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儚くて脆くて壊れやすい存在、おっさん

 ご飯の支度は、ソッティーがしてくれることになった。

 なんとソッティーは、料理もある程度出来るらしい。


「マスターがそういうスキルを私に持たせたのですが」


「全然覚えてない」


 ある程度の年齢を超えると、記憶というのはあっという間に溶けて消えるものになるのだ。

 それを避けたかったら、何かに記録して置くしかない。

 注意しなければならないのは、「記録したことすら忘れる」ことだ。

 おっさんになるというのは、記憶の喪失との戦いが始まることを意味する。

 壮志郎の持論の一つだ。


「まあ、とにかく。人に作ってもらう飯っておいしいよね」


 ソッティーがご飯を作ってくれている間に、ダンジョンのことを考えることにする。

 とりあえず、紙にダンジョンの設計図らしきものを書いていく。

 基本となる中央のデカくて丸い部屋。

 その部屋から道が十本ほど伸びて、それぞれの先に小さな丸い部屋がある。

 地上につながる階段も、忘れてはいけない。


「言い忘れましたが。お聞きになりたいことがありましたら、ご質問ください。この程度の作業をしながらでしたら、お答えできますので」


「なにそれスゴイ。マルチタスクってやつ?」


「似たようなものかと。そもそも自動人形は行動の処理方法が、人間と異なるようです」


「へぇー。そうなんだ。どんな風に違うのん?」


「少々複雑ですので。詳しく説明しようとすると、かなりの前提知識が必要になりますが」


 複雑で専門的な話というのは、そうそう簡単に説明できるものではない。

 聞く方にもかなりの知識と高い知性が求められるのである。


「あ、じゃあなんか、簡単に説明できるならそれでしてもらって。出来ないなら分からないままでいいやって感じで一つ」


 壮志郎は知識の方にも知性の方にも自信がなかったのである。

 どちらかでもあるようなら、もう少しましな生活をしていたのだ。


「大抵の人間は一度に一つの行動しかできません。私の場合はそういった形ではなく。行動処理の容量が100あるとすれば、必要量が50のことであれば二つ同時に、30のものなら三つ同時に処理できる。といった感じでしょうか」


「パソコンとかみたいな?」


「似たようなものかと」


「はぁー。すげぇ重い仕事してるときとか、処理落ちしたりしそうね」


 なんとなく便利そうな、不便そうな。

 微妙なラインのような気がする。


「それに関しては人間も似たようなものかと。一応、そういったものを抑制することはできますし。本物のパソコンとは違いますので」


 それはそうだろう。

 似たようなものというだけで、全く同じではないのだ。

 まあ、ともかく。


「地上から地下の広間へつながる道って、どのぐらいの広さがいいだろう」


「最初の大部屋へつながる道、ということでしょうか。大部屋の用途によると思いますが」


「用途? どういうこと?」


「ダンジョンに降りてきて最初にある大部屋では、リポップモンスターなどを出現させない予定でしたね」


「そうするつもりだねぇ」


「ということは、人間にとって安全地帯ということになります。そこで泊まり込む者がいるかもしれません。あるいは、商売しようとするものもいるでしょう」


 確かに、そういう連中もいるかもしれない。

 モンスターは出ないとしてもダンジョンはダンジョン。

 壮志郎ならそこで寝たり商売したりしたくないと思うだろうが、世の中には肝の太い連中というのは居るものである。


「そういった連中は、地上から大荷物を持ち込むことになります。許容するのであれば、ある程度道を広げてやるのがよろしいかと」


「逆に、そういう連中が出てくるのを抑制したいのであれば、入り口を狭くしちゃえばよろしい。ってことね」


「もちろん、無理矢理持ち込もうとするものは居ると思いますが。あまりダンジョンを荒らすと、冒険者ギルドが止めに入りますので」


「へぇー。この世界、冒険者ギルドなんてあるんだ。すげぇーファンタジー感あふれる」


「冒険者ギルドといっても、母体は教会ですが」


「なんで?」


 冒険者ギルドといえば、冒険者のための互助組織というのが一般的なイメージな気がする。

 そこに何故、教会が絡んでくるのか。


「この世界のダンジョンは、神が試練と、それに見合った報酬を与えてくださるもの。という認識が、人間側にもあります。なんでも、最初のダンジョンができる時、天使様が御降臨なさってそうお告げになられた。とかなんとか」


