俺と彼女の「秘密」の世界
朝の人はおはようございます。昼の人はこんにちは。夜の人はこんばんは。
連載中の作品で早くもネタ切れしそうなんで間を保つ為に適当に書きました。(本音)
いつものよりちょっと長いです。あといつも通り文章力が小学生なんで暖かい目で見てやって下さい……
──────この世界は、ありとあらゆる"謎”で溢れている。しかし、その"謎”の内容は人それぞれだ。例えば、隣の席の気になるあの子の好きな人だったり、家宝として受け継がれる謎の物品の使い道だったり、自分一人では証明しようがない、微かな現実の矛盾だったり……そんな謎だらけの世界で、今日も俺達は、今まで知らなかった何かを知ったりするけど、それでも知らないことの方が圧倒的に多い。むしろ、知らないことの方が少ない人なんていないと思う。
そんな謎だらけの生活の中、己を取り巻く数多くの謎のうちの一つである、"人の秘密”を知りたがるのは仕方の無いことだと思う。その"秘密”の大きさも人それぞれ違うけれど、その人は、その事を知られたくないから"秘密”という形で己の胸中に留めておくのだ。だから、その"秘密”が周囲の誰かに漏れた時は、恐らく誰であろうと、ある程度の嫌悪感を感じるだろう。そして、その相手が普段から挨拶すら交わさないほど疎遠な人物であった場合、秘密が漏れた本人は、果たしてどう思うだろうか……普段からよく会話をするような仲良しの友達であれば、自分の秘密をバラす心配はないと安心できるだろう。だが……そんな疎遠な人物であれば、間違いなく疑う。口先だけでは絶対に信用出来ないはずだ。
……ここまで長々と語ったけど、結論を言おう。俺、坂木優助はつい先日、クラス……いや、学年(もしくは学校全体)の中心と言っても過言ではない美少女お嬢様の、霧澤華菜のとある秘密を知ってしまった。俺からしたら別に誰も気にしないくらいの小さな秘密なのだが、本人は『私は周囲の人にとって、常に完璧な人でなければいけないの。あなたが知ってしまった"あの事”は、皆が思っている私のイメージとは違う』として、その事について他言しない契約を(一方的に)結ばされた。
ただ、彼女も流石に契約を押しつけるだけなのは罪悪感があったのか、何故か"契約金”として、二十万円を契約書(霧澤さん作成)と共に押しつけてきた。返そうと思っても『あなたにお金を渡せば、罪悪感でバラそうだなんて思えなくなるでしょ? だからもうそのお金はあなたのものよ。お小遣いみたいなものだと思って好きに使っていいわ』
と、謎の理屈で受け取ってくれない。バイト禁止のうちの学校だと、二十万円はマジで普通の学生が出せる金額じゃないと思う。それを涼しい顔で渡してくるのだから、流石お嬢様と言ったところだろうか。
元々バラすつもりなど微塵もないし、普通の人ならば臨時収入だとでも思って過ごすのだろうが、今、俺には欲しいものだったり行きたい場所がないのである。要するに、この大金の使い道がない! まぁ、それなら貯金するなり部屋に隠しておくなりすればいいと思う人もいるだろう。だが、この二十万円は彼女の親の金だ。彼女の親が渡している以上、本人が何か飲み食いしたり、お洒落を楽しむために使うのだったら良いだろう。だが、挨拶すら交わしたことの無い男に言うことを聞かせる為に使うのは間違っているはずだ。どうにかして返したいが、彼女を説得するのは難しいだろう……まぁ、行きつけのラーメン屋にでも行って、食いながら考えるか……
──────放課後になり、校門から出た俺は、帰るべき家とは真逆の方向に歩き出した。何度か角を曲がったり、二つほど横断歩道を渡ってしばらく歩いていると、小さなラーメン屋が見えてきた。
「へいらっしゃい」
「いつもの」
「あいよ。七百円ね」
財布に小銭が増えると面倒なので、ちょうどぴったりになるように払う。
「好きな席に座ってくれ」
『いつもの』ってやつ、昔からやってみたかったんだよな……やっと叶った。入学してからしばらくして偶然見つけたこの店に一年間通い続け、店主が顔を覚えるくらいに常連と化した俺は、遂に『いつもの』と言えば、俺の注文が店主に伝わるくらいのレベルに達していた。
すっかり慣れ親しんだ店の空気を吸った俺は、L字型に並んだカウンター席の端っこに座る。何故か座る人が少ないが、ここはスープの匂いが堪能できる穴場なのだ。しかも、客が誰もいない時は、店主と会話ができるオマケつきだ。近隣の高校は俺の通ってる高校くらいしかなく、わざわざ下校開始直後のこの中途半端な時間にやってくる物好きは、きっと俺と"あいつ”ぐらいしか居ないだろう。
「へいらっしゃい」
「塩ラーメンお願いします……って、何でまたあんたが居るの? 普通ならあの後しばらくは来ないわよ?」
