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43頁目.ノエルと嘘と靴紐と……

 その次の日の朝。

 ロウィを蘇生魔法作りに参加させるべく、ノエルたちはロウィにこれまでの話を聞かせようとロウィ魔導工房にやってきた。

 ノエルは扉を開けるなり、ロウィを呼ぶ。



「おーい、ロウィはいるかー?」



 すると、近くにいた作業員がその声に気づいた。



「お、昨日のお客さんじゃないですか。姐さーん! お客さんですよー!」


「はいはーい! ちょっと待たしといてー!」


「……だそうです。ちょいとお待ちくださいやせ」


「ありがとう。それじゃこの辺で待たせてもらうよ」



 数分後、工房の奥からロウィがやってきた。



「おっ、ノエルじゃん。今日はどうかしたの?」


「ちょっと話がしたくてな。魔女として色々聞きたいことがあるんだ」


「魔女として……か。興味はあるけど、ゴメン。仕事中は持ち場を離れるわけにはいかないから……」


「そうか……。それなら仕事が終わってからはどうだ?」


「ゴメン、それも無理。ゴーレムたちの世話しなきゃだから……」


「そ、そうか……それなら仕方が──」


「ちょっと待ってくださいまし?」



 ノエルが引こうとした瞬間、マリンが割り込んだ。



「どうした、マリン?」


「ロウィさん、あなた……昨日仕事中に思いっきり外に抜け出したり、家に帰ったりしていましたわよね?」


「うっ……」


「そういえば! っていうかゴーレムって魔導結晶から作るんなら、世話なんてする必要ないよね? 結晶に魔力あげるだけで良いんじゃないの?」


「ううっ…………」


「ロウィ……。もしかしてだけど、アタシたちを避けてないかい……?」


「うぐっ…………」



 ロウィはしばらく固まり、それから諦めたように首を振った。



「はぁ……。昨日の推理の時点で騙せないって気づくべきだったか……」


「やっぱり嘘だったってわけか。まあ、推理について触れたのはお前の方だったが」


「嘘をついたことについてはゴメン! お詫びと言ってはなんだけど、話は聞いてあげる。でも、ひとつ条件を付けてもいいかな?」


「虫のいい話だが、一応聞こうか?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「何か事情があるんだな。そういうことなら分かったよ。元からアタシたちの話を聞いてもらうつもりだったし」