「実話なの、それ」


「残念ながら私の知識にはありませんが。5番様にお聞きになればわかるかと」


 わざわざ天使様に直接確認したい内容か、と問われると、壮志郎的にはものすごく聞いてみたい気がする。

 だが、なんとなくヤバそうなネタっぽいし、触れないほうがいいかなぁ、という印象が強い。

 壮志郎は基本的に事なかれ主義者なのだ。


「それはまぁ、機会が有ったらってことで」


 しかし、教会がそういうことをして、問題は起きないのだろうか、と壮志郎は疑問に思った。

 この世界における教会がどういうものなのかよくわからないが、そういうところが強くなりすぎるのは、あまり国とかが喜ばない気がする。


「それってさ。どういうシステムでやってるの?」


「教会はダンジョンの管理や、人の出入り。そこで採掘された資源の買取などを行い、一定の取引のある相手に適正な金額で卸しているようです」


「不正の温床になりそうなアレだねぇ」


 ダンジョンから入手できる資源を独占できるとなったら、経済を牛耳ることも可能なのではなかろうか。


「もちろん、教会は利益も上げるようですが。あまり暴利を貪ると、天罰が下るそうです。リアルに」


「どんな?」


「天使様が御降臨されて、人々にそのものの罪を公衆の面前で告知するのだそうです。そうなったらもう、周りが黙っていませんので」


 おそらく、信者やら国やらから、吊し上げに遭うだろう。

 下手をしたら、死んだほうがましというような目に遭わせられる。

 大義名分を得た大衆というのは、凄まじく残酷なものだ。


「なので、教会の利益はかなり少なく、本当に適正な価格で卸しているようですよ。もっとも、相手は国か、国の許可を得られた大商人のみらしいですが」


「教会はダンジョンからの採掘物を一手に管理し、利益を得る。ただし、過度に利益を得ようとすると、天使様にチクられる。で、採掘物は国か、国が許可を出した商人にだけ売り渡される」


「大雑把には、そんなところです。その流れがうまく行われるよう、細かい管理機能や制度などがありますが。そのあたりは、難しい話になりますので」


 なかなかよくできた制度なのでは、という気がする。

 親方日の丸ならぬ、親方神様で教会が管理するとなれば、文句を言うものも少ないだろう。


「ギルドに対する信頼って、高いのかしらね?」


「かなり信頼されているようではあります。まぁ、悪さをするにも命がけになるでしょうから」


「天使様から直々に罪人宣告受けるかもしれないリスク背負って仕事してるなら、信頼できるかな。ってことね」


 壮志郎ならそんな仕事、ごめんこうむりたいものである。

 まあ、世の中には嬉々としてそういう仕事に携わる人種もいるのだろう。

「立派だなぁ」と思うような。

「ドエムなのかな?」と思うような。


「ほかにも、ダンジョンに入る人間を管理するにあたって、教会が携わることで都合がいい部分があるようです、が。申し訳ありません、話がそれました。とにかく、むやみにダンジョンを荒らすことは、冒険者ギルド。つまり、教会が許しません」


「だから、道を狭くしとけば、無理やり広げて荷物持ち込もう。なんて無茶をする連中は居ないよ。ってことね」


 教会の方で気をとられてしまったが、元々は道の広さについて考えていたことを思い出した。

 なるほど、広い道にすれば、色々なものを持ち込みやすいだろう。

 テントや屋台などの材料、食料品なども簡単に持ってくることができる。

 逆に、狭く曲がりくねった道にすれば、入ってくるのは人間だけになるはずだ。

 武器や人数なども、制限しやすくなる。


「ある程度こちら。ダンジョン側で意思を示せば、教会側はそれをくみ取り、対処してくれるようです」


「ありがたい存在なのねぇ」


「ただ、ダンジョンマスターが教会などの外部と直接交渉することは、禁止されています。過干渉は厳に慎むように。ということです」


「何か理由があるわけね」


「少々込み入っているのと、理由が複数存在することから、説明するには少々時間がかかります。また、私の知識では理由が分からない部分も」


 どうも、ものすごく込み入った事情から、そういうことになっているらしい。

 まあ、法律とかでも似たようなものはある。

 そういうものだ、ということで理解しておくのが、一番だろうと、壮志郎は判断した。


「まあ、そういうもんだろうからねぇ。何でもかんでも深く理解しなくても、どうにかなるし」


 ぶっちゃけ、壮志郎は理由なんて知らなくても、「そういうものだ」で納得してしまう人種であった。

 長いものには全力で巻かれていくタイプなのだ。


「んー、そういうことを考えなきゃならないとなると。結構悩むなぁ」


 ダンジョンの中で商売をされても、別に不都合はない。

 ご飯とか食べたりしてくつろぎつつ、採掘作業に精を出す。

 それも、仕事環境としてはよさそうな気もする。

 まあ、仕事内容は命がけの戦闘なのだが。


「でも、中で住みこまれても困るんじゃないの? なんていうか、ほら。排泄物とか」


 閉鎖空間でそういうのをされたら、偉いことになりそうな気はする。

 そんなことで病気とかになられても厄介だ。


「確かに、それはあるかもしれません。排泄物に対する意識は、近代とそれ以前ではだいぶ異なるでしょうし。ちなみにですが、この世界でも排泄物由来の病気や寄生虫はあるようです」


