畑を作るのはものすごく大変
村を作り始めた最初の世代は、ひたすらに土地を切り開くことだけに注力していた。
正確に言えば、それしかできなかった、ともいえる。
森の植物は、非常に凶悪な敵であり、必死の思いで確保した土地を、あっという間に飲み込んでしまう。
それらに隠れて忍び寄ってくるモンスターにも、苦しめられた。
なんとか暮らしていけるだけの広さの土地を手に入れられた、第二世代。
村長にとって、父や母の世代である。
彼らは必死に土地を耕し、畑へ変える努力を続けた。
草木の根を掘り起こし、岩や石を取り除き。
来る日も来る日も、土の面倒を見る。
畑というのは、大変に手のかかる造形物だ。
ただ草木や石岩を取り除けば、畑になるというものではない。
肥料を足し、耕し、土を作り上げる。
植物というのはそもそも、育つ土地というのが決まっているものであった。
新たに畑を作るというのは、全く違う生育環境で、無理やり作物を育てるということである。
種をまいた、苗を植えたから育つ、等ということが有るわけがない。
作物というのはとても繊細で、好みがうるさい。
畑にする場所の土を、文字通り作り変えてやらなければまったく育ってくれないのだ。
その土地に元から自生していた植物を刈り、引き抜き、駆逐していく。
無論、植物は自分達の土地を取り戻そうと枝葉や根を伸ばしてくる。
それを必死の思いで退けながら、元あった土を別物へと作り替えていく。
気が遠くなるような作業である。
実際、村長の父や母は、死ぬまでまともな収穫を迎えたことが無かった。
森などで得た食物も合わせ、何とか飢え死にしない程度の作物しか、得られたことはなかったのである。
畑から得たものだけで食いつなげるようになったのは、村長の世代になってから。
それも、ここ十年以内のことである。
開墾というのは、そういうものなのだ。
土地というものは、開拓者の血と汗を吸って、少しずつ畑に変わっていくのである。
ようやく。
ようやく、この土地も、畑に変わってきつつある。
未だ土は安定しておらず、緑や獣によって脅かされてはいた。
だが、それでも何とか、安定した収穫が得られるようになってきている。
とはいえそれは、いつ崩れるかわからないものであった。
畑に変わったばかりの土地である。
いくら手をかけたところで、何かのはずみであっという間に森に戻ってしまう。
収穫量も、ほんの少しの変化で激減するはずだ。
長雨、日照り、害虫。
そうなるきっかけになるものは、いくらでもあげることができる。
ようやく、暮らしがたつようになってきたように、見えてはいるだろう。
だがそれは、本当にギリギリのことなのだ。
まして村の内情も、何とか飢えないといった程度。
「なのに、税か。いつかはそうなると思っていたが。まさか、今なのか」
食料があるからこそ、人は満足に働くことができる。
今の畑が維持できているのは、ここ数年の収穫のおかげで、村人達が飢えていないからという面もあった。
もし、もしもである。
税のために食料が無くなり、働く力が衰えでもしたら。
割ける労力が減れば、畑は確実に荒れる。
そうなれば、収穫が減ることは火を見るより明らかだ。
あるいは、そのことを訴えれば、税は取りやめになるだろうか。
相当に難しいだろう。
辺境の農民如きがいうことに、ご領主様がまともに取り合ってくれるとは思えない。
「どうすれば、どうすればいいんだろうなぁ」
途方に暮れることしかできない。
何をどうすればいいのか、見当もつかなかった。
少なくとも今は、頭が回らない。
とにかく落ち着いて、方策を練らなければならなかった。
村の行く末が自分の肩にかかっていることを、村長はよく理解している。
しているからこそ、何とか考えをまとめようと、苦心していた。
収穫が終わった畑を見やりながら、何とか心を落ち着けようとしているのだが。
せめて自分にもう少し回る頭があれば。
あるいは何かを学ぶような、場があったならば。
全くの無いものねだりとわかっていても、村長はそう思わずにはいられなかった。
