湯船につかるのってすごく気持ちいい
神による造形美というものが存在するとするならば、それはこういうことを言うのだろう。
制作されて目を開き、最初に見たもの。
その姿を、ウィーテヴィーデは生涯忘れることはないだろう。
ソッティーと名乗ったその素体型自動人形は、全くの無であった。
自動人形が自動人形たり得る最初の姿。
一片の歪みも歪もない、最もシンプルであり、基本であり、特徴となりえる無駄や雑味とは一切無縁であり。
それゆえに、完璧な造形であった。
自動人形という種を神が作り出した時、一番最初に手掛けたのがこの方だといわれれば、ウィーテヴィーデはなるほどと納得しただろう。
稼働し始めた瞬間ではあったが、おそらくこの方よりも美しいモノを見ることは、絶対にない。
そう確信することができたほどに、ソッティーは隔絶した存在であった。
もっとも、この感覚はおそらく自動人形だけのものであり、他種族には一切理解されないだろう。
始祖、最初にして最高の存在。
それが目の前にいるのだと、ウィーテヴィーデは確信していた。
のだが。
その衝撃は、地面をのたうち回るおっさんという、別の衝撃によって激しく邪魔されていた。
衝撃と衝撃が合わさって、なんかいい感じに0になる。
そんなことが、ウィーテヴィーデの中で起こっていた。
もしその転がっていたおっさんがダンジョンマスターである、ということをウィーテヴィーデが瞬時に理解していなかったら。
感動を台無しにされたウィーテヴィーデの手によって、ひき肉とかにされていたかもしれない。
おっさんはダンジョンマスターだったことで、地味に命拾いをしていたのだ。
まあ、そもそもダンジョンマスターじゃなかったら、こんな状況にならなかったのだが。
なんとか目が復活した壮志郎は、疲れ切ったようにため息を吐いた。
折り畳みテーブルを挟んで反対側に座っているウィーテヴィーデは、だいぶ困惑の表情である。
「あー、死ぬかとおもった。あの光るの何とかならないかしら。あんな毎回光られたら、おじさんの寿命ゴリゴリ削れてくよ。変更できないのかな、システムとかで」
「おそらく、何かを創り出す際に発せられる現象かと思われますので、変更は不可能かと」
「そうだろうねぇ。はぁ。グラサンとか用意しようかなぁ。おじさんがグラサンかけたらもうアレなビジュアルになっちゃうから嫌なんだけどなぁ」
壮志郎は大きくため息を吐き、ガックリと項垂れた。
恐ろしく絵になる姿だった。
ため息と項垂れる姿が似合うようになったら、おっさんとして一人前と言える。
壮志郎の持論の一つである。
「まぁ、いいや。それは。ええっと、ごめんなさいね、驚かせちゃってね。改めて、自己紹介するんですけども、田沢・壮志郎といいます。ダンジョンマスターをしてましてね、えー、なんかダンジョンを作るために、君に来てもらいました」
「はいっ! ウィーテヴィーデと申しマスデス。よろしくお願いいたしマスデス」
ウィーテヴィーデは、若干緊張気味に名乗った。
こんなにゆっるいおっさんだが、目の前にいるのは間違いなく「ソッティーのマスター」である。
それだけすごい人物であり、その前に座っていることに緊張を感じていた。
別に壮志郎本体から発生するもので緊張しているわけでは一切ないわけである。
恐ろしく低く評価されているわけだが、そのことには壮志郎もウィーテヴィーデ自身も気が付いていない。
何しろ相手はおっさんである。
おっさんというのは、おっさん単体としてはほぼ評価されることがない。
付随される「社長」とか「金を持ってる」とか、そういう属性によってのみ評価される。
ちなみにコレはあくまで「おっさん」のことであり、「イケおじ」とかそういう、「おっさん」と呼ばれない人種には適応されない。
その辺に転がってる凡百な質にのみ適応される、この世界の厳しい現実なのである。
まあ、これはあくまで壮志郎の感想であり、必ずしも事実とは限らないわけだが。
「じゃあ、ええっと、どうしようかな。早速、仕事についての話しちゃってもいいかしら? それとも、休憩とか挟む?」
