昨今のファンタジーの教会は、大体ヤバそげ
平定王アーペイン・ゼッゲ・ヴィ・バルダイフの半生は、怒涛のものであったといっていい。
貴族とは名ばかりで毎日畑仕事をしていた男が、気が付けば一国の国王になっていた。
そうなるまでには、様々な経験をしてきている。
土いじりから、兵隊、会計役、貧乏貴族、運び屋モドキ、将軍のマネ事、果ては、王様まで。
アーペイン自身「そんな奴いるわけねぇだろ」というような、正に激動の人生だった。
そんなアーペインであるが、体験したことがない仕事というのがいくつかある。
冒険者は、その一つだ。
ところが存外、アーペインには水があっているようだった。
「申し訳ねぇ! せっかく誘ってもらったんすけどねぇ!」
「いや、ダメもとでしたから。でも、もし気が変わったら、声をかけてください」
若い、と言っても、今の外見的にはアーペインと同い年ぐらいの男はそう言って苦笑すると、席から離れていった。
今いるのは、ダンジョン最寄りの村にある、酒場である。
多くの冒険者が集まる場所であり、当然情報なども集まってきた。
アーペインは冒険者として活動する傍ら、ここでダンジョンに有益な情報を得ようと酒を飲んでいるの、だが。
ここ数日、ほかの冒険者達から頻繁に声を掛けられるようになっていた。
用件の大半は、「自分達のパーティに入らないか」というものだ。
ダンジョン“メルタール・リンド大森林”に来たアーペインがまず取り掛かったのは、「腕のいいソロ冒険者」として名を売ることであった。
別に特別なことをする必要はない。
今のアーペインの能力で冒険者をやれば、「腕がいい」と評価されることになる。
いくら広いダンジョンとはいえ、狩りをしていればほかの冒険者達もアーペインの戦いぶりを見ることになるし。
ギルドに収穫を卸に行けば、どのぐらい利益を出しているかは自然と周囲に漏れる。
当然、最近現れた腕のいい冒険者、として、名が売れることになっていく。
そうなれば、先ほどのように自然と、接触してくるものが増えてくる。
アーペインの目的から考えれば、非常にうれしい状況だ。
まず一つ。
ダンジョン周辺の状況が、いくらでも入ってくる。
ただ世間話をしているだけなのだが、不思議なものでこれが非常に有効な情報収集になるのだ。
もしアーペインが敵軍の将なら、今頃、この村は陥落していただろう。
まあ、アーペインは将などではないし、全人類にとって重要な資源採掘拠点であるダンジョンの近くにある村を攻撃するような奴はいないのだが。
「ああ、いたいた。アーペインさん」
「お、こりゃぁ、ギルドの。どうしたんすか?」
次に声をかけてきたのは、ギルドの職員であった。
「実は、ちょっとお話しておきたいことがありまして」
思ったよりも早かったな。
内心でほくそ笑むアーペインだったが、表には一切出さなかった。
もう一つの目的の方も、これで達成されそうだ。
「ギルド側がアーペイン殿に接触してきたそうです。用件は、最近発見されたダンジョンに行ってみないか。というものでした」
ソッティーから上がってきた報告を聞いて、壮志郎は感心しきりといった顔で「おお」と声を上げた。
「そのダンジョンって、うちのことでしょ?」
「そうなります」
「でも、いいのかしら? 優秀な冒険者が居てくれた方が、ギルド的には実績になるんじゃないの?」
「ギルドは全体主義的な組織です。アーペイン殿の能力を活かすには、メルタール・リンド大森林よりも、マスターのダンジョンが良いと判断したのではないかと」
その名の通り森林地帯であるメルタール・リンド大森林で入手できる資源というのは、植物由来のものが中心だ。
一番有名なところでいえばまず木材であり、これを切り出すにはかなりの人数が必要である。
