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作州浪人  作者: 邑埼栞
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第十話 乱闘じゃー! 祭りじゃー!




 よし、死ぬまで暴れてやろうじゃねえか!!



 と俺が決断しそうになった。


 そのとき。



「おのれ徳川の犬め! 卑怯者が! 一人相手に見てられん!

 我こそは小西摂津守家臣、木村兵庫! 義によって助太刀いたす!」

「同じく、石田治部少輔家臣、中田八平、助太刀いたす!」

「新免の倅! 諦めるな! 同じく宇喜田中納言家臣、北川丹山!」

「大谷刑部が臣、本平源次、加勢致す!」

「我こそは……(以下多数



 なんと周囲から、わらわらと凄い勢いで。


 関ヶ原で負けた側の旧臣たちが湧いて来た。


 小西行長、石田三成、宇喜田秀家、大谷吉嗣……その他多数の旧臣。



 あっという間に形勢逆転。


 柳生さんと、伏見奉行所の手勢は。


 関ヶ原の落ち武者連合によって周囲をぐるりと包囲される。




 まーねー


 こういう武装浪人どもの問題は。


 江戸時代初期になってもまだ解決せず。


 徳川将軍も、五代綱吉くらいになってもまだ。


 暴れる浪人どもへの対策に頭を悩ませていたくらいだから。



 関ヶ原が終わったばかりの今では。


 特に近畿地方では、西軍に属していた浪人が大量に。


 あちこちに潜んでいて当然なのである。


 




 しかしこれどうしたもんだろう。



 徳川方、柳生さん、および伏見奉行所の手勢、十数名。


 豊臣方、俺こと宮本武蔵、および西軍落ち武者連合、二十名くらい。


 これならまあ勝てるがしかし。



 と、思ってるうちに。



「双方動くな! 京都所司代、板倉勝重様の手勢である!」



 って、向こう側に増援が。


 おい伏見から京都は結構遠いだろう。そんなすぐに来れるような距離ではないだろうに。なんか偶然、伏見に来ていた所司代の手勢か。



 人数は二十名くらいだが武装が違う。


 こっちの浪人連合は基本、手持ちの刀のみなのに。


 向こうは、また槍とか弓矢とかきっちり揃えてきてるし。


 うわ鉄砲も何丁かあるみたいだぞ。




 これで形勢逆転したかと思いきや。



「うぬ、徳川めー! 我が物顔で偉そうに! 

 それがし、長宗我部宮内少輔様家臣……」

「安国寺住職僧正にお仕えしており申した……」

「宇喜田の者として加勢しないわけにはいくまい……」



 こっちにも次から次に味方が現れる。



 結局、徳川方も増えて30~40名くらいになったが。


 その周りを浪人連合は100名近くで取り囲む状態に。




 これどうしたもんかね。


 どうやったら収拾付くのか。


 この人数でやりあったら、もう、市街戦だぜ。


 ケンカのレベルを超えて、もはや戦争だ。




 どうしたもんかー……


 って


 あ



 俺に槍を向けて包囲してた連中のうち


 一人が、周囲に気を取られて目をそらして



 隙だ


 隙を見たら


 動いてしまった、反射的に



 跳びこんで、そいつの持ってる槍を思い切り払います


 払う方向は、柳生さんの方に


 俺と柳生さんの間に槍が流れ、柳生さんがこっちにすぐ飛び込んで来れない状態



 その隙に、まず目の前の伏見奉行所所属の武士の頭を木刀で


 こう、ぐしゃっと


 うーん、簡単に出来てしまう俺の力がちょっと怖い



「お、おのれー!」

「やりよったなー!」

「ええい! 討ち取れぃ!」


「なにをー負けるかー!」

「人数は勝ってるぞ、押し包んでしまえ!」

「宮本殿に続けー!!」



 大乱戦が始まってしまった。


 少し後悔している、が。


 まあ後のことは後で考えよう。



 今は今を生き残ることだけを。


 警戒するべきは、まず鉄砲、弓矢、そして柳生さんだ。


 敵の体を盾にして、飛び道具で狙われないように。


 柳生さんがこっちに接近できないように……





※多数相手の時


 四方から来られても、こっちはその端を狙って追い回す感じで。


 後手に廻るな、こっちから動き回って追い回すのだ。


 一撃、剣を振って敵を倒せば、その剣を返す動きで自然に次のやつを打て。


 全体を見ながらそれも考えながら動け。


 敵が、敵同士、互いの体が邪魔になってこちらに一時にかかってこれないように。


 位置関係を把握して、上手く位置取りするのがコツ。


 これを、「敵を魚つなぎに追う」という。



 かといって位置取りうまくしようとして待ちの姿勢になってはダメだ。


 少しの崩れでもその崩れにつけこみ積極的に攻めろ。


 とにかくこっちから敵を追い回す姿勢を崩してはならない。



 宮本武蔵著 五輪の書より(抜粋意訳





 隙があるやつを容赦なく打つ。


 こっちに敵の気が向けば、敵同士、うまく連携できない位置に動き。


 動くと同時にまず目の前のやつを強引に打ち倒す。


 多対一の状況を作らない。


 常に一対一になるように状況を操作する。



 俺が敵の槍持ちを一人倒すごとに。


 こっちの浪人の誰かが槍をゲット、戦力強化。


 十人ばかり倒したところで、もう大丈夫かなと思った、ら。



 柳生さんが獅子奮迅の大暴れ。


 すげえ、一人で浪人を二十人くらい切り捨てている。


 さすが史実で完全武装の鎧武者を十八人斬りした柳生五郎右衛門。




 伏見奉行所の手勢も、京都所司代の手勢も。


 下っ端と小頭くらいの人しかいなかったようで。


 乱戦になると自然に、一番頼りになる人中心にまとまって来た。


 柳生さんが中心となり全体の指揮まで始める。



 こっちも自然に俺中心となり、まとまって来た。


 人数はこちらが優勢。


 しかしなー



 やはりこっちは基本、懐も寒く、腹を減らしてビクビクしながら流浪してる落ち武者であり。


 向こうはきっちり食ってるし武装もちゃんとあるし、何より、きちんと仕官している武士なので、死んでも退けない。逃げたりとか、卑怯未練な振る舞いをすれば良くても解雇、悪くすれば切腹。やはり根性の座り方が違うのだ。


 こっちの浪人連合は、ちょっと形勢悪くなったらバラバラに逃げ出すだろし。



 こういうときは頭を潰さないと片付かない。



 なるほど結局最初に戻ったか。



 柳生さんを倒さんことには、ラチがあかんな。






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