「大丈夫でございマスデス! 少しでも早く、マスターのために励ませて頂ければと思いマスデス」
「すごい労働意欲。そっか、じゃぁ、説明していっちゃおうかな」
そういいながら、壮志郎は折り畳みテーブルの上に置いた紙に、何事か書き込んでいった。
話の流れなどを書き込んでいるのである。
途中で何を話したかわからなくならないよう、流れを書きとっているのだ。
そうしないと、すぐに何をどこまで話したか忘れてしまう。
おっさんの忘却力は圧倒的なのである。
「すんごくざっくり説明するとね。おじさんのダンジョン、まだ影も形もないのよ。企画段階で、どんな風に作ろうかって話し合ってる段階なの。で、ウィーテヴィーデちゃんには、ダンジョンを作ったり、管理したりする設備課の課長さんになってもらいたいわけ」
本当にざっくりした説明だったが、ウィーテヴィーデは特に問題なく理解することができた。
知識と知性を持った状態で生まれてくる、自動人形という種族であるがゆえに、造られたばかりにもかかわらずそれだけの理解力があったのだ。
「でね、言ったようにダンジョンはまだ企画段階なわけ。それなら、それを作ることになる人の意見も聞いた方がいいよねってことで、こうやって呼び出したわけ。ソッティー。ダンジョンの内容、今決まってるところまで説明してあげて」
「わかりました」
壮志郎の後ろになっていたソッティーは、ウィーテヴィーデの横に移動した。
ダンジョンコアの画面を見せながら、あれこれと説明を始める。
関連する知識に関するスキルを取得していたのと、ウィーテヴィーデ自身の理解力が高かったおかげだろう。
説明と状況把握は、あっという間に終わった。
「そういうことでしたら、お任せください。ウィーテヴィーデは、ダンジョン設備に関する知識スキルを取得させて頂いていマスデス。それを駆使すれば、ご期待にはお答えできるものと思いマスデス」
「たのもしいなぁー。おじさんより全然優秀だね」
「マスターにはマスターの良さがありますので」
全然フォローになってないソッティーの言葉だったが、壮志郎は素直に喜んだ。
裏の意味とか一切気にしないで、褒められたら素直に喜ぶ。
長生きの秘訣である。
ダンジョン内部の造形は、なるべくシンプルに。
壁面や壁面などは掘った場所の土を、そのまま押し固める。
模様などは付けずに、わざと歪な平面にしておく。
地面は細かな凹凸などを付け、滑りにくい構造にする。
「地面っていうか、床面はすごく大事だからね」
「そうでございマスデス?」
「うん。滑って転んで頭を打って死んじゃいました。なんてことになったら、コッチのミスになっちゃうじゃない」
「それは厄介でございマスデス」
しかめっ面のウィーテヴィーデの言う通り、厄介な話である。
事故要因となりそうなものは、片っ端から取り払う必要があるのだ。
「レンガ敷きの地面なんかだと、雨が降ったら滑ったりすることあるじゃない? そういうのは避けたいね。おじさんよくわかんないんだけど、水をばらまくような魔法もあるでしょ?」
「存在します」
「なら、やっぱり水で濡れて滑るような地面は不味いね。パターンとか刻んで、滑りにくい感じにしよう」
こういう細やかな気遣いが、顧客満足度に結びつくはずである。
「それと、明かりか。これはどうしようかしらね」
照明器具代わりである発光苔は、かなり色合いなどに調整が利く。
そうなると、どれを選んでいいのか非常に迷ってしまう。
「こういうのもセンス問われるよね。おじさんそういうの皆無だからすんごい困るわ」
ちなみに、センスが無いというのは壮志郎の特徴であり、おっさん全体の特徴ではない。
世の中にはハイセンスなおっさんというのが存在するのだ。
「現地に行って試してみるのが良いのではないか、と思うのですが。壁の色合いによって、光の加減は変わってくると思いますので」
壁の色によって、僅かな光でも明るく感じたり、見えやすさが変わってきたりする。
剥き出しの土を固めて使う予定なので、そのあたりの色合いは現地に行ってみなければ判断が付かない。
