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90頁目.ノエルと掃除と分担と……

 ヴァスカル王が見守る中、ノエルたち9人は円卓を囲み、夕方になるまで会議をしていた。

 ファーリの遺産を狙う災司(ファリス)の探し方、そして人質扱いされているヴァスカル中の国民の命をどのようにして奪おうとしているのかなど、様々なことを話し合った。

 しかし、9人全員の意見をまとめるためには時間が足りず、話は途中で終わってしまった。



「……仕方ない、今日はここまでにしよう。明日の昼にまたここに集まってもらうとして、それまでにアタシたち3人でこの集会のやり方とか考えておくよ」


「了解じゃ。見る限り他の者も異論はなさそうじゃし、ノエルたちに任せるぞ」


「あぁ、任された。じゃあ、今日は解散だ!」



 ノエルの声と共に大魔女たちは各々席を立ち、自分の部屋へ戻っていった。

 すると、サティーヌはノエルたち3人を引き留めた。



「ん? どうした、サティーヌ」


「すみません、私はフェブラに帰ります。明日までに帰ると伝えていましたし、ソワレさんに報告しに行かなければなりませんので」


「あら、ここでお別れなんて寂しいですわね……」


「お力になれず、申し訳ありません……。ですが、ノエルさんたちならきっとこの事件を解決できると信じています。成功をお祈りしていますね」


「今日は会えて嬉しかったよ。姉さんによろしく言っておいてくれ。『次会った時には絶対びっくりさせてやる』ってね」


「ええ、しかと伝えておきますね。それでは、また……」



 こうしてサティーヌはノエルたちと別れ、フェブラへと戻るのであった。

 1日目の大魔女集会はこうして幕を閉じた。



***



 ノエルたち3人は夕食を食べながら話をしていた。



「さて……どうしたもんかねぇ。こうも人数が多いと意見が飛び交いまくって話になりやしない……」


「そうですわね……。全員意見が違っていて多様性はあるのですけれど、ノエルがまとめきれていませんでしたわ。議事録でも取ってみましょうか?」


「うーん……。誰かが議事録を取ったとしても、結局のところ話をまとめるのはノエル様だし、1人だけ大変なのには変わりはなさそう……」


「そうだな……。意見を全てまとめることができたとしても、結論を出すのは別問題だ。そうなると……分担するのが得策か?」


「なるほど、人数を分けるということですわね。確かにそれなら話もまとまりやすいかもしれませんわ」


「片方はノエル様がまとめるとして、もう片方はどうします? どのように分担するかって問題もありますけど」



 ノエルは少し考え、魔導書に何か描きながらこう言った。



災司(ファリス)探索部隊と魔法研究部隊の2つに分けるとするなら……」


「ええと……? あぁ……なるほど、これなら問題ありませんわね」


「あたしも問題ないと思います! となると、あっちの代表は……」



 ノエルたちは役割の分担とそれぞれの部隊の仕事を話し合い、城へと戻るのであった。



***



 その次の日の昼。

 災司(ファリス)の予告時刻まであと4日。

 ノエルたち8人は円卓に集まった。

 ヴァスカル王が仕事で来ていないため、国王への伝言はクロネが担当することとなった。



「よし、みんな集まったな。始めようか」


「ん? 光の大魔女の代理がいないな? なあノエル、どこに行ったか知ってるか?」


「あぁ、彼女ならフェブラに帰ったよ。護衛魔道士の仕事もあるし、姉さんへの報告をしなきゃいけないらしい。それとも、ルフールは何か不満でもあるのかい?」


「いやいや、そんなつもりで言ったわけじゃないよ。彼女には彼女の仕事がある。代理ってだけで戦力として数えていたワタシの勘違いだ。気にしないでくれ」