「そうしてくれると助かるよ。それじゃ、ゴーレムたちに指示を出してくるからアタイの家の前で待ってて〜」


「分かった。待ってるよ」



 ノエルたち3人は家の前でロウィを待ち、数分後にロウィと合流して家の中に入るのだった。



***



 ノエルは数時間かけて、いつものように自分たちの過去の話と、蘇生魔法作りについての話をした。

 ロウィは途中途中で工房の様子を見に行きはしたものの、ノエルたちの話を最後まで聞いてくれたのだった。

 そして昼過ぎになった。



「……とまあ、ここまでがアタシたちの旅の話になる。長くなってすまないね」


「なるほど、ここまで聞き応えのある話を聞いたのは久しぶりだよ。それでもって、アタイに蘇生魔法作りの手伝いをして欲しい、というわけだね?」


「そういうことさ。今まで土魔法をここまで巧みに操れる魔女は見たことが無かった。お前の才能をアタシたちに貸して欲しいんだ!」



 ロウィは目を瞑り、しばらくして口を開いた。



「残念だけど、アタイはあんたたちに手を貸すことはできない」


「それは一体どうしてだい?」


「決まってる。安全な蘇生魔法を生み出すなんて、()()()()()()()()()だ!」


「そ、それは……!」


「生命は一度限りの大事なもの。だからこそ人生は輝かしいものだし、生命の在り方だけは絶対に変えちゃいけないんだ!!」



 ロウィの大きな声が部屋中に響いた。

 そして静まり返った部屋の中、ロウィは肩で息をしている。



「……だから、アタイは絶対に蘇生魔法作りなんかに手を貸さない。悪いけど、長い話を聞いていたのはただの興味だ」


「そう……か。嫌な話を聞かせて悪かったね……」


「いや、急に怒鳴ったりしてこっちこそゴメン……。でも、あんたたちの申し出は受け入れられないから……」



 4人の間に気まずい空気が流れた後、ノエルは席を立って荷物を持った。



「それじゃ、アタシたちの用は終わったし、これで失礼するよ」


「あ、うん……。今日は面白い話を聞かせてくれてありがとう。蘇生魔法の完成は正直祈れないけど、魔女としての活動は応援してるから」


「こちらこそ、工房の繁栄を祈っていますわ」


「じゃあまた会う日まで〜!」



 3人はロウィの家から出て、宿に戻っていった。

 こうしてノエルたち3人はロウィの勧誘に失敗したのであった。



***



 宿に戻ってきて間も無く、ノエルは一言呟いた。



「……変だ」


「え? 何がですか?」


「帰ってきて早々、落ち込むかと思えば……。どうかしましたの?」


「いや、何か引っかかってるんだよ」


「靴紐が解けているんじゃありません? 足元には注意しなさいな」


「違うそうじゃない。ロウィのことだよ」



 そう言いながら、ノエルは靴紐を解いて結び直す。



「ロウィさんがおかしいってことですの? ああいう考えの人は今までもいましたわよね?」


「あいつの考えが変って言ってるわけじゃないんだ。だけど、何か違和感があるというか……」


「見た目とかですか? 確かにバンダナがやけに大きいなーとは思いましたけど」


「見た目……でもないな。もっと大きな違和感がこう……何というか……」


「あぁもう、分かりましたわよ。つまりはまだまだ探索続行ということですわね」


「ま、そういうことだ」



 サフィアはしばらく頷いた後、突然驚いた表情をして言った。



「えぇ!? 断られたばっかりなのにまだ諦めてないんですか!?」


「諦めが悪いのはいつものことでしょう? それに今回に関しては、ノエルの勘に任せる方が良い気がしますの」


「それはお姉ちゃんの勘?」


「ええ、そうですわ」


「何が勘だ。マリン、お前だってロウィについて知りたいと思ってるんだろ?」


「あ、バレてました? まぁ、あんなに実力があるのに自分を隠したがる魔女ほど、気になるものはありませんものね!」



 ワクワクしているマリンを見て、サフィアは1つ溜息をついた。



「はぁ……分かりました。明日も引き続き、工房にお邪魔するってことで良いんですね?」


「いや、できればあいつに知られずにあいつのことを知りたいな」


「なるほどなるほど、工房以外でロウィさんと関わりがありそうな場所となると、次目指すべき場所は……」


「そう、ノーリスの王城だ! ノーリスの国王ならロウィのことを知っているに違いない!」


「でもロウィさんのことを尋ねたら、その後で本人にバレません?」


「だったら口止め料を払うさ。偶然にもこんな所に大金があるしな!」



 そう言ってノエルはルフールから渡された財布を取り出す。



「本当はそんなことにお金を使いたくは無いのですが……」


「お姉ちゃんまで……って、ええ!? 本当にお金なんかで国王様を口止めできるんですか!?」


「国王の裁量にもよるが、自分のために揉み消しをするような国王なら問題ないだろうさ」


「問題は、国王がどれくらいロウィさんのことを知っているか、ですわね。外から来た魔女である上に、自分のことを詮索させないような人ですし」


「そして揉み消しをした時点で国王はロウィに借りがある。知っていたとしてもどこまで教えてくれるか、だな……」


「それでも聞きに行くんですよね?」


「もちろんだとも」



 そう言って、ノエルはベッドに置いたカバンを持ち直す。



「善は急げだ。まだ昼間だし、今日のうちに面会しに行くぞ」


「少しは休めると思ったのですが……。仕方ありません、行きましょうか」


「はーい!」



 ノエルたちは最下層・住宅街の最奥にあるノーリスの王城に行くことにしたのだった。



***



 ノーリスの王城は他の国の王城とは違い、ひとつの15階建の建物だけで構築されている。

 国王がいるのはその最上階。

 ノエルたちは門番に許可をもらい、エレベーターで国王の間の前まで来ていた。



「いいか、あくまでロウィについて聞くだけだからな。揉み消し云々の話だけは絶対にするんじゃないぞ」


「分かってますわ」


「もちろんです。そんなこと言うほどあたしも子供じゃないので!」


「よし、じゃあ行くぞ」



 ノエルが扉を叩くと、扉が開かれ、そこには国王と1人の大臣がいた。

 国王は玉座……のような感じの黒い椅子に座っており、目の前には机と、その上に大量の書類が積み上げられていた。

 ノエルたちは跪いたが、すぐに椅子が用意され、3人はそれに腰掛けた。



「さて、何の用だね?」


「お忙しい中、大変申し訳ありません。アタシたちはこの国の外から来た魔女です。今日はロウィという魔女についてお聞きしようと思い、参りました」


「ロウィか。その言い方はロウィ自身と古い知り合いではないのだな?」


「はい、この国に来て知り合いました。ですが彼女は自分のことをほとんど教えてくれなかったため、彼女を知っている人に話を聞こうと思いまして。アタシは彼女の魔法に興味があるんです」


「そういうことなら分かった。ロウィについて私が知っていることを教えよう。とはいえ、お前たちが知っている情報の確認になるとは思うがね」


「そうだったとしても助かります。確証を得られるのは良いことですから」



 そうしてノーリスの国王は、ロウィがどこか外の国から来たこと、ある日ゴーレムを国に差し出したこと、といったノエルたちの知っているままの情報を話した。

 そして──。



「それを私は、私自身の顔を守るために揉み消したのだ」


「「「ええっ!?」」」



 国王はロウィについての揉み消しを、ノエルたちの前で自白したのだった。

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