五話
妹ができた。チラッとみたが赤ちゃんは可愛いと思う。父に似なければそれなりに可愛く成長するだろう。まぁ俺の方が可愛いけど。流石に赤ちゃんに張り合うのは大人気ないか。
父も使用人も継母と妹に付きっきりで正直言って暇である。俺はいわゆるお嬢様教育に一層熱心に取り組むようになった。正統派美少女ならばある程度のことは優雅にできた方がいいし、それにどうせなら色々な人にちやほやされたいからな。今は家から出られなくてもそのうち社交界とかに出ることになるし、それまでに一通りできるようにならなければ。
「外の世界を見てみたいわ。友達が欲しいの。」と執事にいうと「今度王宮でお茶会が開かれるようなので参加なされてはいかがですか。お嬢様ぐらい歳の方も参加するとお聞きしています。」と教えてくれた。
この国の王子はどうやら俺と同い歳らしく、王子の婚約者候補の令嬢方も同じくらいの歳らしい。今度のお茶会は王子が出席するのでそれを目当てに多くの貴族の子女が出席するらしいのだ。ついでに言うと宰相の息子や騎士団長の息子も同じぐらいの歳らしい。なんかできすぎている気もする。
俺は王子に興味なんてないし、身分が高くないので縁遠い話だが、他の貴族の令嬢とはぜひお近づきになりたい。女の子と優雅なお茶会。素晴らしい。
早速準備に取り掛かることにした。お茶会に着ていくためのドレスを選び、デザイナーにそれに合うアクセサリーを用意してもらう。やっぱり、俺には瞳と同じ水色のドレスが一番似合うな。
お化粧も多少した方がいいと言われたが、俺には全くわからないのでメイドに全て任せることにした。
父にも「王宮のお茶会に参加したいのですが。」と声をかけたが返ってきたのは「好きにしろ。」と言う言葉だけだった。
そんなこんなでお茶会の日になり、目一杯おしゃれをして馬車に乗り込んだ。髪は軽くウェーブし、風になびく。誰もが振り返るような儚げな美少女。今日も俺は完璧である。
屋敷の外に出るのが初めてだと言うこともあり、気分はルンルン、最高潮だ。目に入るもの全てが輝いて見え、美少女としてその世界に溶け込んでいる。こう言うと自分でも面白いと思うが言ってみれば”お姫様になった気分”だった。
メルヘンちっくな森を抜け、想像していたよりも綺麗で活気のある街を通る。本当にファンタジー世界に来たと実感し、自分が不思議の国のアリスになった気さえする。
この後、馬車に初めて乗った反動で腰が痛くなり、現実を自覚するのは、また別の話である。