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はじめての換金

ルーンバリー城

人口1万ほどの城下町ルーンの中心に位置する所にトレジャーギルド換金所がある。


ーーートレジャーギルド換金所ーーー


父ブラッドと娘アリーシャがトレジャーギルドに到着すると中からひどい怒声が聞こえてくる。

アリーシャが恐る恐る中を覗くと男女比で言えば半々といったところだが例外なく皆が鍛え抜かれた体をしていて、更に一様に鋭い目をしているのが特徴的であった。


[なんでこのトゲネズミの皮がたったの10レーンなんだ!前は30レーンで買い取ってくれたはずだろ!?]


【うるせえ!!この前冒険者ギルドの連中が大量に討伐して持ちこんできてな。今は10レーンでしか買い取ってないの!需要と供給!わかる?文句があるなら違う街の換金所に行きやがれ!】


ひときわ大きな体をし、更に髭は地面の届くのではないかという風貌をした男がこの換金所の主、スタントンである。

スタントンは入り口で大きな瞳に涙をいっぱいに溜めている少女の気付くと先ほどまでの声色はどこへやら


【お嬢ちゃん。どうしたのかな?道に迷っちゃったのかな?お父さんかお母さんはどこかな?】


と、視線を上に向けるスタントン


【ん?ブラッドじゃねえか!久しいな。お前が修行するって言って冒険者ギルドに休暇届け出してからもう5年か!何してやがったこの野郎!】

【ってことはこの子があの時まだ小さかった子だな?確か…アリーシャって言ったっけな!それで?久々に顔出した用件はなんだ?】


<スタントン…相変わらず声のボリュームがおかしいな。間髪入れずに話してくるクセもそのままだ。>

【ガハハハ!!】

<それで用件なんだが…>

『てっこーせきを買い取ってください!』

【お!?アリーシャ、鉄鉱石持ってきたのか!どれどれ見せてごらん。】


ブラッドが皮袋いっぱいに入った鉄鉱石をスタントンに渡すとテーブルに座っていた女が怒鳴り上げる。


“ちょっと待ちなよ”

“あたしの換金が先だろ?おっさん順番は守りな!”

【年増女は黙ってろ!いいか?たった今からこの換金所は若い者順になったんだよ!】

“なによそれ!あたしまだ24よ!大体前から言おうと思ってたけどその髭!ホコリとか食べカスが絡まってて汚いのよ!”

【なんだと!このクソアマ!表出ろ!女だからって容赦しねえからな!】

“上等よ!その汚い髭ごと切り刻んでやるわ!”


そのやり取りを不思議そうな表情で見つめているアリーシャその視線に気付くスタントンは更にブラッド冷たい視線にも気付きハッとした表情を見せる。


『おねえちゃん、とっても綺麗。』


子供にとんでもないところを見せてしまったと考えている大人たちとは裏腹にアリーシャはそんなことを考えていた。

確かにこの女

長い金髪をポニーテール

無駄な脂肪が一切ない肉体

女性らしい曲線

伸びゆく長い脚

つり上がった尻

飛び出た胸 

そして美しい顔


見た目だけは完璧である。そう、見た目だけは。

まだ内面という部分を見る力のないアリーシャにとっては正に完璧な女性なのである。


“まあいいわ!興も冷めたし、お先にどうぞ”

<すまない。>


女は気分を良くしたようだった。

兎に角にもいよいよアリーシャ人生初の換金である。


【今回お嬢ちゃんが持ち込んでくれたのはレア度Gクラスの鉄鉱石30キロだな。鉄鉱石は今は1キロ3レーン!全部で90レーンで引き取らせてもらうよ。いいかな?】


『うん!』


【よーし!いい返事だ!じゃあ10レーンおまけで100レーンで引き取らせてもらうよ!】


『ホント?おじちゃん大好き!』


<いいのか?スタントン>


【ああ!構わんよ!お嬢ちゃん、これからもよろしく頼むな!】


『うん!おねえちゃんもありがとう!』


“あんた名前は?”


『アリーシャ!』


“私はペンネ。このトレジャーギルドの一員だ。”

“15歳になればギルドの選抜試験が受けられる。やるかい?”


『うん!』


“じゃあそれまでせいぜい精進することだね。そう易々と突破できる試験じゃないからねえ。”


その言葉を聞き、トレジャーギルド換金所を後にするブラッドとアリーシャ。

はじめての換金で得た100レーンは二人の豪華な昼食で消えてしまったが、この日の出来事はアリーシャがトレジャーハンターを志すきっかけになり、一生消えない想い出となった。


《本日の成果》

鉄鉱石30キロ Gランク

換金額100レーン (おまけ10レーン)

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