのために、敵の弾幕に御身をさらして前線を見舞われるとは……かたじけなさすぎて生きていられません。切腹つかまつります!」


 いきなり軍刀を抜いてズバッと腹を斬った。


 それを見て、隊員たちもズバズバ腹を斬った。


「まったくもー」


 すぐに死にたがるのは、ナン兵の悪い癖です!!


 ゾンビ化した兵士たちは、復活すると、ちょっと恥ずかしそうに照れ笑いをした。


「すみません。我々はダレノガレノの地で鬼になりまして、敵と刺し違えるまでは死なないと誓ったので、なんだか死ななくなりました」


「ごまかさんでもよい。知っておるぞ。そこの冒険者に、【ゾンビーズ】をかけてもらったのだろ?」


 とグリアム王が言ったとたん、その頭に爆弾が落ちた。


「陛下ーー!!!!」


 兵士たちは爆弾に手足を吹き飛ばされながら、肉片になったグリアム王に向かって叫んだ。


「大丈夫だ。余もゾンビにしてもらったから」


 復活した自分の身体をジロジロ見ながら、グリアム王が言った。何十人もいっぺんに死んだので、きっと他人の身体が混じってそうな気がしたのだろう。


「塹壕内まで爆弾が落ちてくるとは、いよいよこの地はダメだ。諦めて撤退せよ」


 グリアム王がキッパリと言った。


 その顔を、まじまじと見つめるガマグチ少将。


 やがて、


「……我々の命を心配して下さり、これほど嬉しいお言葉はございません。しかしご安心下さい。ゾンビとなった我々はもはや死にません。必ずやこの地を奪取いたしますので、どうか大御心おおみこころを悩まされませんように」


「いやいや」


 とグリアム王は、イラっとした感じで言った。


「死ななくても、勝つのはもう無理だと言ってるんだ。あ、わかった。撤退が嫌なんだな。だったら転進ならどうだ? もっと大事な目的地に進んでもらう。そう言い換えたら、敗北とはニュアンスが違うでしょ?」


 僕はヒヤッとした。


 最後の口調が、モロにセイラだったからだ。


(まさかバレやしないだろうな……)


 果たしてガマグチ少将の目が、キラッと光った。


「陛下」


 明らかに疑惑を抱いた顔つきで、ガマグチ少将は言った。


「どうして今日に限って、そのようにマジメなことをおっしゃられるのでしょう? 我々の誰よりもアホであらせられる陛下にしては、チョイ珍しくな〜い?」


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