「扉は、どんな具合がいいかしらね。スイングアップドア?」
一枚の板を跳ね上げるタイプの扉で、日本ではお高い車庫などで使われているケースが多い。
戸板そのものが露出してるので、「閉まりそうだな」と警戒されやすくはあるだろう。
「昔、一戸建て建てた友達が自慢しててさ。結構丈夫だっていうじゃない?」
「材料や機構に気を使う必要はありますが。再現は可能かと」
ダンジョンは、基本的に自己修復機能がある。
その特性上、経年劣化や使用による劣化にも強い。
扉の開閉などの仕掛けならば、一度作ってしまえば、大きく破壊されない限り手入れの必要もなかった。
「素材は、何を使いマスデス? ある程度強くなければ、破られる恐れもありマスデス。そうでなくても、戦いの場でございマスデスので、攻撃魔法や流れ矢、吹き飛ばされたものが叩きつけられる場合もございマスデス」
「ヤダ物騒。そういえば、そういうのもあるのか。そりゃそうだよね。じゃあ、丈夫な感じがいいのか」
なにしろ、戦うための場所である。
「おすすめってあるの?」
「土をダンジョン魔法で固めたものがいいと思いマスデス。強度も魔法で確保できマスデス。陶器のような硬度ではなく、ある程度の粘性を持たせておけば、自己修復もかなり早くなりマスデス」
設備課の課長として造られただけあって、ウィーテヴィーデはそういった知識を多く持っているようだ。
製作時に取得させたスキルの賜物である。
もちろん、どんなものを取得させたかといった細かい情報は、壮志郎の頭から消え去っている。
「じゃあ、とりあえずその予定で。細かいところは、現場を見て微調整って形で一つ」
ここまで決まれば、後は現場に行くだけである。
「そういえば現場ってさ、どんな場所なの」
「ダンジョンコアの映像である程度確認しましたが。ご覧になりますか、と言いたいところですが」
「無理だね。おじさんだから」
別におじさんだからというわけではなく、壮志郎の目がヤバいからである。
「山間の深い森の中、といった感じの場所でした」
「へぇー。っていうか、ダンジョン作る場所ってもう決まってるの?」
「入り口はこの場所に作るように。という指定があります」
流石にそういうのがあるようだ。
入り口が決められてしまえば、ダンジョンはあまり離れたところに作るわけにもいかない。
無理やり通路を伸ばせば離れたところに作れなくもないだろうが、顧客満足度は著しく低下するだろう。
入り口から無暗に歩かされるというのは、ストレスに違いない。
「ていうか、現場ってどうやっていくの?」
「ダンジョンコアを操作すれば、ゲートが開きます。それをくぐれば、ダンジョン建設予定地の地表に出ることができます」
「行き来にはダンジョン力はいらないんだ?」
「いちいち必要なようでしたら、消費が大変なことになりますので」
交通費が上から出るというのはありがたい。
毎月のことになると、定期代とかもバカにならないのだ。
まあ、転移に定期とかあるのかわからないが。
「はぁ。おじさんも行くのか。やだなぁ、異世界の森の中って。すごく怖そう」
「マスターはここで待機していただきたいと思いますが。危険に見舞われても困りますし、お守りしきれない場合もありますので」
「あー、そうなの? 行ってもお荷物的な?」
「有体に言いますとそうなります」
「そっかぁー。じゃあ、ソッティーとウィーテヴィーデちゃんだけに行ってもらうほうがいいかぁ」
ともすれば失礼な物言いだが、壮志郎は欠片も気にしている様子が無かった。
そもそも、どうせそういわれるだろう、とは思っていたのだ。
魔法もろくに使えない、体力もない、身も守れないおっさんが行った所で、足手まといになるだけなのだ。
「でもそうなると、帰りってどうするの?」
「一度場所を確認さえできれば、ダンジョン魔法がありますので」
「ダンジョン魔法って、ダンジョンを作るための魔法じゃなかったの?」
「転送ゲートを作ることは可能ですので。持続時間は短いので、使い捨てになりますが」
なんということでしょう。
ダンジョン魔法というのは、そんな便利機能もあるのか。