どうすれば、どうすれば。
この日何度目かになるため息とともに、頭を抱える。
「村長! 村長! お客さんが!」
村に住む少年の声が聞こえてきたのは、その時であった。
領主側と農民側の認識の違いには、生前アーペインも散々手を焼いていた。
平定王として名の知られるアーペインだが、元はド辺境領主である。
その日食べるものにも困っていたし、子供のころから土いじりをしていた。
ゆえに、その感覚は貴族や王族というより、どちらかというと農民に近い。
三つ子の魂百まで、というように、いくつになってもそれは変わらなかった。
ゆえに、この村が立たされている状況。
村人達の心理状況まで、推測することができた。
となれば、交渉は簡単である。
「いやぁー、天の助けっていうんですかね、こういうの。日頃の行いがいいのかなぁ」
長老の家らしい大部屋にあつまった主要な村人達は、怪訝そうな目をアーペインに向けた。
喋り倒した話の内容が本当かウソか、測りかねているのだろう。
アーペインが話したのは、こんな内容である。
自分は他国で冒険者をやっていたのだが、お貴族様のご不興を買い命からがら逃げてきた。
追っ手を撒くためあっちこっち這いずり回っていたところ、たまたま生えたばかりのダンジョンを見つける。
これは助かったと、大喜び。
見つかったばかりのダンジョンの位置情報が高く売れるというのは、常識である。
だが、ここでふと考えた。
追われる立場である自分がどうやってそんなものを売るのか。
金を得ようにも、得られる立場があればこそ。
ならば、この情報をネタに、綺麗な立場を買おうではないか。
「この近所に開拓村があるって話は聞いてましたんでね? ならちょっくらそこに行って、詳しいダンジョンの場所と引き換えに人別を発行してもらっちゃえたりしねぇもんかと。ね!」
今までの身分を捨てて、この村で生まれ育った人間としての人別を手に入れよう、というわけだ。
人別の偽造は、重い刑罰に処される重罪である。
だが、存外辺境では、割と頻繁に行われていることであった。
何しろ、こんな場所まで取り締まりに来るものがいない。
人別帳を付けているのは教会だが、こんな辺境の教会にいるのは、やはり村の出身のものであり、村と一蓮托生であることが殆どだ。
村長が「やってくれ」と言えば、人別の偽造など「そのぐらいなら」でまかり通る。
「こういっては何だが、貴方から詳しい場所を聞かずとも、こちらで探せるかもしれませんよ?」
「それができないのは、この土地に住んでるあなた方の方がよくご存じでしょ」
アーペインの返しに、村長はぐっと言葉が詰まった。
ダンジョンがある位置は、村から相応に離れている。
おおよその方向すらわからず、そんな場所を見つけようというのは、相当に骨の折れる行為だ。
半年、一年。
下手をすればそれ以上かかるだろう。
森の中に入るというのは、それだけで危険な行為だ。
あてどなくさまよい続けるなど、自殺とほとんど変わらない。
だからこそ、未発見のダンジョンの位置情報には価値がある。
「俺は新しい身分を手に入れて、さっさと別の土地におさらばする。皆さんは大金をゲット。金があって困ることなんて、そうないでしょう?」
少し前ならば、あるいはもっと疑ってかかっただろう。
あるいは断るという選択肢も、あったかもしれない。
だが、今のこの村では、安易にそれを選ぶことが出来なかった。
金があって困ることはない。
全くその通りである。
金があれば、税として食料を持っていかれても、どうにか食いつなぐことができるだろう。
あるいは、まとまった金さえあれば、別の道を選ぶこともできる。
魔石を買い、畑にまくことが出来れば、収穫は飛躍的に上がるのだ。
二十年ほど前のことになるだろうか。
この村では一度だけ、魔石を使ったことが有った。
不作が続き、にっちもさっちもいかなくなった時のことである。
村長の祖父が入植前に持ち込んでいた魔石の、最後の残りを使ったのだ。
今でも語り草になるほどの、豊作だった。