もちろん、樹液や琥珀、薬草、茸といったような、少量で価値のある品も、採取することは出来た。
だが、やはりメルタール・リンド大森林の最大の売りは、材木などの嵩張る資源である。
「一人でしか戦えない、という部屋もいくつか用意してありますし」
「あー、そうねぇ。まあ、そのために用意したところもあるわけだもんねぇ」
アーペインの役目は、冒険者としてダンジョン近くの村に潜り込むことだ。
まずは自然な形で、村に入ってもらわなければならない。
新ダンジョンに、一人でしか入れない場所があった。
それを知ったギルドが、一人働きの冒険者を呼び寄せる。
腕の良いものなら、すぐに声がかかるだろう。
そう読んでいたのが、当たったわけだ。
まあ、もちろん、それだけが目的で一人専用部屋を作ったわけでは無いのだが。
「部屋の調整はどんな塩梅なの?」
「滞りなく。順調にいっています」
ギルドの調査が入ってからすぐ、彼らが連れてきた冒険者がダンジョンに潜るようになっていた。
ウィーテヴィーデ曰く、非常に行儀が良い連中らしい。
自動人形なので表情こそほぼ変わらなかったが、口調からそこはかとなく満足げなのは伝わってきていた。
冒険者達が入るようになって、すでにそれなりの日数が経っている。
その間、マルシュオーラはすべての戦闘の様子を観察。
モンスターのスペックを把握し、冒険者の癖や、ギルドの思惑などをおおよそ把握していた。
あんな感じではあるが、能力は高いのだ。
「そういえばマルさん何してんの?」
「乾電池を四つ使う携帯ゲーム機の、モグラが活躍するパズルゲームがどうしてもクリアできずに散々喚き散らしています。挙句の果てに、テレビでプレイできるやつならクリアできる、それが欲しいと駄々をこね始めましたので、鴨居に結わえておきました」
「ソッティー、結わえるの好きねぇ」
「魔法をぶっ放して暴れましたので」
「それは仕方ないわ」
マルシュオーラは比較的行動がアレなのだが、そのぐらい飛び抜けてないといい仕事というのは出来ないのかもしれない。
壮志郎が地球にいたころあったことのある企業社長とか、その道のプロフェッショナルとかの人も、何かしらヤバさが匂い立つ人が多かった。
優秀な人物というのは、多少なりとネジが緩んでる場合が多い。
壮志郎の持論の一つだ。
「アーペイン殿が村に入り次第、ヒューイ少年に接触する予定です」
「誰だっけそれ」
「ダンジョン近くの村に住む、冒険者として将来有望そうな少年です」
「あーあーあー。そういえばそんな名前だったねぇ」
何度も聞いた名前なのだが、壮志郎の記憶はふわっふわしているので、覚えていられなかった。
せめて「山田」とか「鈴木」といった名前ならばまだ憶えやすかったのだろうが、横文字の名前はどうしても入ってきにくいのだ。
「しかし、地元のヒーローかぁ。頑張ってもらいたいねぇ」
冒険者として活躍する人材が出てくれば、村は活気付くだろう。
地元のダンジョンへの支援も、力が入ってくるはずだ。
近隣住民の覚えがいいというのは、事業をするうえでとても大切なことである。
ダンジョンも同じようなものらしい。
地元民が協力的なのとそうでないのとでは、資源採取の効率が違う。
というのが、先輩ダンジョンマスター二人からの助言である。
「ところでマスター。なぜこんなところにいるのですか」
「え? ごはん作ってるんだけど」
壮志郎とソッティーがいたのは、ダンジョン従業員用の食堂、その厨房であった。
従業員が増えるとともに、その種族も増えてきている。
自動人形とは違い、食事が必要な従業員も少なくない。
そんな従業員達のために作られたのがこの食堂であり、壮志郎はそこで鍋をかき回していたのだ。
