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辺境の地に追放された元隠キャ〜ハズレスキル【眼福】で覚醒したら精霊にも吸血鬼にも魔王にも狙われたけど美少女戦士たちとSSSSSSSSランクの幸福を極めました!!!!〜  作者: 夢間欧
第11章 SSSSSSSSSSS〜もしアホが「あの戦争」に介入したらって歴史イフが始まっちゃったんですけど自信なさすぎて怖いよ〜
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第139話 宿屋のゴースト

「お前にはアホ負けしたよ」


 とジャックが肩をすくめると、意外なことに、みんな明るい笑顔を見せた。


「アリスターの言うとおり。私たちだけ辺境の地に逃げたって、誰も助けられない。そんな行動をとったら、何のために冒険者になったかわからないわ」


 セイラもそう言って、僕の手を優しく握ってくれた。


「私たちはずっと一緒。そしてリーダーはあなたよ」


 正直、うるっときちまった。


「良かった。我が国にとどまってくれるのだね?」


 グリアム王も嬉しそうに微笑んだ。まあハッキリ言って、メチャクチャ荷は重かったけど。


 僕たちはとりあえず王城を出た。報奨金が手に入ったから、一刻も早く宿屋に修理代を払いに行きたかったのだ。


 宿屋に着いてみると、


「おや、新しい看板がある」


 そこに書いてあったのは、こんな文章だった。


《吸血鬼and人狼の極悪ツートップを葬り去ったアリスター様御一行の常宿!!!》


「うわー、やることが早いなー。って言うか、一泊しただけで常宿はエグいわ」


「あっ、アリスター様!!」


 宿屋の主人が目ざとく僕を見つけて、玄関から走り出てきた。


「ささ、お入り下さい。いつぞやは殺すぞなんて言って大変失礼致しました」


「それはいいけど、この看板はちょっと」


「表現が弱いですか?」


「いやいや。事実と違うからさ。人狼は極悪じゃなくてすごくいいところがあったし、僕らが倒した訳じゃなくって、逆に僕らを守って死んだようなものだから」


「ではそこは変えましょう。あとはいいですね?」


「常宿もどうかな。モロ嘘だし」


「いやー常宿にして下さいよ。修理代は要りませんから、ね?」


「それはちゃんと払うよ。金ならある」


 ポンと札を渡すと、主人が目を丸くした。


「こんなに? この宿屋ごと買えますよ。やめて下さい、水臭い」


「いいんだよ、とっといてくれ」


 一度は言ってみたかったセリフだから、超気持ち良かった。


「あ、今気持ちいい顔しましたね? あっしは、人が気持ちいい顔をするのを見るのが好きなんですよ」


「さすが客商売だな」


「もっと見せてくれます?」


「こうか?」


「あーいいですねー。目は半目がいいかな」


「こう?」


「そうそう! 白目がサイコー! あとは鼻の穴を膨らませて」


「こう?」


「もう少し、おっぴろげる感じで」


「こう?」


「そうそうそう! 決まったーっ!!」


「アリスターやめて! 死ぬほど恥ずかしいからっ!!」


 気持ちがいい顔をしたままの僕を、セイラが宿屋に引っ張り込んだ。


「ワーイ! 枕投げだー!!」


 僕はオークの顔面に枕を叩きつけた。どうもオークの顔は、枕を叩きつけたくなるようにできている。


「スピニングピロー!!」


「いていていていていていていていていて!!!!」


 目にも止まらぬ速さで枕が連打された。オークの枕投げの実力は、ひょっとして世界一かもしれない。


 するとまたルイベとオークがプロレスごっこを始めて、ボディスラムで床を陥没させ、ラリアットで柱を叩き折った。


「もうそのくらいにしておきなさい。他のお客様に迷惑よ」


 オーガがジャックの耳掃除をしながら言ったとき、


「あ、アリスター様。戻っていらしたんですね」


 破れた壁から、タカシがニュッと顔を覗かせた。


「おおタカシ。まだここにいたんだ。こないだサキュバスと寝たのに、魂をとられなかったんだね?」


「ありがとう心配してくれて。何ともなかったよ。それよりゴメンよ、この前は殺すぞなんて言って」


「いいってことよ。しかし何だか、話し方がタカシらしくないな」


「それはきみが、吸血鬼退治のヒーローだと知ったからだよ。我が国に来てくれて実に光栄だ」


「最初に会ってそう自己紹介したときは、吸血鬼なんて魔王と比べて大したことないって言ったぜ」


「面目ない。あのときは完全にホラだと思って、こいつヤバッて白い目で見てたから」


「本当だとわかって、態度を変えたんだね。まあそれはそれで、正直でいいよ」


 僕がそう言うと、タカシは照れたように頭を掻いた。


「それに国王に呼ばれて、相談役にもなったんだってね。どう、やっぱり戦争は起こるかな?」


「うーん、どうも魔王の影響力が強くて、戦争は避けられない情勢だね。タカシは怖いか?」


「怖い……そうだなあ、僕って、死ぬのは怖くないんだよね」


「へえー、珍しい。度胸が据わってるんだな」


「そんなんじゃないけど」


 タカシは消え入りそうな声でポツリと、


「強いて言えば、みんなに忘れ去られるのが怖いかな」


「何だか文学的だな。タカシって、文系?」


「うん。小説は好きだよ」


「どんなの?」


「ホラーとか」


 僕はふと、黙り込んだ。


「そう言えば、ちょっと不思議だな」


「何が?」


「さっきタカシ、僕が王の相談役になったって言ったろ? でもそれが決まったのはここに来る直前で、誰にもまだ言ってないんだよ。どうしてそれを知った?」


「ああ、それ」


 タカシがしゃべると、破れた壁から冷たい風が吹き込んだ。


「今俺は、どこにでも行けるからね。こんなふうにスーッと」


 タカシは色が薄くなって、空中に消えた。


 セイラが悲鳴をあげた。


(やっぱりタカシのやつ、サキュバスに命をとられたんだ!!)


 僕は寒気に震えながら、みんなを連れて幽霊宿屋を飛び出しましたよー!!!!


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