「まあ、ダンジョンとここをつなぐ専用のもので、ダンジョン関係者しか使えない程度の限定された機能のものですが」
逆に便利な気がする。
敵が侵入してきたりしないということだ。
「それなら、問題ないかぁ。ちなみに、モンスターとかに襲われたら?」
「私もウィーテヴィーデも、そう簡単にはやられない程度の戦闘能力は有しております」
「マジで? それって、ダンジョン予定地で通用するレベルなの?」
「マスターがお休みの間に5番様に確認したところ、私とウィーテヴィーデの戦闘能力であれば問題ない。とのことでした」
「いつの間にそんな確認を」
「マスターがお休みになっている間にしておきました。必要だと思いましたので」
「ソッティーが優秀すぎる」
仕事が少なくなるのは壮志郎的に大変喜ばしいことである。
自分が要らないぐらいがちょうどいいのだ。
壮志郎は、風当たりの強い窓際部署に追いやられ、日がな一日仕事もなくイスに座りっぱなしになる、なんて状況を微塵も苦にしない人種であった。
というより、そういった状況をこそ歓迎するタイプの人間である。
閑職最高。
働かないでいいなんて夢の様な話である。
「え、じゃあ、どうする? そうなると、あれじゃない? もう行けちゃう感じなの?」
「ご指示があれば、いつでも。そうですね、ウィーテヴィーデ」
「へっ!? はい! いつでもいけマスデス!」
話を振られ驚いたのか、ウィーテヴィーデは慌てた様子で敬礼をする。
壮志郎は腕を組み、唸り声をあげた。
「んー。とはいえ、知らんところに飛び込みで行ってもらうのも怖いのよねぇ。そうだ。ウィーテヴィーデちゃんって、通常モンスターのほかに、リポップモンスターも作れるんでしょ?」
「はい。作れマスデス」
「じゃあ、リポップモンスターを作ってさ。それを送り込んで、つゆ払いしてもらうってどうかしら? 可能?」
「なるほど。確かに、その方が確実ですね。ウィーテヴィーデ。貴女は確か、自身で作ったリポップモンスターと視覚や聴覚を共有することが出来ましたね」
「はい! 細かいことは無理ですが、どこそこを守れー、ぐらいなら、指示もできマスデス」
「へぇー。すごいなぁ、そんなことできるんだ」
「ウィーテヴィーデを造る際、そうなるようにとマスターがスキル構成をお考えになったのですが」
「そんな記憶がうっすらと有ったから聞いてみたのよね」
一日たっているにもかかわらず、うっすらと記憶が残っている。
壮志郎のスペックを考えれば、快挙と言えるだろう。
「まず、リポップモンスターを作ってもらってさ。それを送り込んである程度安全を確保してから行く。っていう感じでどうかしら?」
「良い判断かと思います。ウィーテヴィーデ。リポップモンスターを作るのに、どの程度の時間がかかりますか?」
「ものによりマスデスけど、拠点防衛用のものでしたら、一体につきニ十分も頂ければ作れると思いマスデス」
「早くない? どういう仕組みで作ってるのそれ」
「魔法、でございマスデス?」
ウィーテヴィーデにもよくわからないようだった。
とにかく、出来るというのであれば問題ない。
「まあ、いいや。じゃあ、そういう感じで行こうよ。怖いし。何体ぐらいリポップモンスター送り込めば、安全確保できるかしら?」
「十体もあれば、十分かと」
「じゃあ、それで。呼び出してすぐの仕事で悪いけどさ、ウィーテヴィーデちゃん、お願い出来る?」
「はい! マスターのご期待に応えられるよう、励みマスデス」
恭しく頭を下げるウィーテヴィーデの所作は、実に美しかった。
相手がおっさんでなかったら、さぞ絵になっていただろう。
おっさんには、見切れるとどんな絵でも台無しにする能力が備わっている。
壮志郎の持論の一つだ。
「ゆっくりやってね。あんまり急いでよくないのが出来たり、失敗しちゃってもあれだし。ソッティーは、そのあいだ、アレだ。なんかこう、やることある?」
「細々とした確認作業などがありますが」
「じゃあ、それをやっててもらおう。実は、おじさんもやらなくちゃいけないことあるのよね」