「牛テールスープなんだけど、これをご飯にかけて食べるとおいしいのよ」
「そうかもしれませんが。ここには一応料理長もいますので」
「そうなんだけどねぇ。あっ! キャベツの千切り終わった? そっか、もうこんな時間かぁ! じゃあ、トンカツ揚げちゃおうか! 今日のB定はトンカツで、A定がサバ味噌だからねー!」
壮志郎の言葉に、食堂で働く従業員達が「はーい!」と気持ちよく答える。
ソッティーの言う通り、食堂には料理長がいた。
とはいっても、「作られたて」であり、厨房を回した経験などはない。
対して、壮志郎は若いころ、食堂での勤務経験があった。
ある程度ノウハウがあったので、食堂のオープン当日に覗きに来たのである。
ちなみに、壮志郎が従業員の住居区画に足を踏み入れたのは、この時が初めてだった。
準備に四苦八苦している従業員達を前に、壮志郎は思わず手伝いを買って出たのだが。
その結果がこれである。
食堂が本格稼働して七日程が経っているのだが、今ではすっかり入り浸っていた。
「お味噌汁どう? いいかんじ? OK、今日はジャガイモとニンジンとタマネギの具だくさんの奴だから! 器大きいやつだから、間違えないようにねぇ! えーと、なんだっけ?」
「いえ。こちらのキリが付いてからで構いません」
ソッティーとしては、食事の準備などより村についての話をしたかった。
だが、それは後回しにすることにする。
今すぐ決めなければならないことでもないし、何より、壮志郎が楽しそうだ。
これがある種の娯楽になるのなら、それもよいだろう。
ソッティーは基本的に、壮志郎には甘いのである。
ダンジョン最寄りの村において、ある問題が持ち上がっていた。
教会とギルドにおいては、非常に頭の痛い問題である。
村人全員が、あまりに無欲なのだ。
私利私欲というものがほとんどなく、外から来た者への警戒心も薄い。
頼まれればすぐに手伝いなどをしてくれるし、親切にもしてくれる。
これはこの世界の辺境にある農村特有の問題であった。
人里に近い農村であれば、比較的人の出入りがある。
よって、外から来たものを警戒したり、騙されないようにと考えたりもする。
だが、あまりにも辺境すぎる場所にある村の場合は、そうならない。
騙そうとして村に近づいてくるものが、いないからだ。
何しろ村の周囲にはモンスターが跋扈していて、近づくのすら容易ではない。
そこを越えてやってくるほどの旨味など、辺境の村にあるはずもなかった。
一応、村長など一部のものは、それ相応の危機感なり警戒心は持ってはいる。
もっともそれも「持ってはいる」程度の物であり、本格的に騙すことを生業にしているような連中とやり合えるようなものではない。
「つまり、このままダンジョンが広く開放され、人が増えてくれば。昔から村にいた人々が食い物にされる恐れがある。ということだ」
村に作られた仮設ギルドの中で、ギルドマスターである男は慎重な口ぶりで言った。
聞いているのは、ギルドで働いている職員達だ。
「わかっていると思うが、君達が真っ先に考えるべきは、村と村人の利益だ。教会とギルドのことは考えなくていい」
別にギルド職員が考えずとも、教会とギルドは勝手に利益を上げる。
というより、どうやっても「利益が上がってしまう」ようにできているのだ。
何しろ、ダンジョンからの採掘物をすべて牛耳っている。
よほど損をしようとしない限り、いや、損をしようとしたところで、どうやっても儲けが出てしまう。
だから、ギルド職員程度が村や村人のことだけを考えて行動したところで、どうということはない。
というより、そのぐらいでないとつり合いが取れない、といった状況になりがちなのだ。
これは教会とギルドにとって、非常に不利益であった。
