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47頁目.ノエルと尾行とバンダナと……

 3人は宿の近くにある広場で、1日前に買った魔具を紹介し合った後、休憩のために石段に座り込んでいた。

 時間はまだ昼前である。



「しかし、どうしたもんかねぇ……。現時点だとロウィの正体が仮定されただけで、どうしても国とか工房との関連性が見えてこない……」


「確かに……。実は獣人で、さらに魔女だからって、過去に何があったかまではわかりませんもんね」


「次の課題はロウィさんの過去を知ること……ですわね。ですが、どうやって調べますの?」


「人の過去を知る方法か……。一番手っ取り早いのは、ロウィのことを知っていてロウィに口止めされていない人間に聞くことだが……」


「そんな都合の良い人がいたら最初からその人に聞いてますわよ。とはいえ、彼女がこの国に来てから何があったのかを調べるというのは正しい判断ですわ」


「ま、それを調べる方法がないから困ってるんだけどな!」



 そう言って、ノエルとマリンは同時に溜息をついて肩を落とした。

 それを見たサフィアは2人に提案する。



「それならいっそ、ロウィさんに直接聞いちゃえば良いんじゃないですか?」


「いやあ、流石に今分かってる情報だけでぶつかりに行っても、過去話なんてしてくれないだろう」


「獣人化の薬で変身して別人に成り代わって仲間意識を芽生えさせて……というのも多少は考えましたが、薬は高いですし、そもそも彼女が過去を隠そうとしている時点で聞き出せるはずもありませんわね」