「分かった。じゃあ、とりあえず昨日の話がまとまらなかった件について、解決策を考えてきた」


「おっ、流石はノエルっスね! それで、どうするっスか?」



 ノエルはカバンから昨日メモしていた魔導書のページを開いて見せた。



「こんな感じで4人ずつ、2つの部隊に分けたいと思う。アタシたちがもう振り分けてあるから、今から読み上げた順に、円卓のこっちとこっちに分かれてくれ」


「ノエルたちが決めたんなら文句はないわ。私たちはそれに従うだけだもの。まあ、議論にならないのは少し面白みに欠けるけど……」


「ロヴィアの考えは最もだ。お前たち、アタシが決めたからって意見を引っ込めるのだけはやめてくれよ? アタシたちは十人十色の魔女だ。意見がぶつかり合ってこそ魔法ってのは成長するものなんだから、遠慮はしないでくれ」



 ノエルが周りを見回すと、全員が頷いている。

 穏やかに笑ったノエルは、話を続けた。



「それじゃ、名前を読み上げるぞ。まずは災司(ファリス)探索部隊! サフィー、マリン、ロヴィア! そして、代表はアタシだ」


「いつもの3人と私ってわけね。どういう基準で決めたの?」


災司(ファリス)探索部隊は街での聞き込みが主な仕事だと考えて、聞き込みの経験が十分にある4人で編成してみた。あとはいつ接敵しても戦えるように、戦闘特化の大魔女を重点的に置いている」


「つまり、残った4人がもう片方の魔法研究部隊ということですね。ボクと師匠とエストさんと……あとルフールさんですか。代表はどなたなんです?」


「そりゃもちろんクロネさん……と言いたいところだが、クロネさんはアカデミーの仕事もあるだろう。だから、代表は……ルフール、頼めるかい?」


「ワタシがこの3人のまとめ役ね……。クセは強いけど、特殊魔法の使い手3人衆とその弟子ってのは中々にアツい編成だ。その仕事、引き受けよう!」



 ルフールはノエルとハイタッチして、円卓の反対側へと行った。



「ちなみにそっちの基準は、魔法の研究に没頭していた時間が長いことだ。あとは元々の自頭の良さと魔法についての知識量だね。まあ、アタシもそっちに行きたい気持ちはあるが……」


「こっちに来てもお前の仕事はないわ。ワシら4人の知識量であれば、そっちよりも早く事件を解決してやるわい!」


「お? だったら、勝負するかい? 負けた方は、勝った方の言うことを聞くっていうのでどうだ」


「乗った。ワシらの実力を知っておっても、なお勝負に挑むのであれば受けて立つぞ。まあ、要求はただ1つじゃが」


「うっ……急に寒気が……。だが……反対意見もないってことは、全員それでいいんだな?」



 ノエルを除く7人は同時に頷く。

 そうして、8人の大魔女たちは自分の実力を発揮するべく、絶対に勝つとそれぞれが決意したのであった。



「あぁ、そうだ。せっかくの円卓だが、話がごっちゃになったら困るから別の部屋で話し合おうと思う。それぞれの代表の部屋でいいか」


「げっ……。ワタシの部屋に集まるのか……?」


「ん? 何かまずいことでもあったか?」


「いや、その……部屋の掃除をさせて欲しいなー、なんて……」


「……空間魔法って、自由に部屋を作れたよな?」


「おい待て、ワタシの魔力を無駄遣いさせようとしてないか!?」



 ルフールに突きつけるように、ノエルは言った。



「お前はいつも、部屋を空間魔法で広げて使ってるから気づいていないだろうが、あの家の間取りであの物の量は異常だからな!? 掃除しようと思う前に空間を広げるような奴が、すぐに掃除を終えられるわけないだろう!」


「お前……さては、ワタシを舐めているな!? 旅行用の荷物の整理や掃除くらい、数分で終わるに決まっているだろう!」


「いいや、それはないね。お前はここに来てまだ3日しか経っていないはずだ。だが3日程度の宿泊で、普通は掃除しなきゃいけないくらい散らかったりしないんだよ! これはもはや掃除しない人間の行いと発言だ!」