「なにか、緊急の案件ですか?」
いつになく真面目な顔で言う壮志郎に、ソッティーは怪訝そうな声で尋ねた。
壮志郎は、妙に重々しい仕草でうなずく。
「おじさん、気づいちゃったんだけどさ。ここに来てから一度も入ってないのよね。お風呂に」
ダンジョンマスターは人間ではなく、なんなら生物ですらない。
基本的な代謝の仕組みが異なるためか、ほっといてもあんまり汚れないし、臭くなりにくいのだ。
何なら、風呂になんて入らなくてもいいわけで。
突然ダンジョンマスターにさせられる、という衝撃展開もあり、すっかり風呂の存在を忘れていた壮志郎を悪く言えるものは、そんなにいないだろう。
「ウィーテヴィーデちゃんを見てさ。おじさんくさぁーい。とかって言われないようにしないとな、って思ったら、風呂入ってないの唐突に思い出してさ」
「わかりました。すぐに風呂の準備をします」
「ありがとう。あとなんか、シャンプーとかあるかしら。加齢臭抑えるやつ」
おじさんという生き物は案外繊細であり、くさいとかいわれると簡単に心が折れてしまう。
壮志郎の持論の一つである。
風呂から出た壮志郎は、ご飯を食べたり、お茶を飲んだり。
ウィーテヴィーデにも休憩をしてもらおう、ということでなんか取り寄せたボードゲームをしたり。
猫と犬、どっちが好きか論争を巻き起こしたりした。
そうこうしているうちに、ウィーテヴィーデが十体のモンスターを完成させる。
「ゴツくない?」
「拠点防衛用でございマスデスので」
体高が3mぐらいある、ゴリラみたいなビジュアルのモンスターであった。
自動人形らしく、作り物めいた見た目。
やや光沢のある体は、瀬戸物を思わせる。
色合いは様々で、赤、白、黄色、黒などの模様が入っていた。
「でもさ、これって、ヴィーデに入らないんじゃないの?」
ヴィーデというのは、ウィーテヴィーデの箱の方のことである。
自動人形ゴリラは結構デカく、箱には収まらなさそうなのだ。
「ヴィーデの中は特殊空間ですので、出てくるときはこう、うにょーんって感じで出てきマスデス。うにょーんって」
ヴィーデの前面がぱっかりと空き、中に自動人形ゴリラが吸い込まれた。
そして、再び出てくる。
まさにうにょーんって感じで、空間が歪んでいるかのような出入りだった。
「ほんとだ。すげぇ。っていうかナニ今の」
「リポップモンスターでも、完全に壊れていなければ修理できマスデスので。整備のための収納機能を使ったのでございマスデス」
「べんりなのねぇー」
そんなこんなで、早速、ダンジョン建設予定地へ自動人形ゴリラを送り込むことになった。
「十体の拠点防衛用自動人形を転送。それを、ウィーテヴィーデが操り、周辺の安全を確保。然る後、私とウィーテヴィーデが現地に飛び、なるべく早く地下への入り口を製作。掘り進めて、入り口を封鎖。拠点を確保する、という流れで」
話し合いの結果、そんな感じで事を運ぶことになった。
十体の自動人形ゴリラは、部屋の外。
洞窟っぽいところに並べられていた。
閉所に瀬戸物ゴリラが並んでいる姿は、圧迫感がスゴイ。
「了解了解。で、ソッティー達が向こうに行くときは、おじさんがダンジョンコアを操作するのね」
ダンジョンコアは、部屋と洞窟のあるこの空間から持ち出すことができないらしい。
なので、ソッティー達が出発する際は、壮志郎が操作をすることになる。
のだが。
「で、どこをどう操作するんだっけ?」
「ここのところをタップするだけで良い様に設定しておきますので。あとは何も触らず、テーブルの上に置いておいていただければ」
「えーっと? ダメだわ。全然見えない。あ、これ!? コレか!」
「そうです」
「はいはいはいはい! わかったわかった! ばっちりだわ!」
そんなソッティーと壮志郎のやり取りを見て、ウィーテヴィーデは「このやり取り四回目だな」と思っていた。
もちろん、口には出さない。
自動人形ゴリラを転送した後、五回目が執り行われるのだが。
全く怒らずに説明しなおすソッティーに、ウィーテヴィーデは尊敬のまなざしを向けるのだった。