あの豊作を知らないから、今の若い者達はここ数年の実りを「豊作」というのかもしれない。
怪しい話ではある。
だが、それに飛びつかないでいられるほど、この村は余裕がある状態ではない。
今動かなければ、「まずい」となった時にはもう遅いのである。
結局、村は合議の上で、アーペインの提案を飲むことになった。
表情には出さなかったが、アーペインは色々な意味でホッと胸をなでおろす。
ダンジョンマスターから命じられた仕事というほかに、アーペインは個人的にこの村を気に入っていた。
何とか無事に、存続してほしいと思う。
そのために今回のことは、役に立つはずなのだ。
まず、人別を作り、村で保管しておく。
アーペインが先頭に立ち、村の男衆をダンジョンに案内。
無事にダンジョンの位置を確認したら、村に戻って人別を渡す。
そういった段取りで、話が付いた。
アーペインを先頭にして、森に入り慣れた男衆が数名。
周囲を警戒しながら、ダンジョンへと向かう。
ゆっくりと進んだので、ダンジョンにたどり着いたのは翌日になってからであった。
森の中に突然現れたのは、石とも土ともつかないもので作られた、真新しい東屋の様なモノである。
その中央部分には、地下へと伸びる階段があった。
村にある教会の神父が、そこへ近づいていく。
教会に所属するものの多くは、ダンジョンを見分ける術式を心得ていた。
「間違いありません。これは、ダンジョンです。こんな、村の近くに、本当にダンジョンが」
「ね? マジだったでしょ?」
村の人間は皆、呆然としている。
ダンジョンが見つかるという大事に、動揺しているようだ。
もう一度場所をしっかりと確認し、村へ戻ることとなった。
中に入ろう、等というものは一人もいない。
ダンジョンの中に無暗に入れば、モンスターや罠によって命を落とす。
例え実物が近くになくとも、この世界の住民ならば子供のころから教えられていることである。
「とにかく、村に戻ろう。村長にどうするか、決めてもらわねばなんね」
「そうだな。それがいい、そうしよう」
ダンジョンを発見した村人達は、大急ぎで村へと戻っていく。
無論、アーペインもしっかりとくっついて行った。
そんな様子を、外に配置した監視用の自動人形を介して確認したソッティーとウィーテヴィーデは、お互いに顔を見合わせて頷き合った。
「マスター。無事に戻っていったようです」
「あ、そうなの? なんか、中に入ったりしなかったんだ?」
「彼らはあくまで農民ですので。ダンジョンとわかった場所には入ろうとは思わないものかと」
「そりゃそうか。おじさんでも絶対に入らないもんね。っていうか近づかないもんね」
壮志郎は危険に近づかないタイプであった。
なにしろ、突然何かがあったとしても、逃げる事すらままならないのだ。
急に走ったりしたら、それだけで腰とかを悪くしてしまうのである。
歳をとると多かれ少なかれ、そういった若い頃にはあり得ない爆弾を抱えるものだ。
特におっさんと呼ばれるような存在は、人よりも爆弾の数が多い傾向にあった。
壮志郎レベルともなれば、全身に爆弾を括り付けて歩いているようなもの。
おっさんとは、ただ生きているだけでも命がけの生き物なのである。
壮志郎の持論の一つだ。
「この後の流れって、どんな感じになるの?」
「村の教会から、この国の教会を束ねている本部に報せが届けられます。そこは同時にギルドの本部でもありますから、すぐに調査団が派遣されることになります」
「その人達がダンジョンを査定しに来るわけね」
なんとなく剣呑な気配を感じ、壮志郎はウィーテヴィーデの方へ目をやった。
二体一対、人型のウィーテと箱に節足が付いたヴィーデが、シャドーボクシングをしている。
見た目こそ可愛らしい感じだが、拳が風を切る音が相当にエグイ。
「あの、戦うわけじゃないからね?」
「わかっていマスデス。このコブシは心がまえを込めて打っているのでございマスデス」
人型の方の言葉に、箱の方も全身を揺らして頷いている雰囲気を漂わせている。
まあ、きっと大丈夫だろう。
