四話
背が少し伸びてきた。女の子は成長が早い。スカートの丈も心なしか短くなってきた気がする。そろそろ新しいドレスを頼んでもいいかもしれない。少しぐらいなら甘えても大丈夫だろう。だって美少女だし。
メイドに新しいドレスが欲しいというとデザイナーを呼ぶと言ってくれた。貴族の令嬢は滅多なことでは外に出ないらしい。街の様子とか見てみたいが難しそうだ。少し窮屈である。
これじゃあ引きこもりと同様だが、お屋敷が広いのであまり引きこもりな気はしない。箱入り娘、深層のお嬢様である。
継母は相変わらずあたりが強いが、使用人達は優しいのであまり苦労はしていない。今日も悠々自適、のんべんだらりと過ごしている。
勉強の方はまぁまぁだ。文字は少しずつ読めるようになってきた。簡単な本なら読めそうな気がする。
「本がお好きなのですか。」と執事に聞かれたので、知りたいことが色々あると言ったら書斎に案内してくれた。こんな部屋あったのか。つくづくこのお屋敷は広すぎる。
ぱっと見、難しい本だらけだが、これだけ読めれば色々わかりそうだ。目的が明確な勉強はそんなに辛くない。
何か読めそうな本はないかと探していると何か使用人達がバタバタとしていて騒がしい。どうしたのかと聞いてみると、継母が懐妊したらしい。色々と早くないか。やることはやっているらしい。
この家には俺しか子どもがおらず、跡取りがいないため、もし男の子が生まれたらその子が男爵位を継ぐこととなる。俺は別に貴族の仕事とかしたくないし、別にいいのだが、もし女の子しか生まれなかったら婿養子を取る必要があるらしい。
ん?婿養子?俺、やっぱり結婚しなきゃいけないの?男と?
別に俺は差別主義者じゃないし、ゲイとかを否定するわけじゃないが、俺中身男だぞ…。外見は美少女でちやほやされるのは悪い気がしないが、結婚しなければならないとなると話は別だ。
性同一性障害とか言ってもこの世界じゃ頭おかしいと思われるだけだろうし、人に話すわけにもいかない。
まぁ、まだ先のことだし考えないことにしよう…と思ったが不安なので執事に「私っていつか結婚しなければならないの」と上目遣いで聞いてみると、「貴族のご令嬢は一般的に15歳ぐらいまでにご婚約をします。」と教えてくれた。
意外とタイムリミットは短いのかもしれない。