一話
「あぁ、もし生まれ変わったら美少女になってちやほやされたいなぁ…」
年齢=彼女いない歴の俺は童貞のまま21年という短い人生に別れを告げた。死因は道路逆走老人による交通事故だ。流石、日本一交通事故の多い県。流石、高齢化社会。
何はともあれ、言ってみるものだ。気づいたら俺はピッチピチの5歳女児になっていた。ほっぺたぷにぷに、金髪碧眼、しかも可愛い。このまま大人になれば正統派ヒロインな美少女間違いなしである。
どうやら俺は日本ではなく中世ヨーロッパ風の?というかファンタジー風の貴族のお嬢様のようで、戸惑っているとあれやこれやと周りのメイドやら執事やらが世話をしてくれた。
そして無邪気に「ありがとう」と微笑むと「お嬢様、お可愛らしい!」とみんな喜んでちやほやしてくれた。流石っす、幼女先輩。
ありがとう神様!今まで信じてなかったけどこれからは信じるよ!これこそ俺の望んでいた世界!
お風呂に入るときは流石に罪悪感がしたが、俺は別に幼女趣味じゃないし、欲情などはしない。というか欲情なんかしてもこの体だ。どうすればいいのか正直わからない。
技術はそこまで発展していないようで水道とかはないが、欲しがれば召使が取ってきてくれ困ることはない。衛生観念が少し心配だが、まぁ、みんなこうやって生活しているんだ、大丈夫だろう。
お屋敷は信じられないほど広くて(子どもだからそう感じるのもあるが)ベッドもふわふわだった。
ご飯は正直そんなに美味しくなかったけれど、まぁそんな料理文化も発展してなそうだし仕方ない。そのうち慣れるだろう。
新しい世界に胸躍らせながら俺はゆったりと過ごしていたが、数日過ごしたあたりで違和感を感じた。俺が俺であると自覚したのはついこの前だが、これは転生なのだろうかそれともこの体を乗っ取ってしまったのだろうか。
思い出そうとしても5歳までの記憶はなく、乗っ取ってしまったのなら悪いなという気持ちになる。
悩んでいても仕方ないのでメイドにこの前までの自分の様子を聞くと「お母様がお亡くなりになってからショックでご病気にかかり、ご病気が治ってからも生気がなくただボーッと過ごしていたのです。お可哀想にショックで記憶まで無くされていたのですね。」と安心させるように抱きかかえてくれた。
悪い気分ではないが幼女も大変だったんだな、こんな小さいのにと悲しい気持ちになり、大泣きしてしまった。
俺の中身は21歳だというのに情けない。まるで記憶だけ持ったまま心が幼くなったみたいだ。
泣いていると、そういえば日本での両親はどうしているのかな、自分は親不孝だなという気持ちも湧いてきてどうしようもなく、その日は一日中泣いて過ごした。