18頁目.ノエルと学園と最強と……
クロネの部屋の掃除を済ませたノエルたち3人は、自己紹介をした後にクロネの説教を受けることになった。
「なんじゃ、大陸中の優秀な魔女を集めて帰ってくるとか言っておったのに、たったの2人。しかも1人は子どもときた!」
「仕方ないじゃないか。大陸がクソみたいに広すぎるんだ! それとこの子はれっきとしたアタシの弟子だぞ!」
クロネは驚く。
「お前に弟子……? いやいや、まさか。冗談はよしとくれ?」
「ん? アタシはてっきりクロネさんがセプタ行きを勧めたのは、この子に会わせるためだったんだと思ってたんだが……違うのかい?」
「違うわ。なんでワシがそんな未熟な魔女なんて紹介するんじゃ。ワシが紹介したかったのは古い友人のアクアリスじゃよ」
マリンはその名前に反応した。
「あら、その方なら亡くなりましたわよ。とても優しい魔女でしたわ」
「えっ……あいつ亡くなったの……? ワシ、葬儀に呼ばれてない……」
「お? マリンの知ってる人かい?」
「知ってるも何も、アクアリスというのはわたくし達のおばあさまの名前ですわ。あと、葬儀は親族のみで行いましたので、いつかお墓参りに来てくださいな、クロネさん」
「え、えと、ちょっと待っとくれ……? こいつらがアクアリスの孫娘で……その片割れがノエルの弟子で……うーん?」
クロネは頭を抱え、話の整理をつけている。
「って、待て待て。アタシも知らない情報をさらっと流すんじゃない。お前たちのおばあさまとクロネさんが知り合いだった……?」
「あぁ、そういうことになるんじゃろうな。先ほどは失礼した。アクアリスの孫娘たちよ」
クロネは整理がついたようで、一礼して詫びを入れる。
マリンとサフィアもそれに礼を返したのだった。
「それで、集まったのかの? お前の探す魔女たちは」
「ルフール。そしてこの2人。以上だ」
「たったの3人じゃと!? この8年間、本当に何をしとったんじゃお前は……」
「行った国にある街を全部回っていた。だから3人も見つかった、と思ってるよ」
「ぜ……全部!? そんな途方も無いことをしておったら時間がどんなにあっても足りんじゃろう!?」
「仕方ないだろう? アタシには他の魔女との繋がりがほとんどないんだから。ま、クロネさんはどうか知らないけど」
クロネは納得のいったような顔をし、平静を取り戻した。
「つまり、お前が帰ってきた理由は……ワシに魔女を紹介してもらうため、じゃな?」
「相変わらず話が早くて助かるよ。さすがは時魔法の使い手だな」
「褒めても何も出んし、そもそも話の内容にまで未来予知は使っとらんわ。母親を舐めるでないぞ?」
そして2人は高らかに大笑いをするのであった。
「(お姉ちゃんお姉ちゃん、やっぱりこの2人似た者親子だよ!)」
「(ええ、しかも変なところだけが似ていますわね……。それに、やはり少しソワレさんの面影も……)」
笑い終わった後、ノエルは話を続ける。
「それで、今でも生きてそうな優秀な魔女は知り合いにいないのかい?」
「んー、おらんわけでもないというか……。おるにはおるんじゃが……」
「何だか煮え切らない返事だな。とにかくいるんだな?」
「まぁ、いる。じゃが、今どこにいるかを探すのが大変なんじゃよ。卒業して3年も経っておるからの……」
ノエルはピクリと反応した。
「卒業……? この国に学校なんてあったか……? それに、その言い方だとまるでクロネさんがそこの関係者であるかのような……」
その時だった。
突然、部屋の扉が叩かれる音がし、扉の外から声が聞こえてくる。
「失礼します! アカデミーの生徒がまたやんちゃを! 私たちではどうにも止められなくて……!」
「またか……。分かった、今すぐ行く」
「ありがとうございます、学長!」
扉の向こうにいた人物はパタパタと走り去って行った。
「さて、その魔女を探してやる代わりに、お前たちにひとつ手伝ってもらうとするかの!」