どういうわけか、ダンジョンは教会とギルドが大きく利益を上げ、近くにあった村落の住民が蔑ろにされるという状況を「嫌う」。
そういう状況になると、ダンジョンから産出される資源の量が、極端に落ちるのだ。
何故そうなのか、様々な理由が考察されてはいる。
だが、実際のところ理由は全くわかっていない。
とにかく、そうなのだ。
教会とギルド、王族、貴族、研究者、その他様々なもの達が必死になって導き出した、現状での結論である。
だから、ギルド職員は。
少なくとも新しく発見されたばかりのダンジョン近くに作られるギルド職員は、教会とギルドの利益などというものを考える必要はない。
それが、最終的な教会とギルド。
いや、「人間社会全体」の利益につながるのだ。
何しろダンジョンというのは、この世界で唯一といっていい、「資源採掘場所」なのである。
むろん、ギルド職員達も、そのことはよく理解していた。
とりわけ、新しく発見されたダンジョン近くに作られるギルドに配属されるような職員は、その傾向が強い。
何しろ生まれたときから「そうなるべく育てられてきた」のだから、当然と言えるだろう。
もっとも多くのギルド職員は、そのことについて無自覚である。
自分達が「その目的で育てられていた」ことを、知らないのだ。
「住民から、相談を持ち掛けられることもあるだろう。そういった場合は、必ずそちらを優先するように。とにかく今は、周辺地域の安定が先決だ」
職員達は、真剣な様子で「はい」と返事をする。
皆、真面目でまっすぐな気性なものばかりだ。
見目もそれなりに良く、体も丈夫。
当人達は知らないことだが、そう言ったものばかりが選りすぐられて、この場所に送り込まれている。
それは、場合によっては「村の一員」になることも織り込まれてのことであった。
教会とギルドという組織は、ダンジョンから安定して採掘物を得るためであれば、どんな手段も厭わない組織である。
この場においてそのことを知っているのは、ギルドマスター一人であった。
「エゲツなっ! こっわっ! えー、教会とギルドってめっちゃ怖いじゃん。そんなことしてるの。なんていうの、そういう血縁関係で入り込んでいくの。浸透作戦?」
「違うと思いマスデス」
マルシュオーラとウィーテヴィーデは、ダンジョン内を映すモニタを眺めながら、お菓子をむさぼっていた。
ポップコーンのバターソースがけ、それに、リットル級の紙コップに入ったコーラ。
大きなモニタを眺めている様は、さながら映画鑑賞のようである。
「そこまでせにゃならんもんかね」
「この世界は、地球と違いマスデス。中途半端に神にデザインされた、いびつな箱庭なのでございマスデス。必死にならないとシャレや冗談じゃなく人種はあっという間に滅びるでございマスデス」
「でもさぁ。生き物って案外しぶといものじゃない?」
「細胞単位から進化してきた生き物ならそうかもしれないでございマスデスが、星作るとき、マグマに岩盤乗せただけで満足する神様が作った生物でございマスデスよ? そこまで期待できマスデス?」
「あーん」
そういわれると、かなりの無理難題な気がする。
「この世界は本当に箱庭でございマスデス。ダンジョンという外部からエサを貰わないと成り立たない水槽のようなものでございマスデス。いえ、中にいるのがデザインされたものだという意味では、もっと醜悪でございマスデスね」
「めちゃくちゃ言うじゃん。大丈夫なの神様への誹謗中傷」
「純然たる事実でございマスデス。それに、神は怒ったりしないでございマスデス」
さて、とマルシュオーラは考えた。
人形は人形であり、造り出したモノがいる。
ダンジョンに配備される「自動人形」。
これを造ったのはいったい何者だろうか。
呼び出したダンジョンマスター?
