赤いやーつ。
「ねえ!これ、何!!」
公園でベンチに座ってお茶を飲んでると、隣の息子がいきなり立ち上がってうろたえ始めた。
なんだなんだ、いったいどうした。
息子の指差す先を見ると、赤いダニ。
「ああ、これはタカラダニだよ。ただのダニだから大丈夫。」
コンクリートのベンチだったからね、今の時期はいがちなんだよねえ。
「さわ!!触ったら赤くなった!!う、うわあ!!!」
手を振り振りしている。
「ああ、赤いからね、まあ大丈夫でしょ、手洗う?」
「洗う洗う!!ひいー!!!」
五年生にもなるのに、この虫嫌いはどうだ。
私が五年生のときはカマキリやカミキリムシ捕まえて天下採った気になってたんだけどな。
セミ捕まえるとたまにこいつが付いててさ、知らんうちに手が赤くなったりしてたもんだ。
「何で虫なのに赤くなるの!!」
指先を水道でジャージャー洗いながら息子が半泣きだ。
たったひと粒ふた粒のタカラダニでこの有様。
どんだけ虫嫌いなんだ、おかしいな私の血はどこ行った。
「赤い色素がいっぱい入ってんじゃないの。」
「かぶれない?毒じゃない?」
毒ってあんた、大げさな。
「そんなわけあるかいな。そもそも赤い色素ってコチニールっていう虫からできてんだよ。」
確か煮出して色素を抽出するんだよね。
「毎日飴だのかまぼこだの食べてるじゃん、あれ全部虫の…あれ。」
…ヤバイ。またやらかしたかも。息子の顔が固まっている。
「赤いものは、もう食べない…。」
朝っぱらから息子の心にトラウマを植えつけてしまった。
本当に申し訳ない。
朝食べたベーコンエッグにも入ってたのよとはとても言えず。
昼ごはんの冷やし中華にカニカマ入れるつもりなのも言えませんねえ…。
昨日食べたかき氷のイチゴ味とか…。
いつも食べてるイチゴジャムとかさあ…。
夕食は明太子パスタにしようかなって、思ってたんだけどねえ…。
言わぬが花、知らぬが仏。
なんかもう、ホントに、ゴメン。