表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケン太とチュン太  作者: 紫李鳥
1/4

 1

 



 とある農家に、ケン太という犬が飼われていました。


 庭の犬小屋につながれたケン太は、空と山並みを眺めながら、毎日ため息ばかりついていました。


(……あ~あ~あ~。空を飛んで、世界中を旅したいなぁ)


 うつろな目をして、前足にあごをのせたケン太の姿は、いかにも退屈そうです。


(……あ~あ~あ~。てっぺんに雪をのっけた山並みの風景も見飽きたし、なんか刺激はないかなぁ)


 と、そのときです。


 一羽の雀が飛び降りて来ました。


(ん? なんだなんだ?)


 ケン太がびっくりして顔を上げると、雀がピョンピョンと、ケン太の鼻先にやって来ました。


「やー、はじめまして。ボク、雀で~す」


「見りゃ、わかるさ。突然人んちの庭に無断で入って、なんの用だよ。てか、近寄りすぎ。寄り目になるじゃん」


「ぁ、ごめん。なんか退屈そうだったんで、話し相手にでもなろうかと思ってさ」


 雀はピョンピョンと二~三歩後ろに下がりました。


「ふん、大きなお世話だ。雀なんかに同情されたくないね」


「けど、口とは裏腹にシッポ振ってるよ」


「こ、こりゃ、おいらたちの習性って奴だ。別に歓迎してるわけじゃないから、勘違いすんな」


「うん、わかった。ところで、なんか悩んでる?」


「なんだよ、藪から棒に」


「なんか、そんな顔してるから。ボクでいいなら、話し相手になってあげるよ」


「ったく、生意気なガキだな。おめぇが悩みを解決してくれるってんなら、話は別だがよ」


「うん、解決してあげる」


「ばーか。できるわけないだろ?」


「ボクならできるさ」


 雀は自信満々に、目を“への字”にしました。


「……マジで? なんで?」


「だって、ボクには“雀の力”があるからさ」


「なんだい、そりゃ。“雀の涙”ってぇのは聞いたことあるが、“雀の力”ってぇのは初めて聞くぜ」


「だって、雀学校の言葉だもん。犬さんは知らなくて当然さ。で、悩みって何?」


「暇潰しに付き合ってみっか。実は、カクカクシカジカ」


 ケン太が悩みを打ち明けると、雀が言いました。


「三日後に会いに来るから、絶対に食べちゃ駄目だよ」





 そして、その三日が経ちました。


 断食をしていたケン太は痩せこけて、げっそりしていました。


 三日も食べないケン太を心配する、飼い主の奥さんに申し訳ないと思いながらも、ケン太には雀が叶えてくれるという夢のほうが、空腹より勝っていたのでした。


 アッ! 雀が飛び降りて来ました。


「やー、三日間のご無沙汰で~す。ずいぶん痩せたね」


「……それより、早く夢を……叶えて……よ」


 ケン太はあまりの空腹で、息も絶え絶えです。


「オッケー。首輪を抜いてみて」


「えっ? 無理だよ」


「いいからいいから」


「……ムゥ、グゥ、ムゥ、グゥ」


 スポッ!


 あら、不思議。首輪が抜けました。うむ……なるほど。だから、三日間の断食をさせて、ケン太を痩せさせたわけですね。首輪を外させるために。


「ワーイ! ワーイ! 首輪が抜けた。自由だ! 自由だ!」


 俄然、食欲が出たケン太は、餌皿のねこまんまにかぶりつきました。




「では、旅に出発しますか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