「あ、そうなんだ。ってことは、警戒しないといけないね。まあ、場合によってはトイレ作ってもいいんだし。いや、どうなんだトイレのあるダンジョンって」


 ダンジョンに常設されているトイレ。

 なんとなく罠っぽい感じもしなくもない。


「古城を模した形のダンジョンで、手洗いの跡地を模した地形があるものはあるようですが」


「そんなのもあるんだ。すごいなぁ。色々なアイディアがあるもんなんだねぇ」


 出物腫物ところ選ばず、ということわざもある。

 お手洗い問題は割と深刻な気がしてきた。


「定番だけどさ、スライムとか設置したらおトイレ解決できたりしない?」


「モンスターに限らず、生き物に向かって用を足すというのは、いささかなりと抵抗感がある気がしますが」


「ファンタジーから現実に引き戻されるわぁ。まあ、そりゃそうなんだけどさ。ていうか、排泄物は持って帰ってください、みたいなことを書くのは無しなの?」


「過干渉になるので、文字による意思表示は出来ないようです」


「どのラインからが駄目で、どのラインがOKなのかよくわかんないなぁ」


「法律と同じで、複雑怪奇なのでは」


 ダンジョン制作ルールに関する専門家、的な職業も成り立ちそうな気がする。

 法律家などと似たようなモノかもしれない。


「ソッティーってその辺詳しいの?」


「ダンジョン制作知識に関するスキルを取得しておりますので。マスターが設定して」


「全然覚えてない」


 記憶というのは、実に儚いものである。


「地下の閉鎖空間だと、換気もそうだけどトイレも気にしなくちゃいけないのか。あ、そういえば換気ってどうする予定なの?」


「それについては、一応腹案があります。あとでご確認いただければと思いますが。もしトイレを作るおつもりでしたら、既存のものからいくつかご紹介しましょうか?」


「それだ。いくつか例上げてもらえる?」


 自分で思いつかなくても、既にあるものを使えばよいのだ。

 先人の知恵に頼れるということの、なんとありがたいことだろう。


「大部屋をどう使うにしても、トイレは欲しいもんなぁ。んー、中に店とか作らせちゃうのはアリやナシや。近くになにがあるかによるよね、でも」


 歩いて30分圏内位に村とか街があるなら、買い物などはそっちで済ませてほしさもある。

 大体、ずっと中に居座られたのでは、内部の改装などができない。

 時間で出入りを制限、なんていう選択肢もありだ。


 部屋の形はどうするか。

 どんなモンスターを配置するか。

 どの程度の量を供給すればいいのか。

 あれこれ考えているうちに、ソッティーの料理が出来上がったらしい。


「先ほどお召し上がりになったばかりですので、軽いものを用意しました」


 ご飯に味噌汁、漬物、卵焼き、納豆。

 なんとも落ち着くメニューである。


「あー。味噌汁が染みるわぁ」


「顆粒出汁があったので、助かりました」


 みそ汁の具は、ジャガイモと玉ねぎ。

 ゴロッとした食べ応えがうれしく、玉ねぎの甘さが優しい。

 しょっぱめの卵焼きに、納豆が白飯を進ませる。

 ちなみに食卓は、いつの間にかポップしていたという折り畳みテーブルを使う。

 ちょっと大きめで、一人で食事をするには十分な大きさだ。

 食べ終えると、ソッティーが食器洗いも手早く済ませてくれた。

 上げ善据え膳というのは非常にありがたい。

 すっかり洗い物も終わったところで、ダンジョン制作の相談に戻る。


「トイレですが、川に流す形式が多いようです。あとは、汲み取り式。野山に穴を掘る形式。といったところでしょうか」


「やっぱそっちになるのかぁ。日本人としては水洗式にしたいところだけども。下水処理施設があるわけでもないしなぁ」


「となると、汲み取り式かぁ。参ったなぁ」


 壮志郎個人としては、汲み取り式のトイレにあまりいい思い出が無かった。

 なので、できるなら自分のダンジョンには設置したくなさがある。


「物陰などもない形にして、外への出入りをある程度しやすくすれば、トイレの設置を避けることも可能かと」


 外でトイレを済ませろ、というスタンスである。


「その線で行くかぁ」


 壮志郎が考えるに、トイレ問題というのは非常に重要な問題である。

 ダンジョンという場所で、こちらの意図しない方法で病気などになられても困るのだ。

