七話
御機嫌よう。俺は城でのお茶会にてアヤメの君の隣にいます。綺麗です。隣に立てることが誇らしくて自然に笑えます。きっと可愛く笑えてるでしょう。二人は美少女です。無敵です。
アヤメの君のおかげで緊張のとけた俺は、お茶会会場を落ち着いて眺めていた。お茶会会場は薔薇園で、見事に薔薇が咲き誇っていた。色とりどりでどれもそれぞれ美しく大事に育てられていることがうかがえる。
こんな綺麗な庭園が先ほどまで目に入らなかったのだから、よほど俺は緊張していたのだろう。恥ずかしい。
先ほど皆んなが注目していたのは例の同い歳の王子らしく、今も是非挨拶をと多くの人が集まっている。
特に王子の周りで目立ったのは俺より少し濃い金髪で真っ赤なドレスを着たご令嬢だった。つり目で少しキツい印象の顔立ちをしていたが立ち振る舞いは上品で堂々としてる。
派手で彼女を苦手とする人たちはなんとなく見受けられたが俺としては好印象で綺麗だし、是非お姉様とお呼びしたいという気持ちになった。あの手の令嬢はきっと強気に見せていたり、少し抜けているところがあってギャップ萌えがあるんだよなと勝手な妄想さえした。
それはさておき、アヤメの君が貴方は王子に挨拶しないのと聞いてきたので「私には縁の遠いお方なので。」とだけ応える。するとアヤメの君は「実は私、殿下には興味ないの。」と笑っていた。何か少し意味有りげなニュアンスだったがあまり深く聞いては失礼かなと思い「同じですね。」と笑いかえす。
アヤメの君は王子に興味がなかったことにびっくりしたのか「王子に興味がないのなら何故このお茶会に?」と聞いてきた。俺は俯きがちに「お友達が欲しくって。私、あまり家から出ないから、友達がいないの…」と打ち明ける。少しあざとかったかもしれないがアヤメの君は「じゃあ私が最初のお友達ですね。」と嬉しそうに言ってくれた。
幸せだ!ありがとう神様!こういう展開を待っていた!
俺は神に二度目の感謝を捧げた。そして俺はアヤメの君と向かい合って座り、おしゃべりをしながらお菓子に手を付ける。美味しい。今、今までの人生で一番幸せかもしれない…。
このように俺は美少女二人のお茶会という幸せ空間を目一杯満喫し、初めての外出を終えた。
帰りに幸せに浸りながら馬車に乗っていたが、今度いつ会えるかなと考えていて、ふと気づく。そういえば俺、アヤメの君の身分とか何も知らないじゃないか、これじゃあ連絡が取りようがない…。
もやもやとして眠れない日々が三日程続いたがそれは杞憂に終わる。手紙が届いたのだ。名前は書かれていなかったがすぐにアヤメの君からだと分かった。
だってフリージアの花が添えられていたのだから。