フタに新種
兄から連絡があったのは、何年ぶりだろう。
もうずっと会ってなかったから、忘れかけていた。
いったい何の用なのだろう。
小さい頃から虫が好きで、ねえねえ?と呼ばれるのは全て虫関係だった。
そこから、だんだんと広がっていき、今では生物全般の博士らしい。
憂鬱になってきた。
昔から、兄の話が退屈だった。
ただ、うんとか、そうだねみたいに、相槌を打ち続けるだけならいい。
でも、兄はクイズを出してきたり、標本まで出してくる。
今日もきっと、それなのだろう。
「何?話って」
「その箱を開けてみてよ」
「これ?」
「うん」
私は、虫ではないことを願って、思いきり開けた。
そこには、私が前から欲しかったドライヤーが入っていた。
「ありがとう」
「もうひとつ、プレゼントがあるんだ。フタの裏を見てみてよ」
「裏?えっ、何これ?気持ち悪い」
「新種の生物。一番最初に報告したくてさ」
兄のような人は、まだ兄しか会ったことがない。
兄は、学会発表レベルの新種のようなものだから。