 なるべく良い環境で試練に当たってもらい、理不尽さなどを感じることなく作業をしてもらいたい。

 適度な試練、適度な報酬。

 それが、この世界におけるダンジョンが目指すところである。

 標語として、額縁に入れて飾りたいところだ。


「となると、出入りの通路はある程度広く、通りやすい感じがいいかね。短めになるかぁ」


「ある程度歩かせてしまっても、問題は無かろうかと。山と同じようなものと思えば」


 登山の時などは、トイレがある場所までは我慢しなければならない。

 どうしてもという時などは、携帯トイレなどを使うことが推奨されるだろう。

 現代日本では、野山に垂れ流すというのは、あまり推奨されないのだ。


「そうねぇ。じゃあ、結構広めの通路を大部屋までつなげて。出入口はどうしよう。屋根とかあったほうがいいかしら」


「出現させる場所が、山間の森の中という予定ですので。そのあたりを考慮してお考えいただければ、と」


「目印として、土で作ったカマクラみたいなのを設置しようかしらね。そこから、地下に降りていく階段を作る、と。どうだろ?」


「宜しいのではないかと」


 このあたりは、あっさりと決まった。

 トイレよりは命にかかわりがないが故である。


「天井には、発光苔をはっつけてもらって。踊り場を付けつつ、斜め下へ下っていく。そして、大部屋」


 円形の大部屋からは十本の道が出ていて、その先には小さな部屋がある。

 小さいといっても、広さはある程度欲しい。

 戦うのだ、ということを考えると、天井までの高さは4m、半径は10mといったところだろうか。


「いささか広すぎるのでは?」


「複数人入ることを考えると、その位ほしくない?」


 1対1であればもっと狭くてもいいだろうが、相手もそれなりの数を揃えてくるだろう。

 であれば、あまり狭いと戦いにくくなってしまうに違いない。


「部屋を狭くして、相手の人数を制限してしまうというてもありますが」


「ああー。そういうのもあるのか。んー、でも、戦いにくいのはやっぱなぁ。中に入る人数の制限は、別筋で考えてるのよ」


 大部屋から小部屋へ行く道に、二段階の扉を付ける。

 という方法を、壮志郎は考えていた。

 大部屋側の扉から中に入ると、それが閉まる。

 ついで、小部屋側の扉が開く。


「で、小部屋の中にはモンスターがいる。勝てないと思ったら、扉の中に逃げ込むの」


 すると、小部屋側の扉が閉まり、大部屋への扉が開く。


「小部屋使用中は、大部屋の扉が閉まってる。使える時は、小部屋側の扉まで進める。って感じ。これなら、小部屋に入る人数も制限できるしね」


 大人数で入りすぎるのも、あまりに少人数すぎることも避けることができる。

 適正人数で事に当たってもらえば、事故も少ないだろう。


「モンスターに勝てないと思ったら、逃げることも可能。ということですか。いささか親切すぎるのでは」


「一番最初の、難易度が一番低い場所ってことで、ご勘弁願おうよ。その分、実入りも少なくすればいいんだしさ。まずは集客が大事でしょ」


 とにかく、人に来てもらわないことには話にならないのだ。

 新人もきちんと育てていける環境は整えたかった。

 ついでにいうと、壮志郎自身の小手調べも兼ねている。

 これで、人間がどんな反応を示すか、確認しておきたいのだ。


「なるほど。お互いにとっての小手調べ。ということですか。よろしいかと思います」


「じゃあ、大雑把にはそんな感じで。ちなみに、空調ってどうするつもりなのん?」


「小型のダンジョンメーカー系モンスターを配置して、空調ダクトのようなモノを作るつもりです」


「そんなもん作るモンスターおるの?」


「モグラのようなモノですね」


 ある程度設定をして配置すれば、空調を管理してくれる非常に都合がいいモンスターが数種類いるのだそうだ。

 これも、ダンジョン特有のモンスターであり、人間に発見されるとそこがダンジョンだという目印にもなるらしい。


「酸欠は怖いからねぇ。そんなことでうっかり死なれちゃっても、コッチとしても困るし」


「無駄に事故死されると、こちらの実績にも響きますので」


「マジで? え、もっと環境良くした方がいい?」


 衝撃の事実である。

 企業にしてもダンジョンにしても、より良い職場環境づくりが勝利への鍵であるらしい。


「意図していない試練で死なれれば、まぁ、当然そうなります」