「あー、もう面倒じゃ。今日はワシの部屋で話し合うとしよう。ルフールの部屋はあとで城のメイドに掃除させておくから、明日からはそこで話すとしようかの」


「はぁ……はぁ……は……ぁ? クロネさんの部屋の方が汚いんじゃないのか?」


「おい、ノエル!? お前、2日前にワシの綺麗な部屋を見たじゃろうが! ワシはちゃんと掃除できないの分かっとるから、メイドに頼んどるわ!」



 そんなやりとりをしていると、永遠に終わらない子供の煽り合いに飽きたのか、ルカは部屋を出ながら言った。



「ボクは先に師匠の部屋に行ってますよ。師匠も早く来てくださいね」


「あれ……? もしかしてワシ、ルカにガッカリされた?」


「終わらないことを察したんですわねぇ……。ほら、お子様ノエルも早く行きますわよ」


「誰がお子様だ、誰が。まあ、半分は冗談だ。2人にはこまめに部屋の掃除をしてもらうとして、それぞれ話し合おうか」


「ルカ〜! 待ってくれ〜!」



 クロネたちは自分の部屋へと走っていき、ノエルたちも自分たちの部屋へと行くのであった。

 なお、このやりとりを見ていたロヴィアは、しばらく頭を抱えていたという。



***



 災司(ファリス)探索部隊の集会所、第一客室にて。

 ノエルたちはマリンが淹れた紅茶を飲んでいた。



「わぁ……これ美味しいわね……」


「今、一瞬だけ額の辺りが光ってなかった……?」


「あぁ、味覚は共有されてないから、ロウィが美味しいって言葉に反応しちゃったみたいね。ロウィにもあとで飲ませてあげてよ」


「ええ、もちろんですわ」


「ありがと。じゃあ、話を始めましょうか」


「そうだな。まずはアタシたち、災司(ファリス)探索部隊の目的から確認しよう。アタシたちの目的は、ヴァスカルに潜んでいる……または当日に来るであろう災司(ファリス)たちの足取りを探ることだ」



 そう言って、ノエルはクロネから預かったヴァスカル王都の周辺地図を開いた。



「ヴァスカルって魔導士の人数自体があんまり多くないから、王都に集まってるのがほぼ全ての国民なんですっけ。だとすると、連中はほとんどの確率でこの王都に来る……んですよね?」


「あぁ、恐らくはそうだろう。だが、この王都に入る手段は限られている。1つは正門をくぐること。馬車や徒歩で来た人間は必ずここを通る決まりになっているし、検問所もあるから入国者はちゃんと記録されているらしい」


「他には何があるの? ……って、あぁ、鉄道か」


「その通り。もう1つは鉄道で駅から入国することだ。こっちも駅に検問所があるから問題はないと思うが……」


「問題は他の侵入経路があり得た場合、または元からヴァスカルの国民であった場合……ですわね。魔法であれば姿を隠して侵入可能ですし、また国民であれば疑われる余地がないでしょうね」


「それが一番面倒ね……。だけど、そんなのどうやって対策するっていうの?」


「それを考えるのがアタシたちの役割さ。それをまとめて解決できるような魔法を編み出すのが一番手っ取り早いわけだが……4日で完成できるかどうか……」



 ノエルたちは考えながら各々の魔導書を眺めている。



「エストさんの占いとかクロネさんの未来視でどうにかならないんですかね?」


「もう既にやったらしいが、ヘルフスの時みたいにモヤがかかって全く見えなかったらしい。恐らくは誰も知らない者(アンノウン)の魔法か何かだろうさ」


「厄介過ぎるわね……」


「あぁ、厄介過ぎる連中だとも。だから、とりあえずは聞き込みで情報を集めてみようと思ったわけさ」


「でも、あと4日しかないのよ? 4人だけで聞いて回っても、情報が足りないに決まってるわ」


「もちろん策はあるよ。何も考えずに聞き込みだけしようってのはアタシの性分に合わないからねぇ……!」



 そう言ったノエルは、とても楽しそうな目をしているのであった。

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