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『小説豆知識』《江戸時代の武士の階級・家格》について

作者: 竹千代

今回は《江戸時代の武士の階級・家格》について説明致します。武士のヒエラルキーを様々な藩の例を元に比較してみました。それぞれの藩の特徴が表れていることにも注目するとより楽しくなります。

それでは、お楽しみ下さい。

江戸時代の武士には、《階級・家格》がそんざいしました。現代の会社のように役職の上下関係があるのはもちろん、多くの場合、どの役職に就くのかを《家格(かかく)》という家柄で決めていました。年功序列もありましたが、それ以上に出身の家柄である《家格》が重んじられたのが江戸時代の特徴です。今回はそんな武士の階級社会について説明致します。


最初に、将軍から見た江戸時代の武士の種類を分類します。


◎将軍

◎大名→一万石以上の武家

◆親藩→御三家(家康の分家子孫 尾張・紀伊・水戸)、御三卿(吉宗の分家子孫 田安・清水・一橋)、その他 御家門

◆譜代→関ヶ原の戦い以前に徳川氏に従属していた大名及び旗本から大名となった家→幕府の役職(大名役)に就くことが出来るのは譜代のみ

◆外様→関ヶ原の戦い以後に徳川氏に従属した大名

〇旗本→将軍の直参(じきさん)で一万石未満のうち御目見得(おめみえ)以上→三河譜代、遠州譜代、駿河譜代、甲州譜代、信州譜代、関東譜代等に分類される。

〇御家人→御目見得以下→譜代(ふだい)二半場(にはんば)抱席(かかえせき)の序列がある。


陪臣(ばいしん)→大名や旗本の家臣



次に、幕府の役職の役高を見てみます。役高とは、吉宗が家格の低い旗本を町奉行等の要職に就けるために「足高(たしだか)の制」を定めた際に、役職の石高を決めました。ここではそれを紹介します。


5000石→留守居(るすい)大番頭(おおばんがしら)側衆(そばしゅう)

4000石→書院(しょいん)番頭、小姓組(こしょうぐみ)番頭、小普請(こぶしん)(ぐみ)支配(しはい)

3000→大目付、町奉行、勘定奉行

2000石→作事(さくじ)奉行(ぶぎょう)普請(ふしん)奉行(ぶぎょう)、槍奉行、持弓筒頭

1500石→先手(さきて)(がしら)、新番頭

1000石→留守居番、目付、使番、書院番組頭、小姓組組頭、徒頭、小十人頭

700石→二ノ丸留守居、船手頭

500石→郡代・代官 等



ここまでは、前置きです。

ここから本題に入ります。


様々な《藩》の藩士の《家格》を調べてみました。

長文になりますが、ご容赦下さい。


その1《加賀 前田家》

〇上級武士

年寄(としより)(8家)

人持(ひともち)(16家)

平士(へいし)(給人)→(馬廻組、組外(くみほか)、小姓組、新番組)

◆平士並


〇下級武士

与力(よりき)

(かち)

徒並(かちなみ)

足軽(あしがる)

(中間(ちゅうげん)小者(こもの))



その2《仙台 伊達家》(藩士として扱われるのは上士・組士のみ)

〇上士

一門(いちもん)

一家(いっか)

準一家(じゅんいっか)

一族(いちぞく)

永代(えいだい)着座(ちゃくざ)(宿老(しゅくろう)着座(ちゃくざ))

太刀上(たちじょう)(太刀上一番座、太刀上二番座)

召出(めしいで)(召出一番座、召出二番座)

平士(へいし)(虎の間番士、中之間番士、次之間番士、広間番士)

組士(くみし)


その他(郷士、徒士、足軽 等)



その3《薩摩 島津家》

家老与(かろうぐみ)

◆御一門(4家)

一所持(いっしょじ)(21家)

◆一所持格(20家)

寄合(よりあい)、寄合並(合計 約60家)


城下士(じょうかし)

無格(むかく)(2家)

◆小番(約760家)

◆新番(約24家)

小姓与(こしょうぐみ)(約3000家)


外城士(とじょうし)→家格無し。与力、郷士、徒士、足軽 等



その4《長州 毛利家》

〇上士

◆支藩、一門、一族

寄組(よりぐみ)

大組(おおぐみ)

〇中士

遠近附士(えんきんふし)

◆船手組

◆寺社組


〇下士

無給通(むきゅうがよい)

徒士(かち)

三十人通(さんじゅうにんがよい)


士雇(しやとい)(準士)

◆足軽・中間



その5《土佐 山内家》

〇上士

参政(さんせい)・家老

◆家老格

上席(じょうせき)中老(ちゅうろう)