「ちょっ、今、確かにアカデミーって……。それに、学長……!?」
クロネはクローゼットから紋章が刻まれたローブを取り出し、羽織る。
そしてローブをバサッと棚引かせ、ドヤ顔をしながらこう言った。
「その通り! このワシこそがこの国が誇る魔導士育成所『魔導士学園』の創設者にして初代学長、クロネじゃ!」
「「「えええええ!?」」」
***
アカデミーへの移動中、クロネはノエルたちに説明をした。
「まず、『魔導士学園』というのは、その名の通り魔導士を育成するための学校じゃ」
「それは何となく分かった。問題は、なぜクロネさんがその創設者だとか学長だとかになっているのか、だ!」
「……寂しかったから」
クロネはボソッとこう呟いた。
「は……?」
「じゃから……家に誰もいなくて寂しかったから……」
ノエルはピタッと立ち止まりお腹を押さえる。
「ふっ……ふっははははは!」
「なっ、何で笑うんじゃ! 深刻な問題だったんじゃぞ!」
「い、いやぁ、クロネさんにもそんな可愛いところがあったとは。意外な一面を見られたよ」
「わ、忘れろー!!」
クロネはポカポカとノエルの胸元を叩く。
「ハッ! そ、そうじゃ、ワシは単に暇だっただけなんじゃ! 暇だったから誰かに魔法を教えたくなって、国王に掛け合っただけなんじゃー!」
「はいはい、そういうことにしといてやるよ。それで、アカデミーまであとどれくらいだ?」
「話を聞く気は無いんじゃな……。アカデミーまではそろそろ……というかもう見えておるじゃろう?」
「おお……立派な建物じゃないか……!」
ヴァスカル王都の西寄りに、その巨大な建物はあった。
下手すると王城と同じかそれ以上の高さはありそうな巨塔と、その周りに校舎らしき石造りの建物が並んでいる。
そしてその入り口の鉄格子の門を通り、4人はアカデミーの中に入った。
「それで……わたくしたちに手伝って欲しいことというのは……?」
「見る方が早いと思うぞ。ほれ、あそこ」
「あそこ……?」
クロネは頭を抱えながら指を指す。
「放せ〜! 放せってば!」
校舎の入り口付近で、1人の10歳ほどの少年が教師と思われる大人たちに捕まっている。
その少年はクロネに気づき、暴れながら呪文を唱え始める。
ノエルはその呪文に聞き覚えがあった。
その魔法が何か気づいた瞬間、ノエル少年に向かって猛ダッシュしていった。
「このバカ野郎! 上級魔法なんて子どもが使えるかぁぁ!」
そしてその勢いのまま、ノエルはその少年を思いっきり蹴飛ばしたのであった。
***
クロネによると、ノエルに蹴られて気絶しているこの少年はアカデミー1の問題児で、授業があるごとに暴れ、逃げ出すのだという。
名前は、ジュンと言うらしい。
「何でそんな奴がアカデミーに……?」
「こいつ、将来は立派な魔法使いになりたいとほざいとるんじゃよ。『オレなら絶対にどんな魔女よりも強い魔法使いになれる!』とな」
「へえ、このガキ、生意気なこと言うじゃないか」
するとジュンが脇腹をさすりながら起き上がる。
「いたたた……な、何だったんだよ、さっきの……」
「おや、目が覚めたのか。意外と頑丈だねぇ」
「あぁぁ! さっきオレを蹴り飛ばしたクソ女!」
「元気ならそれで何よりだ。使えもしない魔法を使おうとした大バカ野郎」
「誰がバカだ! オレはいつしか最強の魔法使いになる男だぞ!」
「だからバカだと言ってんだよ。お前は今のままじゃ最強になんてなれやしない!」
ノエルはジュンを鋭い眼光で見下す。
クロネは嬉しそうな顔をしながら2人を見ている。
「おぉ、こりゃ仕事が早いねぇ、ノエル」
「え? あ、そうだった。アタシたちが手伝うことって結局何なんだ?」
「そいつ」
「「「はい……?」」」
「だから、そいつの更生じゃ。お前たちの仕事」
ノエルたち3人は顔を見合わせ、首を傾げ、ジュンを見下ろした。
そして、3人とジュンは叫ぶのであった
「「「「ええええええええ!?」」」」




