第127話 僕はこういう人間だ!!!!
「おめでとう、美少女レースの勝者よ。そなたには国王陛下よりプレゼントが下賜される。黙って俺についてこい!」
レフェリーのジョーがそう言って、僕らのパーティーを王城に向かう馬車に乗せた。
「ありがとうセイラ。きみのおかげだ」
「感謝してる?」
「モチさ!」
「じゃあ私のいいところを10個言って」
「かわいい」
「まあね」
「美人」
「そうね」
「性格がいい」
「よく言われる」
「あとえーと、明るい」
「性格に含まれそうだけど、まあいいわ。ほかは?」
「面白い」
「それいいところ?」
「えっとじゃあ、一緒にいて楽しいに変える」
「ほかは?」
「あといくつだっけ?」
「あと5個」
「5個かあ……」
僕は焦ってきた。
あと何があるだろう?
セイラのいいところ……
「女らしい?」
「何で疑問形?」
「じゃあ女らしい」
「じゃあ?」
「女らしい」
「ま、女ですからね。次は?」
「ハートが強い」
「そうかなあ。私、弱いと思うけど」
「強いよ。パーティーでいちばん強いよ」
「ちょっと、いちばんは言い過ぎじゃない? 鬼のオーガとオークより強いってこと?」
「ほら、鬼には心がないから。セイラのハートがいちばん熱いよ」
「熱い? 急に強いから熱いに変えた?」
「うん。ハートが熱いにする」
「次は?」
「待って。やっぱりハートが強いとハートが熱いの2つにする」
「同じじゃん!」
「全然違うよ」
「そうやって、数を稼ごうとしてない?」
「してない、してない。だってセイラのいいところは、無限にあるから」
「ならノルマは11個ね」
チッ。
「待って待って。今舌打ちした?」
「してないよ」
「チッて聞こえたけど」
「僕は言ってないよ」
「アリスター以外の誰かが舌打ちしたってこと?」
「じゃない?」
セイラがじっと睨んできた。
僕はそれを見つめ返した。
セイラの怒った顔……
「ちょちょちょちょちょちょちょちょ!!!!」
気がついたら、セイラが僕を必死で押しのけていた。
「こんなところで、いきなりキスしようとしないでよ!」
「ああゴメン」
僕は我に返った。
「あんまり見つめるから、つい」
「ついって……レフェリーのジョーにガン見されてるのに、よくできるね」
「理性が飛んだんだよ。悪い」
「すっごい軽く言うね。見られただけで理性が飛んじゃうの? アリスター、動物じゃん」
「だって、セイラがあんまり可愛いから」
「…………」
「それに愛してるし」
「…………」
「僕、セイラのことが大好き。超結婚したい」
「おい、いいかげんにしろ!」
ジャックが怒鳴った。
「せっかく王城に行くってのに、その話もしなけりゃ景色も観ないで、くだらないイチャイチャに付き合わせやがって」
「あ、どうぞ、景色を観たかったら観て下さい」
「気が散るんだよ! 何か始まりそうでさ!」
「始めないよ。変態じゃないんだから」
「いやー、紙一重だと思うな」
「ねえ、アリスター」
セイラの目が、潤んでいた。
「私も好き」
「危ない危ない危ない!!」
ジャックが立ち上がって、いきなりセイラをビンタした。
「男を甘く見るな! 始まってもいいのか!」
「セイラに何をする!!」
僕はカッとなって、ジャックの顔面をグーで殴った。
「セイラを侮辱するな! みんなの前で始めると思ってんのか!」
「違う! お前が始めるって言ってんだよ!」
「仮に、百歩譲ってそうだとしても、セイラがさせないさ。なあ、セイラ?」
「…………」
「おい黙るな! アリスターがいいんだと思って始めちまうだろ!!」
「だから始めないって言ってるだろ! セイラも始めたくないだろ!?」
「…………」
「……あれ? いいの?」
「ほら見ろ! やっぱりお前はそういうやつなんだ。まごうことなき変態だ!」
「僕はこういう人間だ!!!」
「かっこ良くねーよ! むしろスゲーかっこ悪いよ!!」
「セイラ、本当にいいんだね?」
「ダメよ」
セイラが急に態度を変えて言った。
「私のいいところ、まだ10個言ってないよ」
「わかった。じゃあこれから、あなたのいいところを探究します」
「……え?」
「教えて下さい!!」
僕がセイラに飛びかかると、ジャックとオーガにあっという間に引き剝がされ、馬車の床に顔を押し付けられた。
「な、何をする! 離せ!!」
「頭を冷やせ、リーダー。お前は勇者だろ。みんなの見てる前で何やってんだ!」
そのときふと、レフェリーのジョーと目が合った。
蔑むような冷ややかな目……
「ハァー、できればこいつらを陛下に会わせたくないが、役目だから仕方がない。なあ、南の国のやつらって、みんなこうなのか?」
僕はようやく、この状況を恥じた。
はーい、反省しまーす!!!!