と、壮志郎はそっと視線を戻した。
「時間的に、どのぐらいでギルドから人が来るものなのかしら?」
「5号様に以前質問させて頂いたときの回答によりますと、おそらく一ヶ月以内には来るだろう、とのことでした」
「時間割的には?」
「村の教会から本部へ連絡が届くまでに十日。そこからダンジョン調査に必要な人員と資材を準備するのにさらに十日。大急ぎで村へ移動して、やはり十日。状況によって多少前後するでしょうが、トータルでその程度ではないか。とのことです」
時間割、というのは独特な言い回しだが、言葉の意図は伝わったようだった。
「意外とかかるのねぇ。けど、そりゃそのぐらい時間かかって当然かぁ」
何しろ、ダンジョンの調査である。
この世界に住む人々にとって、生命線ともいえる資源鉱山を調べるのだから、準備も念入りになって当然だろう。
「待ってる間、何してようかな。一応やっておきたいことはあるけど」
「なにかお考えが?」
「んー、アーさんが、なんだっけ。人別だ。人別を無事ゲットして来てくれたら、桑島さんに連絡とろうと思っててね」
ダンジョン“水琴窟”のダンジョンマスター、桑島・九郎衛門。
約四百年ほど前の日本で死に、この世界でダンジョンマスターをすることになった人物である。
壮志郎にとっては「同郷」の先輩であり、最寄りのダンジョンを管理するダンジョンマスターでもあった。
「桑島様に。それは、人別が関わることですか?」
「そっそ。近所の村からもらった人別じゃあさ、うちでは使えないでしょう? 近すぎて」
「確かに。すぐに身元を調べられるというのは、少々危険ですね」
あの村で発行してもらった人別を使うとなると、この周辺で使うのは確かに危険なのだ。
その人別の人物に成りすましているとき、ちょっとしたはずみで怪しまれたとする。
村の中を調べられれば、すぐに人別が「最近作られたモノ」であり、それを使っているのが「得体のしれないモノ」だとバレてしまう。
「商売を始めるにしても、冒険者登録をするにしても、何をするにも人別を提示しなくちゃいけない場面では、リスクがちょっと大きくなりすぎるわけよ」
「ダンジョンの周辺で活動する限りにおいては、ですか」
「そう。この辺りから離れて活動するには、ド辺境の内容を確かめにくい人別って便利だけど。うちにはまだそんな遠くに行く予定ないし。寝かせて置いて将来的に使うって手もあるけど、ダンジョン周辺の情報はすぐに欲しいものなわけで」
「待っている時間も惜しい。それで、桑島様を頼ろう、と」
「そゆこと。桑島さんにお願いして、人別のトレードをしたいわけよ」
こちらが用意できる人別と、桑島の持っている人別を交換してもらう。
最寄りのダンジョン、とはいっても、お互いの距離は相応に離れている。
人別を交換すれば、お互いに「比較的安全な人別」を手に入れることができるわけだ。
納得している様子のソッティーを見て、ウィーテヴィーデは首を傾げた。
「桑島様は、人別をお持ちでございマスデス? もし持っていたとして、交換してくださいマスデスか?」
「わかんないけど。多分大丈夫だと思うよ。何しろ、四百年もやってる人だしね。ごあいさつ代わりにもなるし」
「ごあいさつ、でございマスデス?」
「そ。このぐらいのことは何とかできます、っていう。あと、今後ご協力していただくことも、お手伝いさせて頂くこともあると思いますが、よろしくお願いします。っていう」
人別は、桑島への名刺代わりということだ。
「あるいは、桑島さんには相談するだけで、パルタパルさんとの間をとりなしてもらう。ってのもありだけども」
ダンジョン“メルタール・リンド大森林”のダンジョンマスター、パルタパル・ロス・セシリアス。
もう一つの最寄りのダンジョンの、ダンジョンマスターである。
「やっぱり同郷だし、最初に桑島さんの方に仁義を切る、じゃないけどさ。挨拶はしとかないと、なんだし。桑島さんの方が先輩でもあるだろうしね」
必要なくとも、先輩を頼ることで顔を立てる。
そのお礼に何かを返し、交友を深めていく。