「こっわっ。そうなるといろいろ今後の課題が増えるなぁ。やっぱ最初に単純な造りのダンジョンにするのは正解なのか」


 いきなり複雑で大きなダンジョンを作り、やっぱり上手く行きませんでした。というのはシャレにならない。

 そんなものを事前知識や試し無しで作ることができるほど、壮志郎には知恵もなければ度胸もないのだ。


「となると、戦う用のリポップモンスターを何にするか、か」


「意見具申したいのですが」


「何かアイディアあるの?」


「モンスターを決めるのは、ダンジョン現地の状況を確認してからでもよろしいのではないか、と」


 周辺の地域に根差したモンスターを配置する、という手段も確かにありだ。

 あまりかけ離れすぎたものを設定するのも、問題がある気もする。


「じゃあ、外枠はそんな感じかしらね。とりあえず、それでデザインしてみてもらえる? そこから、どのぐらい手がいるか考えようよ」


 ダンジョンというのは作った後でも、維持管理をしなければならない。

 作るのに必要なモンスターだけでなく、整備などに必要なモンスターも考えておかなければならないのだ。

 ダンジョンには、自己修復能力がある。

 ある程度の擦り切れや摩耗は、自分で復元してくれるのだ。

 だが、ゴミ掃除やら大きな損傷といったものは、こちらで対処しなければならない。


「ダンジョン作るときの人員で、どうにかできないかしら?」


「どういったモンスターを召喚するかによると思いますが。往々にして重作業が得意なモンスターは、繊細な作業は苦手とするものかと」


 道理である。

 両方得意なモンスターがいてくれれば申し分ないが、探すのは大変そうだ。


「ただ、マスターの場合は、ダンジョン魔法が使えますので。物理でなく、魔法で作業をする系統のモンスターを使えば、あるいは」


「そういうのもあるのかぁ」


 物理で穴を掘るならば、かなりの力が必要だ。

 だが、ダンジョン魔法を使えば、そのあたりはどうにかなるらしい。


「これって、チート能力なのでは?」


「ほかのダンジョンマスター様方も様々な能力をお持ちなので、なんとも。自分でフルデザインしたモンスターを誕生させる権限を持った方もいらっしゃったりしますので」


「おじさんの能力、低すぎでは?」


 まあ、無いものねだりをしてもしょうがない。

 人というのは、自分の手持ちのカードで勝ったり負けたりするしかないのだ。


「では、とりあえずダンジョンコアで設計だけしてみます」


「そうね。それを見ながら、必要そうなモンスターについて相談しようか。あ、ついでに、それを素案として、5番さんに送っといてくれる?」


「マスターの確認が済み次第、ですね」


「ん、無理。おじさん画面小さすぎて見えないから。いいよ、ソッティーがOKだと思えばそれで」


 おじさんの目には、スマホサイズは小さすぎるのだ。


「じゃあ、とりあえず作業に入ってくださいな。おじさん、その間に外でストレッチしてるから」


「ストレッチですか?」


「そう。あのね、ずっと同じ姿勢でいると、身体の節々がやばくなってくるのよ。おじさんになると」


 特に何もしていなくても、時折体をほぐしてやらないとならない。

 というより、特に何もしないからこそ、体をほぐさなければならないのだ。


「では、運動などをなさればよろしいのでは」


「そんなことしたら筋肉痛になって数日動けなくなるからね。あと、アキレス腱とか切っちゃうから」


 普段運動をしていないおっさんというのは、とても繊細な生き物なのだ。

 錆び付いた自転車のスポークよりも壊れやすい存在なのである。

 おっさんを扱う時は、厳に慎重になるべし。

 壮志郎の持論の一つだ。

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[良い点] 健康第一 いや、運営を何百年と続けるのでしたらすごく正しいと思います。 そして訪れる人の健康にも気をつけられる。 食品や肥料に関わる人々に病気が流行するとか大惨事ですしねえ。 [気にな…
[一言] 「定番だけどさ、スライムとか設置したらおトイレ解決できたりしない?」 「モンスターに、限らず、生き物に向かって用を足すというのは、いささかなりと抵抗感がある気がしますが」 なかなか業が…
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