入店早々不機嫌な様子の霧澤さん。全く……ラーメン食べたいなら専属シェフを雇えばいいだろ……お前ん家は無駄に金持ちなんだしさ……
「あいにく、ここのラーメン食べないと満足出来なくなっちゃったもんでね。お前こそ専属シェフでも雇えばいいのに」
「シェフが作るのより美味しいんだから仕方ないじゃない。穴場とはまさにこの事ね……今まで結構な数のラーメン屋を巡ってきた中でも、総合的な評価で言えば断トツで一位よ。ねぇ……店長さん、この店辞めてうちに来ない? それ相応の報酬は払うわ。無理にとは言わないけど……」
「……お嬢ちゃんらがうちのラーメンを好きでいてくれるのは嬉しいけど、悪いがこの店を辞めるつもりは無い。俺はうちのラーメン食べて笑顔になるやつを見るのが好きなんだ。その気持ちは嬉しいが、このラーメンをお嬢ちゃん一人だけの為に作るわけにはいかない」
店長かっけーなおい……ますますこの店が好きになったぞ……ということで、彼女と店長との会話の中にもあったが、俺が知ってしまった彼女の秘密は、彼女が放課後にラーメン屋を巡って、自分で勝手に採点をすることで、そのラーメン屋に複数回行くかどうか決めていると言うことだ。何故か彼女は、自分がラーメンを好きだと知られるのが嫌だそうだ。ラーメン美味しいんだからいいだろ別に……
「お前さ……仮にも人にバレたくないんだったら、うちの学生が来ないような夜にでも来いよ……」
「夜にラーメンなんて食べたら太るでしょ……それに親が許してくれないし……」
随分と過保護な家庭だな……まぁ、あいつくらいの金持ちの家なら仕方ないか……それに女性は夜に一人で歩いてると痴漢やら誘拐犯やらに狙われる確率がかなり高いらしいからな……って、それならやっぱり専属シェフとかボディーガードでも雇えばいいのに……
「はい、味噌ラーメン。それと塩ラーメンも」
「頂きます」
「頂きます」
大きめのチャーシューが二枚に、ひとつまみのメンマともやし。ありきたりな具材だが、これらが麺と絶妙なコンビネーションを見せてくれる。
何度食べても飽きのこない麺をすする。モチモチした食感が癖になってたまらない。
途中で中断した後、もやしやチャーシューを食べる。最後にスープを飲んで一周したら、もう一度麺をすする。やはり美味しい。
何度かそのサイクルを繰り返してラーメンを食べ終わると、お皿をカウンターの一段高くなってるところに置いて店を出る。
……おっと、忘れるところだった……二十万円の入った封筒をそのまま彼女の鞄の上に置き、気づかれないうちにその場を去った。やっぱこの方法が一番だよな。
──────翌朝、いつも通り若干遅めに登校すると、俺のクラスの前で待ち構えていた霧澤さんと遭遇した。
「あれはもうあなたのお金なのよ? 変に遠慮して返さなくてもいいのに……」
「元々バラすつもりなんか微塵もなかった。何もしてないのにこんな大金は受け取れない」
「……仮にあなたが本心を言っているとしても、私はまだあなたを信じられない。だったらお金を渡して確実に黙らせた方が私は安心できるし、あなたはお金を得られる。両方にとって得な関係じゃない」
「それじゃ俺が納得出来ないんだよ。確かに今まで全くと言って良い程関わってこなかったんだ。疑いたくなる気持ちも分かる。でも、金を払ったら俺が黙っているって確証はあるのか?」
「……言っとくけど、お金は渡しても良いけど身体は嫌だからね」
「どうしてそうなるんだよ……」
「あなたがお金以上のことを望んでいるのかと思ってね」
「俺はそこまで外道じゃねーよ」
「で、何が望みなの? お金? 情報? それとも権力?」
「どれも要らねーよ。お前が俺を信用して何も渡してこなかったらそれで良い。罪悪感に悩まされんのは嫌だからな」
「……悪いけどそれは無理ね。それじゃ私はここで……」
「話はまだ終わってないぞ?」
それに金を渡すみたいな会話してたのに渡してこなかったし……いやまぁ俺は渡してこない方が嬉しいんだけど……
「あなたはあのことを黙っててくれたらそれでいいのよ。じゃあね」
……って、いつの間にかバッグの中に封筒入れてあるし……一体何したんだよあいつ……それに食べ物の好み程度でイメージなんざ変わらないだろ……よく分からないやつだな……それにあいつ、『私は周囲の人にとって、常に完璧な人でなければいけない』だなんて言ってたしな……なんか過去にあったのか……?
気に入る人がいるようであれば続きを書くかもしれません。(ただし定期的に投稿するとは言っていない)
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