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左官屋
記憶を取り戻してから2年の月日が経った。ボクは相変わらず壁を塗っている。なぜならそこにひび割れた壁があるからだ。
この世界の・・・というかこの村の壁は土壁だ。日本でよくあった粘土と藁を混ぜ合わせたものを竹を編んだ壁に塗りつけるだけの簡単なものだ。補修が楽で熱を通しづらい古式縁の伝統建築だ。
その簡易さ故、雨季や乾季にはひび割れたりして、季節の変わり目毎にこまめな補修が必要となる。おかげでこの手の仕事には事欠かない。お駄賃程度の収入にしかならないけどね。
いつもの様に粘土を混ぜ合わせながら、記憶を取り戻したあの日のことを思い出す。
あの世界のこと、この世界のこと、そしてボクが女神からもらった祝福のことを。
健康な体、この世界で生きるための知識、そして魔法。
ボクは魔法を使えるのだ!
だが魔法の使い方は知らない。