いや、ダンジョンマスターは文字通り「呼び出した」だけだろう。
ダンジョン力を瓶に注ぎ込んだだけであって、設計図を描き、組み立てたわけでは無い。
では、一体だれが「設計図を描き」「組み立てた」のだろう。
神に選ばれて呼び出されたダンジョンマスターが、己の配下とする造形物を作り出したのは、いったい誰なのか。
これ以上の想像はなんとなくヤバそうな気がしたので、マルシュオーラは考えるのをやめた。
「しかし、戦い方がきれいだねぇ。もうちょっと生き汚いのとかいるかと思ったけど」
マルシュオーラが目をやったのは、モニタの一つだ。
三人から五人で、人型自動人形六体と戦う部屋。
今は三人の冒険者が中にいて、六体の武装した自動人形と戦っている。
普通ならば冒険者が圧倒的に不利なのだが、そうなってはいない。
むしろ、手際よく相手をさばいているのは、冒険者側であった。
「魔法かね?」
「魔法でございマスデス」
冒険者三人のうち、二人は前衛。
一人は盾とハンマーを持ち、残る一人は取り回しやすいフレイルを持っている。
その後ろにいるのは、魔法使いだ。
片手には本、もう片手には杖を持っている。
「あの本って何か意味あるの?」
「魔法の術式と呪文が書いてありマスデス。地球の銃でいえば、術式は銃本体。呪文は銃口を相手に向けたり引き金に指をかけるといった手順を踏む行為。魔力は弾丸と炸薬といったところでございマスデス。杖は、魔力の集中に使うのでございマスデス」
「物騒だねぇ。でも、ウィーテヴィーデちゃんとかアーペインさんとか、あとソッティー・・・は規格外か。二人は本とか杖とか使わないでしょ?」
「別の方式で魔法を使っていマスデスから。というか、マルシュオーラさんは魔女だったはずでございマスデス?」
「マジョダヨー。でも、私の使う魔法って地球のだからさぁ。こっちのとはまた別ものなわけ」
「マルシュオーラさんの魔法の方が、この世界の物より進んでいるでございマスデス?」
「いや、方向性が違いすぎるよね。なにより、よ。確かに地球は物質世界への研究なんかは進んでたけど、神秘世界に関してはこっちの世界の方がぶっちぎりだわよ」
「そういうものでございマスデスか」
冒険者の魔法使いが、杖を振るう。
杖から電光が走り、それが凄まじい速さで自動人形の胸に到達。
自動人形の胸部分が、破裂するように吹き飛んだ。
外からの衝撃ではなく、内部から破裂したような爆発である。
「どうやって相手の体内で爆発起こさせたの? あれ」
「相手を爆発させたのではなく、爆発したところに相手が重なっていたのでございマスデス」
「ああん。なるほど、空間機雷」
空間に魔法の機雷を置き、そこに自動人形が重なった瞬間、爆発させたのだ。
「魔法の素養と魔力を見る目が有って、事前に仕掛けられていることを知らないと避けるのは難しいでございマスデス。おそらく三人はどこにそれが仕掛けてあるかわかっていて、自動人形を誘導しているでございマスデス」
「で、発火するのはあの魔法使い、か。自分達にだけ安全な地雷原で戦ってるようなもんだぁね。そりゃ数の差は埋められる。というより、味方が多すぎるとかえってやりにくい、まであるか」
無事に自動人形をすべて倒し、戦いは終わった。
塩の塊と魔石を手に、冒険者達は部屋から出ていく。
今このダンジョンに潜りに来る冒険者達の中で、彼らの実力は真ん中より少し下、といったところである。
とはいっても、それは彼らが「冒険者全体から見てその位置にいる」ということではない。
ここに集められた冒険者のレベルが、相当に高いのだ。
ギルドが選び抜いた冒険者達であるから、それも当然と言える。
だが、もうしばらくすれは、そうではなくなるだろう。
既にギルドは、多くの冒険者に「新ダンジョン発見」を伝え始めている。
「今後はもうちょい質が悪くなってくるんだろうねぇ。新人も増えるだろうし」
「そういう連中を育てるのも、私達の仕事でございマスデス」
ダンジョンの目的は、人種に資源を採掘させることだ。
試練を与え、それを乗り越えれば、見合った資源を与えるのである。
「試練を作り、その試練を乗り越えられるように教育までする。マッチポンプもいいところだぁね」
「存外世の中とはそういうものでございマスデス」
「そうかもしれないけどさぁ。とりあえず、アーさんがあの少年をここに連れてくるまでに、初心者用の部屋もきっちり調整しないと。って、ん? え? 私のポップコーンは?」
まだ六割がたあったはずのポップコーンが、消えている。
マルシュオーラは、ウィーテヴィーデの顔を見た。
頬をいっぱいに膨らませて、何かをもっしゃもっしゃと咀嚼している。
「ソッティー! ソッティー、ウィーテヴィーデちゃんが私のポップコーン食ったー!!」
「告げ口はズルいでございマスデス! それは禁じ手でございマスデス!!」
モニタ室でもみ合う二人を見て、従業員達は迷惑そうに顔をしかめた。