下席(しもせき)馬廻(うままわり)

◆新馬廻

上席(じょうせき)小姓組(こしょうぐみ)

下席(しもせき)留守居組(るすいぐみ)

◆新留守居組


〇下士

白札(しらふだ)

郷士(ごうし)

徒士(かち)

徒士格(かちかく)

下席(しもせき)組外(くみほか)

(ふる)足軽(あしがる)

足軽(あしがる)

(しも)足軽(あしがる)

庄屋(しょうや)


地下浪人(じげろうにん)



その6《米沢 上杉家》

〇上士(侍組(さむらいぐみ))

高家(こうけ)衆(5家) (米沢武田家、能登畠山家、山本寺家、二本松家、山浦家)

分領家(ぶんりょうけ)(14家)

平侍(ひらざむらい)(約70家)


〇中士

三手組(さんてぐみ)(馬廻組→上杉謙信(うえすぎ けんしん)の直臣、五十騎組→上田長尾衆、与板(よいた)組→直江兼続(なおえ かねつぐ)の直臣)

三扶持方(さんふちがた)(猪苗代士(いなわしろし)越後(えちご)国人(こくじん)信濃(しなの)衆、組外(くみほか)→関ヶ原の戦いに参戦した牢人(ろうにん)組付(くみつき)→侍組・三手組の分家)


〇下士

◆三扶持方並(訴文(そもん)組、足軽)



その7《会津 松平家》

士中(しちゅう)(上士)

御敷居内(おしきいない) (つね)上下(がみしも)大老(たいろう)家老(かろう)若年寄(わかどしより)奉行(ぶぎょう)大目付(おおめつけ)用人(ようにん)側衆(そばしゅう)

常上下(つねがみしも) 黒紐格上(くろひもかくうえ)小姓(こしょう)奏者番(そうじゃばん)使番(つかいばん)物頭(ものがしら)

黒紐格下(くろひもかくした)町奉行(まちぶぎょう)郡奉行(こおりぶぎょう)公事奉行(くじぶぎょう)普請奉行(ふしんぶぎょう)目付(めつけ)大納戸(おおなんど)祐筆(ゆうひつ)御次番(おつぎばん)

紺紐(こんひも)猪苗代士(いなわしろし)

花色紐(はないろひも)→勘定頭、近習番、側医師等


寄合(よりあい)(中士)

茶紐(ちゃひも)→医師、坊主頭、賄頭(まかないがしら)

役通者(やくがよいもの) 萌黄(もえぎ)(ひも)→大賄役、兵器役人、台所目付、徒組頭、徒目付、坊主組頭等

浅黄(あさぎ)(ひも)→諸役(勘定所、預所、茶部屋 等)小役人


〇足軽(下士)

黒襟(くろえり)

大和柿襟(やまとがきえり)

白鼠襟(しらねずみえり)

浅黄襟(あさぎえり)→この階級は、高掛(たかがかり)という給与です。高掛(たかがかり)とは、(つか)えている重臣から俸給を与えられる事で、実質的に藩主の陪臣ということになります。



武士の階級・家格を代表的な7藩の例を列挙しました。

基本的な構造は、大きく上士と下士に分けたりしていることです。そして家格によって就ける役職が定められており、その家格の重軽は主君との血縁・姻戚関係や、従属期間等の信頼関係が強弱で決めていのがわかります。特に米沢藩の例では、侍組は豪族層、三手組は古参によって構成されています。仙台藩では血縁が特に重んじられ手いることがわかります。会津藩と土佐藩では特に厳しい階級社会であったのに対して、加賀藩は比較的フラットなヒエラルキーとなっていたりと、藩によって違いがあるのも面白い特徴だと思います。

大変長くなってしまい、失礼いたしました。

それでは失礼致します。

皆様、お疲れさまです。

藩によっては『紐襟制』等の特殊な階級制度を作成しているところもあり、それぞれの個性が出ていると思います。

できるだけ、ご感想のコメントにご協力をお願いいたします。誤字や読み方等の漢字に関しての質問や、不足している内容についてのご指摘等、どのような些細な事でも構いません。どうか皆様が本作品に対してどのような思いをされたのかを教えて下さい。

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[一言] なんだかリクエストに応えて頂きありがとうございました。 なんでもそうなんでしょうが、特に現代にはないものを描くときにその知識を得る努力ってやはり大変で、表にまとまっていると便利です。また参考…
[良い点] 時代小説や歴史小説を読むのが好きなので、ある程度はわかっているつもりでいましたが、 いやはや、まだまだ勉強不足でした。 覚えがあるなぁという程度の言葉やまるっきり知らない言葉もちらほらと……
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