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第118話 逆転、また逆転

 エターナルデス!


 吸血鬼の即死技が発動してしまった。


 僕は死ぬんだ。


 死ぬはずだった。


 即死技なのだから。


 それを防ぐすべはない。


 なのに。


 死んでない。


 生きている。


 いったいどういうことだろう?


 そして僕は。


 今。


 信じられない光景を見ている。


 それは。


 直立している吸血鬼の首に、人狼の脚が絡みついているシーンだ。


 思考が追いつかない。


 何が起こったのか。


 少なくとも。


 人狼が、吸血鬼の首を絞めたのは、エターナルデスが発動されるよりも前だったことは確かだ。


 きっと、すんでのところだったのだろう。


 だから僕は生きている。


 またしても……


 人狼に命を救われた。


 僕は天井を見上げた。


 バリアが一部破れ、穴の開いた岩が見えている。


 人狼は、どうやらあそこから飛び降りてきたらしい。


 岩を砕き、バリアを破って、吸血鬼の頭の上に降りてきたのだ。


 そして、吸血鬼の首に両脚を絡め、立ったまま、頸動脈を絞めつけたのだ。


 しかし。


 人狼は、岩に磔になっていたはずである。


 僕はその場所に視線を移した。


 ほら、そうだ。


 人狼は、さっきと同じ場所に、鉄輪で両手両足を固定されていた。


 もう一度、吸血鬼のほうを見る。


 吸血鬼は、人狼の脚を外そうとしていたが、外せずに、顔面を鬱血させてもがいている。


 人狼はーー


 2人いた?


 それとも、どちらかが偽物なのか?


 そう思って、2人の人狼を交互に見た。


 そのとき。


 磔になっていたほうの人狼が、


「ありがとう、人狼」


 と、吸血鬼の首を絞めている人狼に向かって言った。


「吸血鬼が弱ったら、催眠が解けてきたみたい」


 聞き覚えのある声。


 そう。


 それはーー


「セイラ!」


 驚いて叫ぶと、磔になっていた人狼が、


「アリスター、すごいじゃん!」


 キラキラと目を輝かせた。


「【眼福】のレベルがSSSSSになってるよ! 10万年に1人だよ! きっと、もうすぐ眼福マスターになれるよ!」


 そう叫ぶと、一瞬にしてセイラの姿に戻った。


 僕はまざまざと知った。


 セイラの力を。


 セイラの人狼への【変容】は、完璧だ。


 あの吸血鬼を、完璧に騙した。


 すげえ。


 セイラって、すげえ。


 だけど。


 そうすると。


 サキュバス1号の前に坐り込んでいるセイラ。


 あれは誰だ?


 そっちを見ていると、ロープで手を縛られていた「セイラ」が、僕にウィンクした。


「やあ、人間」


 セイラとは全然違う、まるでイタズラ好きな少年のような声で、「セイラ」が言った。


「またお前と、遊びにきてやったぜ」


 次の瞬間、そいつはキツネの姿になり、すばやくバリアを駆け登ると、人狼が降りてきた岩の穴の中に消えた。


 あれは……


 そう。


 地獄谷で出会ったキツネ。


 だけど。


 その正体は。


 精霊だ。


 小人も、キツネも、正体は精霊だった。


【眼福】のレベルが上がった僕は、精霊が視えるようになっていた。


 この世界に宿る、目に見えない精霊たち。


 それは【善】だった。


 だから、邪悪な吸血鬼は敵であり、それと戦う僕らの味方なのだ。


 だから、セイラに化けて、吸血鬼を騙してくれたのだ。


 よおし。


 勝てる。


 勝てるぞ。


 魔人の王、吸血鬼に。


 それが精霊の意志。


 すなわち。


 この世界の意志なのだ!


 そう確信したとき。


 吸血鬼に眠らされていた3人ーージャック、オーガ、オークが起きてきた。


 するとすかさずオーガが、


「ダークグレイブ!」


 闇属性の大技を出した。


 そのときまで、成り行きに呆然としていたサキュバス2号が、オーガの出現させた真っ黒な深淵を覗いた。


「嫌あああ!!」


 サキュバス2号は闇に呑まれ、永遠の墓場に連れ去られた。


「大丈夫か?」


 サキュバス2号にロープで縛られていたルイベを、ジャックが助け起こす。


「ありがとう、ジャック」


 ジャックとルイベは抱き合い、口づけを交わした。


「見せつけるねえ」


 オークが嬉しそうに笑った。


「よくも!」


 サキュバス3号が、武器を構えた。


 それは、先端がドリルになっている武器だった。


 がーー


「アーマゲドン!」


「シャイニング!」


 セイラとルイベが、聖属性の究極技と、光属性の究極技を同時に出した。


 すると、サキュバス1号と3号は、断末魔の悲鳴をあげて蒸発した。


 すげえ、すげえ。


 オーガもセイラもルイベも、すげえ。


 超強力な魔物のサキュバスを、3体とも破ってしまった!


 みんな成長している。


 ジンとした。


 あともう少しで終わる。


 人狼が吸血鬼を倒したら、この戦いもーー


 が。


 異変が起こった。


 人狼の両脚は、吸血鬼の首を完全にロックしていたはずだった。


 それが。


 吸血鬼が首を180度回転させたことにより、ロックが緩んだ。


 そして。


 吸血鬼は牙をむき、人狼の太ももに噛みついた。


 人狼は、吸血鬼の頭から落ちた。


 誰かが息を呑む音がした。


 人狼の右の太もも。


 その内側の肉はごっそりと取れ、どくどくと血が溢れていた。

 

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