壮志郎が自分の基礎としている処世術の一つである。
まあ、絶対に上手く行く最高のやり方、とは言わない。
もしそうなら、壮志郎は日本時代もう少しましな人生を送っていただろう。
「まぁ、何にしてもアーさんがもどってきてからだねぇ」
あれこれと急ぎたいが、待つのが仕事という場面もあるものなのである。
数日して、アーペインは無事に事務所へ戻ってきた。
キッチリと人別も手に入れてきている。
「ダメだわ。全然読めない」
早速人別帳を手にした壮志郎だったが、何が書いてあるのか全く読めなかった。
この辺りで使われている文字を読む知識が無いのだから、当然である。
「村の名前と、何年に誰と誰の間に生まれた、みたいなことが書いてあるんっすよ」
「へぇー。やっぱりちゃんとしてるんだねぇ」
「で、コイツはほかのダンジョンマスターと交換する。ってことっすね? いい方法だと思うっすよ」
アーペインにも、人別を桑島と交換する、という話は伝えてあった。
桑島の方に打診するのは現物が手に入ってから、と思っていたので、まだ打診してはいない。
「桑島さんがどんな反応するかによるけどね。掴みとしては悪くないんじゃないかなぁ、と思うんだけど」
「ギルドが調査を終えるまでには、余裕で交渉終わるんじゃねぇっすか?」
「なのよねぇ。何ならいろいろ時間余るぐらいだろうし。やることはあれこれあるから、まぁ、ずーっとヒマしてるってわけでもないだろうけど」
ダンジョン周辺の調査や、村の動向の調査など。
やっておきたいことはいくらでもある。
今後のことを考えて、従業員の追加や、ダンジョンの改良、拡張案なども話し合わなければならない。
「じゃあ、俺の方からその間にしておいた方がよさそうなことが一つ。意見具申したいんすけど、いいっすか?」
「はいはい? なんでしょう?」
「ちょっと気になるノがいたんすよ。相当才能があるっぽくってっすね」
この世界には、スキルというものがある。
才能、と言い換えてもいい。
これは生まれつき、どのようなものが発現するかおおよそ方向性が決まっているものであった。
そんなものが生まれた時から決まっているなんて、理不尽な世界だ。
と思うかもしれない。
が、ぶっちゃけ地球のある世界でも似たようなものだろう。
運動能力の60%、学力の50%は、遺伝子によって決まっているとされている。
恐ろしく残酷なことだが、「才能のある人間」と「才能の無い人間」というのは、存在するのだ。
アーペインは、その「将来取得できるかもしれないスキル」をある程度見通すことができるスキルを、取得させていた。
外での情報収集に、役立つと思われたからだ。
「どんな方向の才能なのん?」
「ダンジョン探索系。冒険者系っていえばいいんすかね。ありゃ、育てりゃうちのいいお客さんになると思うっすよ」
「そっかぁ。そりゃ頼もしいねぇ。出来ればその人に頑張ってほしいところだけど」
「こまっしゃくれてそうなガキなんすけどね。なかなか筋がよさそうなんすよ。ちょいとあれこれ手を出して、育ててみたいと思うんすけど」
ダンジョンにとって冒険者というのは、お客である。
良質なお客を確保するために、その育成にも力を入れる必要があるのだ。
「育てて、ねぇ。そういうのってありなの?」
「地元の村出身の冒険者で、それなりに使えるものがいる。というのは、それなりに良い効果を生むものかと」
「ソッティーがそういうなら、そうなのかぁ。方法とかって、もう考えてるのかしら?」
「まだ、具体的には考えてねぇっす。何をやって良くて、何をやっちゃいけねぇのか、俺じゃぁ判断つかねぇっすから。OKが出てから、話し合った方がいいかと思ったもんで」
「んー。そうねぇ。確かに、宣伝塔は欲しいなぁ。ちょっと、皆でアイディア出してもらおうかな」
言いながら、壮志郎もあれこれと方法を考えてみる。
ダンジョンの調査が始まるのが約一か月後、ということで、しばらくはのんびり営業かな、と思ったのだが。
存外忙しくなりそうな予感に、壮志郎は何とも言えない表情を作った。




