第161話 いざ、ホラー島へ!!
「ヨッシャー! ミラ艦隊に勝ったあああ!!」
歴史的大勝利である。
かつて海戦で、1発も弾を撃たずに敵を退散させた例があったろうか? いやないっ(キリリッ)!!!
僕のドヤ顔、今回ばかりは許してね♡
「アリスター、やったね!」
キューティーペアのセイラとルイベが、両側から抱きついてきた。
鼻血出ました!!!
「さあ、ヤマ長官。ミラの戦闘機は逃げていきました。どうぞ、ミットモネー諸島を奪っちゃって下さい!」
「うむ。ゾンビ艦隊、全速前進!!」
「ヨーソロー!!!」
長官も乗組員たちもノリノリだ!!
「どうやら僕たちの役目は終わった。死なない艦隊と死なない乗組員たちにあとは任そう。ところでヤマ長官、ナン軍が苦戦している方面はないですか?」
「そうだな。ダレノガレノ島の戦いがヤバい」
ダレノガレノ島!!
名前からして、むちゃくちゃヤバそうな島である。
「どんなふうにヤバいんです?」
「これは陸軍の完全な失敗だ。シン軍の数と本気度を完全に読み違えている。俺は戦前から、ずっとシンは舐めたらアカンと言い続けてきたのに!!」
そーか、陸軍は舐めたのか。ダレノガレノの戦いを……
「陸軍は、シンとミラとの連携を分断するために、トラウデン海のダレノガレノ島に飛行場を建設することを主張した。航空部隊を進出させて、トラウデン海域の制空権を拡張するのだと言ってな」
セイラはふむふみと頷いている。さすが軍事マニアの美少女です!
「あんなチンケな島なんか楽勝だと、陸軍は決めてかかっていた。しかし上陸して飛行場建設にかかったとたん、シン軍の爆撃が始まった。ナンの作戦はすっかり見破られていたのだ!!」
ヤマ長官は怒りのあまり、司令室の方位盤をドンと叩いた。
するとズルっと腕がとれた。ゾンビだからねー。
「おっと、イケね。お見苦しいスプラッタを見せてしまって。しばらくお待ち下さい」
ヤマ長官は、腐った匂いのする腕をくっつけて元通りにすると、
「よし、ついた。お待たせいたしました。お待たせしすぎたかもしれません」
何だよそのギャグ! やりすぎだよ!!
「監督! じゃなかった、長官! 唐突なキャラ変はやめて下さい!!」
「反省してます。反省しすぎたかもしれません」
これはもう無視ね!
ダレノガレノ島の戦い。
これを聞いて、僕はすぐに思い出したことがある。
地球における、ガダルカナル島の戦いだ。
もちろん、お笑い芸人とはいっさい関係ないし、ファッションモデル同士の戦いでもない。
太平洋戦争で、もっとも悲惨な戦場の1つとなった島だ。
何が悲惨か?
ニッポン軍がボロボロにやられた、ということもあるが、餓死者の数がすごかったのである。
一説によれば、戦闘で死んだニッポン兵の数が5千人なのに対し、餓死者は1万5千人だったという。
まあ僕も、フツーの陰キャの高校生だったから、昔の戦争の詳しいことはわからない。餓死者とされている人のうち、マラリヤなんかの風土病で死んだ人もいただろうし、怪我が原因で死んだ人もいただろうから、正確な数は不明だ。
しかし、相当な数の餓死者がいたことは確かで、それを考えると、恐ろしいことが想像されるのである。
いいですか。
食糧がないところに、兵隊がたくさんいるんですよ?
想像して下さい。
怪我をして戦力にならない兵隊は、どんな立場になりますか?
「ほら、食わないと元気にならんぞ。食え」
と、食事を与えてもらえると思いますか? そんなはずないですよね。
「役立たずのお前が食うと、元気な我々がその分飢える。そうすると戦いに負けてしまう」
というプレッシャーはありそうですよね。これはホラーです。
きっと傷病兵は、自ら死ぬか、自殺を促されたでしょう。
さらにさらに。
今にも飢え死にしそうなときに、自殺した人の死体を発見したらどうですか?
肉……
怖いでしょ?
こんな悲惨なことはないです。
ガダルカナル島は、餓島とも言われたそうですけど、人を生きながら鬼にした地獄の戦場ですよ。
こういう話を聞くと、ニッポン人として、悲しくて悲しくて仕方がありません。
え? お前は何で、ガダルカナル島の戦いをそんなによく知ってるのかって?
それはまあ、太平洋戦争を題材にしたゲームでさんざん遊んで……って、僕は戦争を遊びと思ってた訳じゃないですからね!
戦争なんか、大・大・大・大・大嫌いだっ!!!
「ヤマ長官。僕は行きます。ダレノガレノ島へ」
「大丈夫か? シン軍の空爆は激しいらしいぞ。そのせいで、食糧を運ぶ船が途中でやられて、上陸した兵が飢えてるようだが……」
「それなら今すぐ行かないと! さあ、みんな。ナンの兵隊たちを地獄の島から救いに行くぞ!!」
僕らは空母の乗組員に別れを告げると、召喚獣ガルーダの背中に乗って、一路ダレノガレノ島に向かった。




