二話
今日も俺は可愛い。鏡の前でにこっと微笑む。いつまでも見ていられそうだ。
レースがヒラヒラたくさんついた瞳と同じ色のドレスを着るとお人形さんになった気持ちになる。
三次元はちょっとと敬遠していたピンクのロリータもこの容姿であれば着こなせるかもしれない。いやむしろ絶対俺似合う。今度欲しいってお願いしてみようかなとも考えるが、ドレスは衣装棚にたくさんあるので勿体無い気もする。
それに、容姿もそんなに良くなくオシャレに興味のない男子大学生だったので、服がいっぱいあるのは少し落ち着かない。
一応、今の俺は貴族の令嬢だが男爵らしく、そこまで階級が高くないらしいのでこれでもドレスの数は少ないらしい。オーダーメイドのドレスは高いらしいからな。ひぇっ、このドレスどのくらいの価値なのだろう…。
そういえば俺、あまりこの世界のことを知らない気がする。5歳女児だからといってダラダラしすぎていたのかもしれない。
不安になり俺は執事に勉強を教えてくれないかと頼むと「そうですね。お嬢様はもうすぐ6歳になりますから家庭教師をつけましょう。」と快く返事をしてくれた。
ところで幼女になってから一度も父親に会っていないが、曰く奥様を亡くされたショックで会う気になれないらしい。育児放棄か…。まぁ、文化の違いもあるだろうと言葉を飲み込む。
だが、メイドたちが噂をするには新しく妻を娶るべく、女漁りをしているらしい。流石にそれはドン引いた。
俺は元21歳だし、周りの人達は優しいのであまり気にならないが、5歳女児にこの環境は良くないと思う。まるで、どこかの童話のヒロインみたいではないか。
病気がちの美少女、早くに母はなくなり、父は自分に興味がない…。今度は意地悪な継母か?と思ったら数日後本当に新しい継母が現れた。
商人の娘らしく、綺麗だがどこか品がない。俺が気に食わないらしく、会うと嫌味を言ってくる。きっと嫉妬だ。俺がこんなに可愛いからな。可愛さは正義いや罪である。
嫌味は鬱陶しかったが、メイドたちが可哀想にと隠れてお菓子をくれるようになった。商人から砂糖が安く買えるようになったらしい。この世界で初めて心から美味しいと思ったので、ついいっぱい食べてしまう。いっぱい食べても太らないから美少女はすごい。虫歯には気をつけないとなと思いながらクッキーを口いっぱいに頬張った。