八話
大変です。美少女の危機です。お肌が荒れました。
この前、お茶会にしていったお化粧がまずかったのかもしれない。正直この世界の化学基準を過大評価していた。昔、お化粧として顔に有毒物質を塗っていたという時代もあったと聞いたことがあるし、この世界でそれが繰り返されていないとも限らない。
けれど、この前のお茶会では皆んな化粧をしていたし、外に出るときは絶対にメイドに化粧をしろと言われるだろう。つまり、お化粧をやめるのではなく対策を講じなければならない。
こういうことは一人で悩むより他の人に相談したほうがいい。そう考え、この間晴れて文通友達となったアヤメの君に手紙をしたためる。この世界の文字を書くのはまだそんなに慣れていないが折角の初めての友達との手紙なので精一杯丁寧に書く。手紙は三日四日に一度、アヤメの君の従者という人が手紙の仲介をしてくれる。
アヤメの君はすぐ返事をくれ、薬草や肌をマッサージするようのオイルまでプレゼントしてもらった。手紙には化粧をする上で気をつけなければならないことや毎日の食事のバランスについてまで細かく記されていた。
ありがたい。持つべきものは美少女の友達である。字も綺麗だし、アヤメの君は本当に素敵である。いい友達を持った。
俺は、アヤメの君が教えてくれたように肌や体調を管理し、わからないことがあったらまた素直にアドバイスを求めるということをその後しばらく続けた。
毎日のお手入れは慣れていなかったので大変だったし、こんなに色々やることがあるのかと戸惑ったがこんなところで美少女を諦めるわけにはいかないとしっかりと継続した。おかげさまで肌荒れも治り、むしろ今までより肌のメリハリがついてきた。美少女は一日にしてならず。最近ではケアをすることもだんだんと楽しくなってきた。
アヤメの君は植物が好きなようでよくお花を添えたり、薬草やハーブティーをくれたりする。俺もできるだけアヤメの君の話についていきたいと今まであまり興味がなかった植物の本なども読むようになった。
アヤメの君はこのように俺の世界をだんだんと広げてくれた。今まで興味ないと思っていたことも知ってみると意外と面白く、新たな発見がある。外には相変わらずほとんど出られなかったが、前世にいた頃よりも内面的な発見はむしろ今の方が多いかもしれない。
美少女になれてよかった。いや、それよりもアヤメの君に出会えて本当によかった。