「それならしょうがないよね……。じゃあ、本当にこれからどうするんです?」


「う、うーん……。このままではどうしようも……って、お?」



 ノエルが顔を上げた瞬間、何かに気づく。



「あそこにいるの、ロウィじゃないか?」


「ん? あら、本当ですわ。どうやら1人のようですが」


「でもこの辺りは商店もないし、作業員の方々が住む住宅街は下層だし、何の用なんでしょう?」



 ロウィは1人で宿の周りをウロウロしていたが、しばらくして裏路地に入っていった。



「ちょうど良い。せっかくだし、尾行するぞ」


「また危険な橋を渡ろうとしてますわねぇ? ま、尾行には賛成ですが」


「ロウィさん、耳良さそうですから静かに行きましょうか。あたしの魔法であたしたちの周りだけ音を消しますね」


「それ、あいつの声も聞こえなくなるんじゃないか?」


「いえ、あたしたちが出す空気振動を弱めるだけなので、ある程度の距離から来る音ならバッチリ聞こえるはずです!」


「ほう、それなら見せてもらおうか」



 サフィアは魔導書を取り出し、ペラペラとページをめくる。

 そして小さな声で唱えた。



「……『弱まる吐息(サイレント・ブレス)』っ」


「………………」


「………………」



 ノエルとマリンは口をパクパクさせているが、声は全く届いていない。

 ノエルはラウディで覚えた手振りで、『中止』の指示をサフィアに出した。

 すると、サフィアは急いで魔法を解いた。



「これ、思ったより不便だぞ?」


「筆談にするか身振り手振りにするか、先に決めておけばよかったですね……」


「とはいえ、いつの間にこんな魔法を作っていたんですの? いつも一緒の時間に寝てますわよね?」


「移動時間とかに考えて魔導書にまとめてるの。ノエル様みたいに徹夜で魔法作ったりはしてないから安心して?」


「それなら良かったですわ。って、そういえば急いで追わないとですわね!」


「お前が話題を振ったんだろうが! 仕方ない、色々不便だから筆談でいくぞ!」



 サフィアが魔法を唱え、3人は魔導書を持ってロウィが入っていった狭い裏路地に入った。

 しかし、近くにロウィはおらず、目撃者を探そうにも周りには人影が一切ない。

 そのまま3人は固まって探索を始めることにした。



『とりあえず右から探しましょうか』


『了解。サフィーから離れすぎるなよ?』


『分かっていますわ』



 しばらく3人が裏路地を進んでいると、ロウィの声が聞こえてきた。

 ノエルはサフィアから離れすぎない程度に、ロウィの声が聞こえた方を覗いた。

 すると、ロウィがノエルたちに背中を向けたまま、ウロウロとしている様子がノエルの目に映った。



『あいつ何してるんだ?』


『手に何か持っていますわね』


『何て言ってるか聞いてみましょうよ』



 3人は十字路に身を潜めながら、ロウィの声に耳を澄ませた。



「うーん、流石にここにカケラがあるわけないわよね……。あの子がこんな危険な裏路地に来るわけないもの……」



 ロウィは手に持った宝石のようなものをカバンにしまい、立ち止まって言った。



「今日のカケラ探しはここまでにしようかしら。いくらロウィを目覚めさせるためとはいえ、私が無茶するわけにはいかないし」



 ロウィは頭のバンダナを握りしめ、小さな声でこう続けた。



「でもあと少し……。あと少しでこの国に復讐できる……。()()()()()()()、この国に……!」



 ロウィの、彼女の恨みの篭ったその声に、ノエルたちはゾッとした。

 小さな声だが、その中に悲しみと怒りとが込められているのが3人には分かった。

 そんな彼女の姿を見て、ノエルはこんなことを思った。



「(そういえば……イースが死んでしばらくはアタシも国を恨んだっけ。何となくあいつの気持ちが分かるな……)」



 ノエルは辛い顔をしつつ、彼女の方を見る。

 そしてマリンたちに何も言わぬまま、ノエルはゆっくり前へと歩いていったのだった。



「(ノエル様!? それ以上は魔法の範囲外です!)」


「(何をするつもりですの! やめなさい!)」



 2人はノエルの腕を引っ張って止めようとするが、ノエルは制止を聞かずに彼女の後ろに着く。



「よう、ロウィ。こんなところで何してる?」


「ひゃあっ!? ノ、ノエル!? 何でこんなところに!?」


「なに、お前が不審な動きをしていたのを見かけて尾行していただけさ」


「あ、あぁ、しまった……。さっきのを見られちゃってたってわけね……」


「見ていたし聞いてしまったよ。アタシで良ければ話を聞くぞ?」


「わた……アタイは、あんたたちを巻き込むつもりはないよ!」



 ロヴィアの拒絶を無視して、ノエルは話を続けた。



「復讐とか言っていたな? それに、殺された人間を目覚めさせるだって? ロウィ、いや……ロヴィア!」


「……っ!? どうしてその名前を知って……」


「お前は、一体何をしようとしている……?」


「…………」



 彼女……ロヴィアは黙りこむ。

 そして、しばらくしてこう言った。



「今日の昼過ぎ、私の家に来てちょうだい。そこなら誰にも話を聞かれずに済むから」


「分かった。昼食を取ったら3人で行くよ」


「ああ、そうだ。工房に行かずに直接家の前に来てくれる? できればみんなに心配かけたくないしね」


「了解した。それじゃ、お先に失礼するよ」



 ノエルは、心配そうな顔をしているマリンたちの方へと戻っていった。

 そのまま3人は昼食を取るために近くの酒場へと向かった。



***



 食後間もなく。



「もう、これだからノエルといると心臓に悪いのですわ!」


「おお、さっきまで黙っていたから怒ってないのかと」


「怒っているに決まっているでしょう! 先程まではロウィさんもいましたし、人前で怒るわけにもいかなかったから黙っていただけですわよ!」


「流石にあそこで話しかけに行くなんて思わなかったから、あたしもビックリしましたよ!」


「だがおかげで進展しただろう?」


「だーかーらー! 1人で突っ走らないでと言いましたわよね! 結果オーライでは済まされないこともあり得るんですから!」



 マリンは憤慨しつつ机を叩いている。



「でも、今回はうまくいく確信があった。そうですよね、ノエル様?」


「おっ、よく分かったな?」


「だってロウィさんの所に行く時、何か自身のある目をしてましたから。直前までは辛い顔してましたけど」


「おや、それは無意識だったよ。ただ、復讐したいと企んでいるのをアタシたちに聞かれた時点で、アタシたちの方が上手に出られるのは間違いなかった」


「とはいえ、せめて何か一言言ってから行動してくださいな。わたくし、本当にドキッとしたんですから……」


「悪かったって。あとでいくらでも魔法の実験手伝うから、それで許して欲しい」


「それなら仕方ありませんわねぇ? まあ、今に始まったことではないので、半分許して半分諦めていますが……」



 マリンは半分喜びつつ、少し首を垂れたのだった。



***



 それからしばらくして、3人はロヴィアの家の前に来ていた。

 着くと同時に玄関のドアが開き、3人はロヴィアの家に入った。



「先にタンゴは引っ込めといたよ。狭いし。じゃあ、お茶準備するから前みたく座っててー」


「ご丁寧にどうも」



 ノエルたちは前と同じように机を囲んで椅子に座った。

 ロヴィアはカップを4つ出して机の上に置き、紅茶を注いだ。

 そしてティーポットを置いて、ロヴィアも椅子に座った。



「それじゃ、アタイの話を始める前に。先にあんたたちが知ってるアタイの情報から話してもらおうか?」


「いや、その前にもう1つ要望がある」


「ふーん? 一応聞こうか」


「ここではロウィではなくロヴィアとして話してくれ。アタシたちはロヴィアと話しに来たんだからな」


「そう……か。確かに礼儀ってのがあるもんね。分かったわ」



 ロヴィアはそう言って、頭のバンダナの結び目を解き、頭から外す。

 その時、ノエルたちはロヴィアを見て固まった。



「な……なぁっ……!?」


「その頭についてるのって、もしかして……」


「猫の耳ですわー!?」



 ロヴィアの頭の上には、人間の耳とは別に、獣の耳らしきものが乗っているのであった。

 ちょうど同日にノエルが猫の獣人になったこともあり、3人はそれが猫の耳であることにすぐ気づいた。



「隠しててごめんなさい。実は私、獣人で……」


「それは知ってる! だが獣人ってのは顔が獣で、体に毛皮を持つはずだ!」


「何で知ってるの!? まさかそこまで調べてたわけ!?」


「それはあとで話す! それよりも、どうして獣人と人間、両方の特性を持ってるんだ!?」


「それを話すには私の過去の話をする必要があるの! だから先にあんたたちがどこまで知ってるのかを話して! 早急に!」



 ノエルたちはロヴィアの必死さに圧され、自分たちがこれまで調べてきたロヴィアのことについてを話すのであった。

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