第136話 冒険者の性(セイじゃなくてサガと読んで)!!!!
宿屋で僕はセイラと寝た。
ちょっと! ちょっと! ちょっと!
変な想像してません??
言っても僕ら、17歳と15歳ですからね。一線は超えてませんよ!!!
熊に【変容】してもらって、それに抱かれて寝ただけです。スヤスヤとね。
何もしないで、ただお互いの体温を感じるってのがいーんですわ。わかるかな〜♡
そんでもって、ジャックはオーガと、ルイベはオークと寝た。
え? 彼らは何かしただろうって?
してません! だって、みんな同じ部屋で寝たんですから!!
まあね、たまにチュッ!て音くらいは聴こえましたよ。誰が誰のどこにチューしたのかは知りませんけどー。
さて。
次の日もその次の日も、僕らは街で遊んだ。
問題:そしたらどうなったでしょうか?
正解:飽きた!!
そーなんです。遊ぶのは愉しいけど、何だか退屈しちゃいました。
だって、僕たち冒険者だから!!!
どーしてもスリルを求めますよ。やっぱり。
「そろそろ僕、〈イーゾ〉に行こうと思うんだけど」
「イーゾ? ああ。アリスターが追放された辺境の地のことか」
最初ジャックは乗り気じゃなかった。だけど妻のオーガが、
「面白そうね。グリアム王が、独立国家にしてもいいって言ったでしょ? ということは、好きなふうに国づくりしていいのよね?」
と言ったので、ムードが変わった。
「てことは、アリスターが王様で、私が王女様? へー、私クイーンかあ」
セイラがうっとりとした目をすれば、
「法律も自分たちでつくれるんだな。だったらオイラ、盗みは犯罪じゃない国にするぜ!」
得意のコマンドが【盗む】のオークが、嬉しそうに飛び跳ねた。
と、ここで冷静なルイベが、
「イーゾって、本当に何にもないところよ。国づくりの前に、原野を切り拓いて田んぼや畑をつくらなくちゃ。でないとそもそも人が住めないし」
「誰も住んでないの?」
「原住民はいるようだけど、よく知らない。情報がないのよ」
「ふーん。仲良くできるといいな」
「できるさ。首狩り族とかでなきゃね」
「いや、首狩り族とだって、共存しないと。俺たちは侵略者じゃないんだから」
などと勝手なことをワイワイしゃべっているうちに、未知なる大地へ向かう気分が高まっていった。
「みんなが良ければ今日にも出発しようと思うんだけど、その前に王城に行きたい。この国で吸血鬼を倒したんだから、報奨金はちゃんといただかないと」
「そうだな。モンスターのウルフェン改とか、魔物のサキュバスたちも退治したんだからな」
そこで王城へ行って用件を伝えると、グリアム王のほうでもちょうど用があるとのことだった。
「何スか、用って?」
王の間で玉座についているグリアム王を見上げて言うと、居並ぶ衛兵たちがいっせいに槍を向けた。
「無礼者! 不敬罪で死刑にするぞ!!」
「何スか、不経済って?」
「不経済とは、無駄が多くて金を……って違ーう! 不敬罪、陛下に不敬を働いたってことだ!!」
「父兄って?」
「父兄とは、父と兄と書いて保護者の意味だけど、最近じゃ女性差別としてその言い方は……違ーう!! 不敬ってのは、陛下に対してものすごーく失礼だってことだ!」
「失礼なだけで死刑? うわぁ、ひっでえ法律。え、こちらの陛下サンが決めたの?」
「そうだ!」
「アンビリーバブル。それホントっスか、陛下?」
するとグリアム王は、むっつりと首を振った。
「いや、余は知らん」
「そ、そ、そんなー陛下ー!!」
衛兵は槍を振り回してジタバタした。
「どー考えてもこれは死刑っしょ! アホだなー。そんなことだから、東にも西にも南にもバカにされんですよ。みんな陰で、陛下のこと何て呼んでるか知ってます? バカの王様、キングオブバカですよ!!」
「あいつを火あぶりにしろ!!!」
その衛兵は、他の衛兵に両脇を抱えられて王の間から消えた。
「じゃあ改めて、用って何スか?」
「うむ。まずそっちの用を先に済まそう。吸血鬼の件だろ?」
「はい。あとモンスターと魔物駆除も」
「フムフム、ご苦労であった。余は苦しゅうない」
「……金は?」
「苦しゅうない、苦しゅうない。金ない」
「は? 今なんか、どさくさに紛れなかった?」
「いやいや、今のは王様ジョーク。金はあるけど、吸血鬼はちょっと高くて……」
「まけてもいいっスよ。ただ、破壊した宿屋の修理費を払わないといけないんで」
「プロレスでもしたの?」
「まー、そんなとこですね。女と小鬼のイデオロギー闘争の結果で」
「じゃあ宿屋の修理費の10倍払おう。それでいい?」
「陛下に頼まれちゃ仕方ないなー。それでいいっス」
「サンキュ。あ、ところで弟のグレアムから手紙が来たぞ。吸血鬼を倒したのを知ったみたいで、パーティーに戻ってこいだって」
「それだったら、返信は一言。『今さら遅い!』ですよ」
「だよねー。余からもそう言っとくわ。ぜひきみたちには、我が国にいてもらいたいもの」
「どーも。でもそろそろ、辺境の地に行きます。そこを独立国家にするんで」
そう言うと、グリアム王がぐっと身を乗り出した。
「あの、それ、ちょっと待ってくれる?」
「え、何で?」
「実は……」
グリアム王はもじもじとしていたが、あっさりと怖ろしいセリフを口にした。
「そろそろ戦争するんで、協力してほしいの♡」




